36 / 408
第二部メトロ学園へ入学
1.出会い
王都から離れたロアンヌ地方にある学園。
メトロ学園は国内でも最大の規模を誇る学園だった。
学科は様々で受験資格は13歳からだったが、倍率が厳しく毎年多くの人間が受験に落ちて又挑戦という繰り返しをしている。
受験する条件として魔力があることが最低条件となる。
学科は多く魔法科ならば将来宮廷魔術師になる者もいる。
騎士科は近衛騎士に配属になることも可能だったが、在学中に落第ということもあるので進級するだけでも大変だった。
その中でもランク分けをされており、金・銀・銅のランクに分けられている。
優秀な生徒は特権が与えられる。
その中でも生徒達の憧れは生徒会。
学園内の優秀な生徒だけが入ることが許され、学園の運営はすべて生徒会の手によって行われる。
学園内では平民貴族関係なく国内の学校で唯一下克上ができると言われていた。
桜舞う季節、一人の少女が門をくぐる。
(ついに来たわね)
ひらひら舞う桜を見上げながらエステルは気を引き締める。
(もう一度ここに来るんなんて)
哀しい思いでしかないこの場所に戻って来たエステルは感傷に浸りかけたが、悲しんでばかりもいられない。
愛剣を握りしめながら遠くを見つめる。
辛い思いでしかなかった。
妹と常に比べられ自分の存在が必要ないのだと思い知らされた時間を過ごした。
ぎゅうっとバイオリンを抱きしめエステルは未だに胸がギスギスしていた。
ここで一人で生きて行かなくてはならない。
心細さを感じながら誰もいない神殿でエステルはバイオリンをケースから取り出し音色を奏でる。
(うん、大丈夫)
緊張はしているが、こうしてバイオリンを弾くことで心を落ち着かせることができた。
‥‥はずだった。
「誰です?」
微かに気配を感じ取ったエステルは誰かが近くにいることに気づく。
「失礼」
姿を現せたのはエステルと同い年ぐらいの少年だった。
(えっ…)
金髪に青い瞳の少年だった。
(嘘でしょ!)
エステルはこの時点で会うはずがない人物に会ってしまった。
「バイオリンの音色に導かれて」
「はっ…はぁ」
マチルダの教えを守りながら笑顔でいなくてはならないと言い聞かせながら既に笑顔は消えそうだった。
「私はアクセレイ・ハインツ」
「エステル・アルスターです」
仕方なく名前を名乗るしかなかったエステルは未だに表情が引きつっている。
「騎士科一年だ」
「私もです」
「君が?」
目を見開くアクセレイはエステルの腰を見て冗談ではないと気づく。
「失礼します」
「あっ…」
出来るだけ関わりたくないので逃げるように去った。
アクセレイ・ハインツ。
最北端の地を守る辺境の地を守る貴族。
ただしエステルが彼に出会ったのは18歳の頃だった。
(どうして彼が…)
この時点で出会うなんてまずないと思ったが、生徒の人数が多かったマンモス校なのでエステルが知らなかっただけだという可能性もある。
(でも、彼と同じクラスになる可能性は低いわ)
この学校は生徒の人数も多い。
クラスが同じになる可能性はないし、おそらくアクセレイとは同じクラスになる確率はないと思い込んでいたが。
入学式に向かうべく急ぐエステルだったが…
「何処を見て歩いてんだ」
「すいません!」
前方に一人の少年が絡まれていた。
「その特徴的な外見、インディーズ家の奴だぜ!」
「去年も落ちていた出来損ないの伯爵家令息じゃねえか!」
顔を俯かせる少年は必死に耐え忍ぶ。
「丁度よくねぇか?温室育ちの貴族様に教えてやろうぜ!」
今から何をするなかんて解り切っていた。
(何てレベルが低いのかしら)
エステルはこのくだらないやり取りを見て見ぬ振りする気にもなれず剣を握る。
「黒焦げになっちまいな!」
「やめ…」
炎の魔法で攻撃しようとした時だった。
エステルは地面を蹴りジャンプして彼等の真上にに飛ぶ。
影ができたことで何だと見上げると当時に衝撃が走った。
「失礼」
「「ぶっ!!」」
三人はエステに踏まれてしまう。
靴はヒールではないが踏まれるとかなり痛かった。
「ごめんあそばせ?」
一言告げてエステルは絡まれていた少年の手を掴んでその場を去ろうとするも。
「舐めやがって!」
一人の少年が這いつくばりながら手をかざし魔法を使う。
魔法陣が浮かび上がり絡まれていた少年は真っ青になるがエステルは背を向けたままだった。
「炎よ燃え尽くせ!!」
「危ない!」
炎は猛獣の姿になってエステルに襲い掛かるも即座に結界を敷き魔法を弾き返した。
「なっ!!」
バシッ!!
弾き返された魔法はそのまま術者に襲い掛かり、彼等は丸焦げになった。
高等魔術取得しているエステルは結界魔法が得意だったのでこの程度は赤子の手を捻るのと同じだった。
あなたにおすすめの小説
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
私と幼馴染と十年間の婚約者
川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。
それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。
アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。
婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです