白のグリモワールの後継者~婚約者と親友が恋仲になりましたので身を引きます。今さら復縁を望まれても困ります!

ユウ

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番外編

お転婆王女と苦労人皇子⑩

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日に日に表情が乏しくやつれて行くリーシアを見てユリウスは心配になった。


そんな時だった。
王宮内でキョロキョロする令嬢がいた。


「おい、何をしている」

「あっ…あの、王女様にこれを」

「ん?お前」



ユリウスが令嬢を見ると確信があった。


「お前…」

「あの!王女様のお加減はどうですか…その、お元気がないとお聞きして」

傷だらけの手に、貴族令嬢にしては服装も質素すぎる。
治癒師の装いである事が解る。


「あの…せめて元気になる薬草とお花を」

「今のアイツは贈り物は受け取らない」

「そうですか。やっぱり私なんかのお花じゃだめですよね」

「いや…そうじゃなくて」


言い方が悪かったと思ったユリウスは困った。
高価な物じゃないからダメというわけではなく、渡す人物が問題だった。



「あー!王族に贈り物をする時は、検査が必要なんだよ。危険な物が入ってないか、薬物の検査も行われる」

「そうだったんですか。すいません…」


シュンとなる姿にユリウスは悪い事をした気分になる。
同時に何故か黒のグリモワールが反応していて、文句を訴えているように感じた。


「あー、俺が渡してやる。受け取るか解らねぇが」


「本当ですか!ありがとうございます黒い騎士様!」

「は?」

「これ、良かったらどうぞ!」


「おい!」


お礼と言わんばかりに袋を渡される。



「何で薬草とパンなんだ?変な女」


「ユリウス、どうしたんだその花」

「お転婆王女への見舞いの品だ」

「綺麗だな」


薔薇でも百合でもない豪華ではない花だった。
けれど美しく可憐な花だと思った。


「ミカエル」

「せめてこの花で心が癒されたらいいのだが…メッセージカードもあるな」

「ああ」


気やすめにしかならないかもしれないがせめてリーシアの心が癒えればと願った。



直ぐには無理でも元気になって欲しいと思ったのだが、その数日後。



「ユリウス!私は這い上がりますわ」


「復活するの早すぎだろ!」


「一週間前は死んだ顔をしていたのにどうしたんだ」


一週間前までは鬱状態で食事もまったく喉も通らなかったぐらいだ。


「お告げですわ。初代猊下が私にお告げをくださいました。そして私を思ってくださる方がいると気づきましたの」


「ラベンダーの栞?」

「この花をくださった方のおかげで目が覚めました」


すっきりした表情をするリーシアは悪い夢からさめたような顔をしていた。


「白のグリモワールの継承者を絶対に見つけるのですわ。それこそが私の使命…そして私を信じ、今でも戦場で戦う方達の為にもくじけてはなりません」


悪い物しか見えていなかった。
けれど後ろを振り返れば味方はいたのに気づいた。


「私は多くの悪意に惑わされましたわ。だけどこのラベンダーの花をくださった方の為にも前に進むべきです!さぁ今からやりますわよ!」

「おいぃぃ!俺を巻き込むな!」

「手始めに今苦しんでいる民を救わなくては」


大人しくなっている方が良かったと思うユリウスは後悔した。


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