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第二章
36.裁判
リリアーナは静かな気持ちで外を見ていた。
お粗末な馬車は神殿に到着し、断頭台が設置された場所に突き飛ばされる。
両手首を拘束され、罪人の証の草冠を飾られながら晒し者にされるる。
聖書で魔女を捌く宗教裁判のようだと思い自嘲じみた笑みを浮かべた。
「被告人、名を」
「リリアーナと申します」
ここでは家名を名乗ることはしなかった。
既に嫁いだ身であるが罪人とされるならば名前だけしか名乗ることはできないと判断したのだ。
「これより、罪人は真実のみを話すことを誓いないさい」
「はい、偽りを申しません」
なんという茶番劇か。
罪など一つも犯していないのに、罪人として裁かれるように仕組まれている。
「被告人、そなたは罪を犯し、恥じながら悔いて祈りなさい」
聖職者が聖書を片手に、告げる言葉群衆は野次を飛ばす。
「帝国に混乱を招く悪女!今すぐ焼け死ね!」
「そうだ、この悪魔め!」
「早く死ね!」
罵倒を浴びせられ、今にも石が投げられそうになる中、決して心を乱すことなくリリアーナは前を見透える。
「罪人はこれまで度重なる罪を犯しました。しかし最後の慈悲として申し開きを許しましょう。己が行った恥ずべきことを今改めることを許します」
「はい…」
聖職者の言葉を聞きリリアーナは顔を上げる。
そして――。
「私は懺悔する事も、恥ずべきことを悔い改めることは一つもございません」
「は?」
聖書を片手に聖職者は空いた口が塞がらない。
「私はこの場に立ち恥を悔い改めることも、屈辱だと感じる事はないでしょう。何故なら罪人が罪を犯し、その罪を悔い改めさせられるのであれば、屈辱でしょうが…何一つとして罪を犯しておらぬ罪人が冤罪で立たされることに、何故懺悔する理由が御座いましょうか」
「なっ…なんということを」
「私は逆に哀れに思います。偽りの罪をでっち上げ、このようあ茶葉劇に振り回される方々、本来の立場を忘れ、職権乱用をする愚かな聖職者…実に哀れですわ」
「なんと侮辱な!貴女は自分の罪をまだ増やす気ですか!」
冷静に振舞っていた聖職者は自分を侮辱されたと感情的になるも、リリアーナは更に続ける。
「罪とは何を意味するのでしょうか?私が人間で、竜の国に嫁いだことでしょうか。それとも私が人間である事でしょうか?」
「馬鹿な…貴女はこれまで権力を振りかざし、勝手な改革を…」
「女性の地位向上に、増税の軽減に関しては、法を犯す真似はしておりません。法律に基づき、私は職務を全うし、竜妃としての勤めを果たしました」
「馬鹿な、女の癖に政治に口を出し、改革をする等ふざけた話があるか…女など」
そこに野次を飛ばしたのは一人の貴族だった。
しかし…
「女性でも発言権はあり、人権は存在します。今の言葉は先代竜妃様やすべての女性の侮辱として私は訴えさせていただきます。私達は女性はただ道具ではありません」
「なっ…」
リリアーナは凛とした口調で告げると、野次を飛ばしていた連中も押し黙る。
圧倒的にリリアーナを悪女に仕立て上げていた者は、空気が変わる事を恐れた故に裁判の進行を強引に推し進めようとした。
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