乙女ゲーム的展開はお断り!私は通行人Aなのに自称悪役令嬢の推しに溺愛されてしまった所為で勘違いされて困っています!

ユウ

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第一章伯爵家の見習い料理人

4テーブルマナー

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元よりサルジュはリーシェに礼儀作法を教えていた。
元宮廷料理人であることから礼儀作法は当然のことながら、前世では料理人として修業の一環として外国で接客業のイロハを学んだのだが。



歩き方や、テーブルマナーは完璧だった。

事件が起きたのは、ヒルデガルドが何時ものようにテーブルマナーを受けていた時だった。


ヒルデガルドの支持で一緒にマナーレッスンを受けるように言われたのだが。


ナイフとフォークの使い方が異なり、指摘を受ける。

「お嬢様、ナイフとフォークは持ち変えてください」

「ですが…」

「そちらのマナーは間違いです」


古式風のテーブルマナーではナイフとフォークを持ち変えずに使うのだが、現在ではナイフとフォークを持ち変えて食べるマナーが多くなっている。


肉も切り分けてから食べる事も多い。


「お肉も食べる直前ではなく…あらかじめ切っておくのです」

「ですが、食べる直前に切った方が見た目も綺麗ですし。お肉が冷めてしまいます。持ち変えない方が綺麗に見えますし」


「これだから物を知らない子供は…」

明らかに見下した表情だった。


「最初からやり直してください。私の言う通りに…」

「お嬢様のマナーは古式風ですので。間違いはありませんわ」

「何ですって?」


ヒルデガルドのマナーを間違いだと指摘する家庭教師にリーシェははっきりと告げる。


「二十年前まではテーブルマナーは相手に不快な思いをさせない。物音を立てずに静かに美しくをと考えられていました。ナイフとフォークを持ち変えるのを美しくとしない、ネロ・テイラーが考えたマナーです」


ネロ・テイラーはマナーの母と言われる人物だった。


「ですが、今のマナーは」

「確かに今のマナーは異なっておりますが、お嬢様はお母様のマナーを大切にされているのかと…」

「なっ…なんてことを!」


マナーに関しては誰よりも自信があったので屈辱だった。


「私のマナーを侮辱する気」

「マナーは他者を不快にさせない為の配慮かと…」

「たかが料理人の見習いふぜいが…そんなの言うなら私の前でやって見せなさい!」

売り言葉に買い言葉。
家庭教師のベティー・ハンディは目の前でやって見せろと言うが。


「リーシェ…」

「承知しました」

ここでできませんなんて言い分は通らない。
ニヤニヤ笑うベティーはリーシェができるはずがないと思ったのだが。



「綺麗…先生のマナーよりも綺麗だわ」

「そんな…」


流れる様な所作で音をまったく立てずに肉を切り口に運ぶ動作は文句のつけようがなかった。

ナイフやフォークを持ち変えずにするのは難しいはずなのに、自然な動きだった。


「お母様と同じ…」

「ナイフとフォークを持ち変える方がやり辛い事もあります。逆に聞き手が逆ならば逆に持ち替えてしても問題はないかと」


「どちらが先生か解らないわね?」

勝ち誇った笑みを浮かべるヒルデガルドにベティーは敗北したのだった。







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