32 / 115
第二章
1エンゼル王国
しおりを挟む陸路ならば一週間かかる所だが、海路ならば一日で到着ができた。
豪華客船ではないが、優雅な船旅を堪能することができ、現在は港に到着した。
「ここがエンゼル王国ですか海に囲まれ、なんて素敵なのでしょう」
「そう言って貰えると嬉しいですよ」
祖国を褒められる事は宰相としても王族としても嬉しい物だった。
「日差しもそんなに強くないんですね」
「ああ、日差し対策に関しては義姉の資金援助で多くの対策ができた」
今日のように暑い日は定期的に水をまかれている。
広間には噴水もあり、時間になると水が噴き出す仕組みになっているが費用が相当なものになるのだが。
「義姉は国内でも大きな鉱山を持っています。鉱山で取れたダイアモンドを国の必要な援助に使っているんです」
「まぁ、貴族の鑑ですわね」
国が困窮している時は、貴族自ら財産を投げうってまで援助するのは美徳とされている。
ウィスター家も同様だったが、これだけ大規模な政策は莫大な資金が必要になるので普通は無理だった。
「貴女とはかなりタイプが違うが、良い方だ」
「お会いできるのが楽しみですわ」
実際に会った事はないが、カナリア同様に王女殿下の傍付き侍女を任され大変優秀だと聞いている。
「あら?でも宮殿が通り過ぎましたが」
「あれは母上の別邸だ」
「はい?」
大通りを進むと大きな宮殿が通り過ぎる。
王宮ではないにしても大きすぎる宮殿が幾つか見えた。
「王宮はあそこだ」
「まぁ…」
宮殿とは国の象徴であるが、他国と比べ物にならないぐらい立派だった。
周りを囲む宮殿も立派だが王宮は比べ物にならなかった。
大きな門に入り馬車が止まり、エンディミオンは先に降りようとしたが。
「お帰りなさい」
バァン!
勢いよく馬車の扉を閉めた。
「エンディミオン様?」
「少し回り道をしましょう。そうしましょ…ぐっ!」
逃げようとするも馬車の窓から手が伸びて来た。
「随分と無礼ですわね」
「母上…」
胸倉を掴まれ馬車から無理矢理引きずられる。
「母に会って早々に何ですその態度は。私はそんな風に育てた覚えはありませんよ」
「母上…苦しい」
見た目は小柄であるのに何所にそんな力があるのか。
長身のエンディミオンを片腕で持ち上げる光景は異様としか言いようがない。
「あっ…あの」
「あら?ごめんなさいね」
「ぶっ!」
エンディミオンは放り投げられ、庭園の泉に落ちるも誰も助ける者はいない。
「貴方がカナリア嬢かしら」
「はっ…はい」
「お会いできて嬉しいわ」
穏やかな表情に友好的な態度を取る女性は。
「私はセラフィーヌ・エンゼルと申します」
エンゼル王国前女王陛下にして王太后だった。
71
あなたにおすすめの小説
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」
「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」
「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」
「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」
あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。
「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」
うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、
「――俺のことが怖くないのか?」
と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?
よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!
あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?
しゃーりん
恋愛
アヴリルは2年前、王太子殿下から婚約破棄を命じられた。
そして今日、第一王子殿下から離婚を命じられた。
第一王子殿下は、2年前に婚約破棄を命じた男でもある。そしてアヴリルの夫ではない。
周りは呆れて失笑。理由を聞いて爆笑。巻き込まれたアヴリルはため息といったお話です。
二人の妻に愛されていたはずだった
ぽんちゃん
恋愛
傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。
二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。
アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。
アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。
何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。
全二十八話。
十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】
小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」
ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。
きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。
いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる