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しおりを挟む離縁の手続きは時間がかかるはずなのだが、教会は簡単に承認した。
私の記入で後は、自動的にシンパシー家とは縁が切れることが叶い安堵した。
「後の面倒な手続きは子爵夫人が代わりに行ってくださるそうですわ」
「そんな、申し訳ありませんわ」
「先生、少しは頼ることを覚えてください。今回の事は先生にも問題がりましてよ」
「アン!」
旦那様はお嬢様を止められようとしたけど、事実だ。
私がもっと周りに手助けを求めればこんなに多くの人に迷惑をかけないで済んだのだ。
「まだまだ未熟です。こんなことにも気づかないなんて」
「軽い洗脳を受けたのですわ。酷い場所で孤独だったのですから」
「お嬢様、本当においくつでしょうか」
本当に年齢を疑ってしまう。
私なんかよりもずっと世間の事を理解しているように思えるのだけど。
「子爵夫人に色々大人の場所に同行させていただいてますの」
「何だって!聞いてないぞ!」
「当然ですわ。言ってませんもの…子爵夫人を責めるのはお門違いですわよ?」
髪を翻し不敵な表情をするお嬢様はとても大人びている。
「くっ!こんな悪知恵が働く所まで姉に似るとは!」
要するにお嬢様の行動力はすべてお母様から受け継いだと。
「ああ、頭が痛い」
「叔父様、いい加減に諦めてください」
「頼むからこれ以上無茶をしないでくれ!社交界はアンが思うよりも恐ろしい場所なんだ」
「でしたら弱みを握ればいいのですわ。今回の事で良く分かりました…世の中には下衆の極みが多い事を。特に男は甘やかす生き物ではないことを!」
ああ…拳を突き上げるポーズを取るお嬢様に眩暈が。
「頭の傷が痛むわ」
「あら?いけませんわね」
半分以上はお嬢様が原因なんだけど。
それを口にできない私はなんて情けないのだろうか。
「大体叔父様がちんたらしているからいけませんのよ!とっととあの馬鹿一家を権力で叩き潰せばいいのに」
「アン‥‥」
「微力ながら、あの一家の弱みをマミーに探らせてあります。三大虐待をしたのですから相応の罪になりますわよね?」
「勿論だ、離縁した後に一括で慰謝料を支払わせたのちにリサが搾取された財産を返還させるつもりだ」
そんな事本当にできるのかしら?
こう言ってはなんだけど、シンパシー家は私が思うよりずっとお金に困っているはずだわ。
それを慰謝料だけでもかなりシンドイのに。
土地に邸の権利やその他もろもろ支払うことができるのか不安になった。
何より両親に彼らの怒りの矛先が向かないか不安を抱いていたのだった。
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