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第一章
34.女同士の戦い
しおりを挟む宣戦布告したその日から私とベッキーの戦いは始まった。
これ見よがしに嫌がらせをされるようになり、マナーレッスンの時も嫌味を言われるようになった。
「歩き方がなっておりませんわ。それにダンスのステップが」
通常のマナーは出来ているが、特にダンスが得意というわけではない。
「マリアンヌ様は社交界でも花のようだと言われてますのに優美さが足りませんわ…それに前髪で顔を隠しているので…」
私のおでこには傷がある。
そしてドレスに関しても肌をあまり見せない露出度を抑えた物だ。
だからなのか地味に見える。
ガタン!
「きゃあ!」
「お嬢様!」
足元がふらつき倒れそうになるのをランが受け止めてくれる。
「まぁ、歩き方がまるでなってませんわね?」
「教え方が悪いのではなくて?」
「できないのを私の責任にする気ですの?」
地味な嫌がらせが続く中、ランもベッキーを敵視するようになった。
「あら?旦那様はもっと上手にリードしてくださいましたが?」
「なっ!」
「サブリナ様もダンスの指導が本当にお上手で…貴女だと楽しく踊れないのではないかしら?」
クスクス笑いながらランは私の手を取ってくれる。
「お嬢様、どうかお気になさらないでくださいまし。練習に失敗しても本番で踊れれば問題ありませんわ」
「ありがとうラン」
「それにもうすぐ…」
扉の方を見ると。
「遅くなって悪かったな」
「ロミオ様」
「さぁダンスの練習をしようか」
私のダンスの練習に付き合ってくれるようになったロミオ様は慣れた手つきで私をリードする。
「美しですわお嬢様…本当に」
「ステップがまだなってないわ」
「あら?女性をフォローするのは男性の甲斐性ですわ。それに女性側が目立ちすぎるのはどうかと…あらごめんなさい?ダンスでこれ見よがしに自己主張するのが貴女の流儀だったのですね?」
「は?」
「私は宮廷女官でもありましたので、常に主を立てることを考えてましたが…主より目立ちたがるような方の気持ちが解りませんの」
「なんですって!」
背後で何やら揉めている声が聞こえる。
元からあの二人は水と油な存在であったけど、ここ数日は悪化している。
「ダンスに集中してくれ」
「はい、申し訳ありません」
「それよりも、腕に痣がある。先ほども悲鳴が聞こえたが」
ダンスを踊りながらも私の腕や足に傷があるのに気づいたロミオ様は眉を顰める。
「ベッキーに酷いことをされていないか?」
「大丈夫です」
「手を上げていなくても言葉の暴力で君を傷つけていないか心配だ…母の事もある。父も疑いは持っているんだが証拠がない」
ベッキーを無条件に信じていたわけではないというユアン様にやはりと思った。
でも証拠がないし、ベッキーは隠すのが巧妙で上手かったのだろう。
何より宰相という激務もあるからそこまで目を光らせることは難しい。
「母も笑って言わないから…だからこんなことになったんだ。だから君はちゃんと言葉に出して欲しい」
ああ、曇りのない表情で言われると胸が痛む。
私はこれからあの侍女を追い出しにかかろうとしているんですなんて言えない。
やり方はどうであれ、私も酷いことをしているのだから。
真っ向から喧嘩を売れないから裏工作しているなんて言えません!
そう思っていたのだけど。
私は失念していた。
ベッキーの自尊心を煽り、尚且つ証拠を集めて追い出そうとする前に彼等が既に動いていた事を。
華麗なる一族と呼ばれていた彼等は私が思うよりもずっと周りを見ていた事に気づいていなかった。
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