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第一章伯爵家の見習い料理人
3聡明故に
しおりを挟むヒルデガルドは我儘なお嬢様という印象が強いが、根は優しい性格だった。
無茶ぶりを言うのは大人を試していた。
両親を亡くして叔父であるカミュに引き取られてから心無い言葉や、ヒルデガルドをすり寄る大人を見て簡単に信用できなくなった。
叔父であるカミュに対しても愛情を試す言動が増えだしたのもあるが。
「ヒルデは素直に勉強していると?」
「はい…まぁ、言動に色々冷や冷やさせられますが」
「そうか」
ヒルデガルドは既に大人が学ぶ専門分野まで理解できている。
その所為か、レベルとの高い家庭教師を泣かせるほどだったのだが、教養や知識だけあっても心の成長が乏しかった。
ヒルデガルドにはもっと心を豊かにして欲しいと思っていたのだ。
「両親を失った傷は未だに癒える事はない…だが」
何時までも後ろを向いていても両親は喜ばない。
だからこそ前を向いて生きて欲しい。
何より社交界で生きていく為にもヒルデガルドには強く生きて欲しいと願っていたが、心身ともに支えてくれる優秀な侍女が必要だったが、カミュ達ではダメだと思ったのだ。
「リーシエさんは何と言いましょうか…お嬢様の接し方がお上手ですね」
「私も思ったが…ヒルデの自尊心を傷つけることなく勉強しやすいように持って行っているね」
元より花や薬草が好きで、物心つく前から母と一緒に学んでいた。
しかし貴族令嬢が専門的な勉強は重要視されていないのだ。
これまでの家庭教師はマナーを最優先させ。侍女も同様だったが。
リーシェはヒルデガルドに教えを乞う事でヒルデガルドは更に勉強しどうやって教えるか、教える為にはより勉強をしなくてはならなかった。
幼いヒルデガルドであるが、聡明だった事や責任感は強いので教えるなら徹底的にと考えていたのだ。
それがいい方向に進んだのだが…。
「叔父様!」
「どうしたんだいヒルデ?授業は…」
「今の家庭教師を解雇してください」
「は?」
上手く行っていると思ったが世の中そう甘くないと思い知らされたのだが…。
「ヒルデ、彼女は名のある家庭教師だよ」
「リーシェの方が優秀ですわ!平民…しかも子供にも劣る家庭教師がいますか!」
「え…」
今度は別も問題が発生してしまった。
まだ幼いリーシェの方が家庭教師よりも優秀だった事で、ヒルデガルドは今の家庭教師を無能だと言い始めるのだった。
「お嬢様!お待ちください!」
「リーシェ、貴女もこのインチキ家庭教師に言ってやりなさい!マナーのなんたるかを教える前に自分のマナー無さを振り返れと!」
「ヒルデガルド…」
一難去ってまた一難。
カミュの受難ははまだまだ続くのだった。
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