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第一章伯爵家の見習い料理人

2伯爵家の使用人

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貴族の爵位とはピラミッと形になっている。
特に大貴族の家柄が何代も続く名家であるのだが、貧富の差が激しい。


家柄は良くても財があるとは限らないのだ。


「よく来てくれたねリーシェ。歓迎するよ」

「よろしくお願いします」


貴族街のその奥にある敷地内。
そこは貴族でも名家の邸が立ち並び、王宮と間違える程だった。


「ジャルディーノ家へようこそ…と言っても別邸であるから少し手狭だが」

「別邸…」


貴族の規模の違いを改めて思い知らされる。


「旦那様」

「ああ、紹介しよう。執事のマーク・キトルだ」

「リーシェ・キャロルです」


握手を交わし互いに挨拶をする。


「彼女には今後ヒルデの給仕を頼む」

「かしこまりました。これから…大変かと思いますがよろしくお願いします」


強く手を握られ、必死さが伝わる。


「先日も侍女が三名、給仕係が五名、メイドが三名退職届を出しまして」

「へ?」

「現在お嬢様は私の妻が傍仕えをしているのですが…本当に良かった」


改めてとんでもない仕事を引き受けてしまったと思った。



「来たわね」

「お嬢様…」

「今日から私の傍仕えをするのだから、私の言う事をちゃんと聞くのよ!」


強気な表情で現れるヒルデガルドにマークは困った表情をする。


「お嬢様、勉強のお時間で…」

「のどが乾いたらすぐに飲み物を用意しなさい。一分以内に…じゃないと今日の授業はキャンセルよ」

「そんな無茶な!」


今から厨房に行くにも、お茶をすぐに準備は不可能だった。

「今日は冷たくて甘くて酸っぱい飲み物が良いわ」

「お嬢様」

無茶を言うヒルデガルドに他の侍女も涙目になるが。


「でしたらこちらをどうぞ」

「「「は?」」」

即座にテーブルに飲み物を用意する。


「これは?」

「デトックスウォーターでございます」

見た目涼やかなレモンウォーターには刃ハーブが入っており見た目も綺麗だった。


「冷たくて酸っぱくて美味しい…それにグラスに入ったレモンが綺麗。すっきりする後味はミント?」


無駄のない動きですぐにお茶ができる環境に整え、日差しの強さで気怠さを感じているのに気づいていた。


「お嬢様、よろしければタオルを」

「え?いい香り…」

ハーブの香りでリラックスをしてもらい、涼んでもらう。


「お嬢様は味覚が鋭敏でございますね。ミントに直ぐに気づかれるなんて」

「私のお母様は優れた薬草師だったのよ。当然よ」

「では、お嬢様の感性はお母様譲りですか」

「まぁね」


母親との記憶は少ないがわずかながら残っている。
優れた医局長である父が自慢だったヒルデガルドは今でも二人を誇っている。


「私はハーブの事をおもっと知りたいのですがお教えくださいませんか?」

「まぁ、貴女は平民で知識が乏しいから…いいわ?マーク、図書館の鍵を持って来なさい」

「はっ…はい!」


勉強を嫌がっていたヒルデガルドが進んで図書館に行く足を進め勉強の姿勢を見せたのだった。


その後二時間、図書館に籠り二人は薬草の勉強をしながらヒルデガルドは次の授業を大人しく受けるのだった。



余談であるが、その後ヒルデガルドにミントティーを入れると好評となりその日の授業は大人しく受けるようになった。


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