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第二章
1エンゼル王国
しおりを挟む陸路ならば一週間かかる所だが、海路ならば一日で到着ができた。
豪華客船ではないが、優雅な船旅を堪能することができ、現在は港に到着した。
「ここがエンゼル王国ですか海に囲まれ、なんて素敵なのでしょう」
「そう言って貰えると嬉しいですよ」
祖国を褒められる事は宰相としても王族としても嬉しい物だった。
「日差しもそんなに強くないんですね」
「ああ、日差し対策に関しては義姉の資金援助で多くの対策ができた」
今日のように暑い日は定期的に水をまかれている。
広間には噴水もあり、時間になると水が噴き出す仕組みになっているが費用が相当なものになるのだが。
「義姉は国内でも大きな鉱山を持っています。鉱山で取れたダイアモンドを国の必要な援助に使っているんです」
「まぁ、貴族の鑑ですわね」
国が困窮している時は、貴族自ら財産を投げうってまで援助するのは美徳とされている。
ウィスター家も同様だったが、これだけ大規模な政策は莫大な資金が必要になるので普通は無理だった。
「貴女とはかなりタイプが違うが、良い方だ」
「お会いできるのが楽しみですわ」
実際に会った事はないが、カナリア同様に王女殿下の傍付き侍女を任され大変優秀だと聞いている。
「あら?でも宮殿が通り過ぎましたが」
「あれは母上の別邸だ」
「はい?」
大通りを進むと大きな宮殿が通り過ぎる。
王宮ではないにしても大きすぎる宮殿が幾つか見えた。
「王宮はあそこだ」
「まぁ…」
宮殿とは国の象徴であるが、他国と比べ物にならないぐらい立派だった。
周りを囲む宮殿も立派だが王宮は比べ物にならなかった。
大きな門に入り馬車が止まり、エンディミオンは先に降りようとしたが。
「お帰りなさい」
バァン!
勢いよく馬車の扉を閉めた。
「エンディミオン様?」
「少し回り道をしましょう。そうしましょ…ぐっ!」
逃げようとするも馬車の窓から手が伸びて来た。
「随分と無礼ですわね」
「母上…」
胸倉を掴まれ馬車から無理矢理引きずられる。
「母に会って早々に何ですその態度は。私はそんな風に育てた覚えはありませんよ」
「母上…苦しい」
見た目は小柄であるのに何所にそんな力があるのか。
長身のエンディミオンを片腕で持ち上げる光景は異様としか言いようがない。
「あっ…あの」
「あら?ごめんなさいね」
「ぶっ!」
エンディミオンは放り投げられ、庭園の泉に落ちるも誰も助ける者はいない。
「貴方がカナリア嬢かしら」
「はっ…はい」
「お会いできて嬉しいわ」
穏やかな表情に友好的な態度を取る女性は。
「私はセラフィーヌ・エンゼルと申します」
エンゼル王国前女王陛下にして王太后だった。
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