白のグリモワールの後継者~婚約者と親友が恋仲になりましたので身を引きます。今さら復縁を望まれても困ります!

ユウ

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第三章真実の聖女

26憐れみ

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周りの空気が凍り付く。
これまでユーフィリアを信じていた者は絶望した表情をし、同じ魔術師は軽蔑の視線を向ける。


「何て事を」

「何所まで性根が腐っているんですか」


リーシアとギーゼラはもう我慢ならなかったが、ミカエルとユリウスに抑え込まれていた。


「お二人共、お放しください」

「そうですわ」


もう我慢ならないと思ったが、ミカエルは唇を噛みしめ震えていた。

「殿下…」

「耐えてくれ」

(一番怒っていたのは貴方の癖に)


リーシアはこの中で一番怒りたいのはミカエルだと気づく。
思えば一番最初にメアリを見つけ、その日から見守っていたのはミカエルだった。


「立場が無ければ今すぐに殴りたい」

「紳士ではなくてよ」

「あんな女にそんな物は不要だ」


普段は完璧な王子様であるミカエルがここまで感情をむき出しにしているのに驚きながらも。


(メアリ様を愛していますのね…)

白のグリモワールの後継者を探していたのはミカエルも同じだったが、何時の間にかメアリ自身を尊敬し愛するようになっていた。


「僕は…」

「言わなくとも解りますわ。何年傍にいると?メアリ様をお慕いしておりますのね」

無言は肯定となる。
リーシアもそれ以上は言わなかった。


「だが、どうする気だ」


「ああ…大丈夫かのか」


今の所、メアリは自分を抑えながら聖職者としての振る舞いをしている。



「ユフィ…」

「何よ」


「貴女は可哀想な人ね」


「は?」


ユーフィリアは眉を顰めた。

「強い魔力を持ち、貴族として生まれながらも両親に愛され、多くの人に慕われて…生まれながら恵まれていたのに。まだ欲しがっている。貴女は何を得ても満足できないのね」

「何を言っているのよ」

「もっと、もっとと手を伸ばし、貴女の心を満たす事はない。私は貴女が心から哀れに思うわ」


メアリは傷つきはしても憎む気に慣れなかった。
何時も自身に満ち溢れていたユーフィリアは虚勢を張っているにすぎないのだと知った。


「何でアンタが私を憐れむのよ!アンタが」

「私は誰になんて言われようとも自分の境遇を恨んだことはありません。戦場に出て私は広い世界を見ました。貴女が私に戦場に出て欲しいと言ってくれた事を感謝してます」


危険で、死と隣り合わせであったが得た物はかけがえない物だった。


「私を受け入れてくださった第三部隊の皆さん、戦場で出会った皆さん。私は治癒師として自信を持つ事ができた。そして王家の皆様に出会い、今がある…私は貴女に感謝してました」


「ふっ…ふざけるなぁぁぁ!」


ユーフィリアの中で何か切れた瞬間だった。


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