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第二章
8感謝とお願い
しおりを挟む「カナリア嬢!」
慌ただしい足音と共に現れたのはレオンハルトだった。
エンディミオンの部屋で茶を飲みながら話をしていると、慌てて入って来た事に二人は驚く。
「兄上、何です。騒々しいですよ」
「お前はいなくていいぞ」
「ここは誰の部屋だと思っているんですか」
普通に部屋の主を無視してカナリアの傍に近づき膝を着く。
その振る舞いに慌てる。
「レオンハルト様!」
「感謝するカナリア嬢。妻の憂いを晴らしてくれた事を」
「無視ですか」
レオンハルトはエンディミオンの話を全く持って聞いていない。
「カナリア嬢…いや、カナリア。アレーシャはずっと私の所為でプレッシャーを与えられ、苦しんでいいた。彼女自身に後ろ盾がないのも仇となっていた」
「いいえ、私は…」
「子供が出来ない体ではと噂を流され、悪意にも耐えていたんだが…以前はストレスで倒れた事もあって」
「出産はストレスが一番大敵ですから」
カナリアは出産した侍女から多くの話を聞き、祖国で最も腕の良い老医師か学んでいたので知識もある。
「医学療法で対策もされているんです。不妊治療などもございますがお体に負担がかかります」
「そうか…」
どんなに医療技術が優れていようとこればかりはどうにもならないのだった。
ただ環境を良くすることは可能なのだが。
「私ができる事はアドバイスだけです。私も出産した事がありませんし、アレーシャ様のお気持ちを理解できるのはご本人様だけですし」
「私では無理と」
「恐れながら…」
アレーシャの気持ちは」アレーシャにしか解らない。
何より男と女の考え方は異なっているのだから理解するのは無理な話だ。
「私は傲慢だったな」
「兄上…」
「エンディミオン、私は…」
「今気づいたんですね」
悲し気な表情をするレオンハルトに対して更に傷を抉る事を言い放つエンディミオンに眉を顰める。
「おい」
「そもそも、全てを解ろうとするなど無理ですし何様です」
「お前には優しさが無いのか」
「優しさだけで全て行くほど現実は甘くないんです」
現実主義なエンディミオンは厳しい言葉を浴びせるが。
「そうですね。愛や優しさだけでお腹は膨れませんし」
「君もか」
いい意味もでも悪意味でもカナリアは現実主義者だった。
「ですが、アレーシャ様の不安を少しでも取り除く方法と、陰口を言う愚か者を叩き潰しながらアレーシャ様の後ろ盾を作る事はできますわ」
「え…」
「本当か」
ただし、現実主義だから最大の武器を持つ事が出来た。
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