婚約者は愛を選び、私は理を選んだので破滅しても知りません!

ユウ

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第二章

18花嫁衣装

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お祝い事が続き、一か月後に婚約式が行われた。
婚約式には国王も急いで帰国し、エンディミオンが正式に婚約したことを涙ながらに喜んだ。


「ああ、良かった…ぐすん」

「兄上、泣かないでください」

「一生、本と結婚すると思ったぞ。人間の女性と婚約してくれてよかった」

「兄上ぇー…」

めでたい日に言う言葉かと怒鳴ってやりたくなったが、エンディミオンは仕事の鬼だったので否定はできない。

「カナリア嬢、叔父上をどうかお願いします」

「叔父様は色々と苦労が多くて幸薄く」


まだ幼さが残る王太子のリーファスト王女のサーシャにまで言われて落ち込む。


「しゃきっとしなさい」

「どんだけ鬼なんですか」

「まったくどうしてこうも息子達はダメダメなのかしら…カナリア。本当にこのダメダメ息子を叩きなおしてください」

「はっ…はぁ」

セラフィーヌの期待は少しプレッシャーになるが精一杯務めるつもりだ。


とりあえずは無事に婚約式を行う事ができ結婚式に向けて準備を進められた。



だがここで失念していた。


「カナリア様、結婚式なのですけど」

「私達から提案があるんだ」

「はい?」


結婚式の準備を進める中、二人が是非花嫁衣装の準備を任せて欲しいと言われたのだが。


「このデザインはどうかしら」

「こちらはティアラなんだが」

「えっ…」


見せられたのは最高級のウェディングドレスに、アクセサリーと王族だけが身に着ける事が許されるティアラだった。


「お待ちください兄上。このティアラは」

「ああ、母上に借りた」

「あっさり恐ろしい事を言わないでください!」


王家に嫁ぐ際、高位な女性はティアラを着けることが許されている。
アレーシャも結婚式当日に着けたが、今目の前にあるのはセラフィーヌが身に着けた物だ。


「君は宰相の妻でもあるから相応しいだろ。後に王太子の後見人となるのだからな」

「後見人…」

「まぁ保護者的存在だ」


言っている事は解るが、差し出されたティアラはカナリアには重すぎた。


「これは、母の願いでもある。本人は悩んでいたが」


「悩む?母上が?」

「笑うな。聞けばカナリアは母の恩人であるカーラ夫人の孫に当たると聞く。きっとこれを身に着けて欲しいんだろう。母の願いを叶えてやってくれないか」

「ですが…」


カナリアはセラフィーヌがどれだけカーラを慕っているかまでは知らないが、気持ちを汲み取る事は出来る。


「ありがとうございます」


断りたいができる状況じゃない。
打算的な人間が行うならば、断れたがこの二人には一切の打算と悪気が無いので断れなかった。


「それからウエディングドレスなのだけど、私のをリメイクさせたのよ」

「このウェディングドレスは母上が着たのを仕立て直したんだが、カナリアに似合うように少し色をつけた」

「ははっ…」


(ダイヤモンドが沢山…)


アレーシャが国内でも大きなダイヤモンド鉱山の持ち主である事をすっかり忘れていたカナリアは遠い目をした。


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