77 / 169
⑥
しおりを挟むそもそもリサが離縁を言い出したのは姉さんが実家に戻ってきてからじゃないか。
「姉さんが出戻って来たから全部おかしくなったんだ!」
「ちょっと何を!」
「そのくせ、寄生虫のように!」
「何ですって!」
そうだ。
姉さんが図々しく何度も里帰りを繰り返すからリサは嫌になったんだ。
それまでは何の問題もなかったんだ。
僕たちは円満な関係だったじゃないか。
リサの両親だって僕のをことを好いてくれていたのに。
「姉さんがリサに育児を丸投げするから疲れてしまったんだ!姉さんなんて帰ってこなければい!」
「ロンド!なんてことを言うの!」
「大体母さんは姉さんに甘すぎたんだよ!義母との同居が嫌で、実家に帰って来て。そのしわ寄せを全部リサに押し付けて…どうせ嫁ぎ先で何もできなかったんだろ!」
「やめろロンド!」
そうだ。
姉さんが嫁ぎ先でうまくいかないから実家に逃げてきたからいけないんだ。
嫁のくせに役目を果たせずに。
「そんなに嫌なら同居なんてしなければよかったじゃないか!」
「アンタに言われたくないわよ!稼ぎだって少なくて妻におんぶにだっこなくせに!」
「今はそんな話をしていない!」
「都合が悪くなったら話をそらしたわね!あんたは昔からそうよね!だから捨てられたんじゃない?」
性悪にも程がある。
僕の幸せを壊して、こんな意地の悪いことを言うなんて。
「そんなんだから姑とも上手くいかないんだ。義兄も本当は姉さんが嫌いでわざと単身赴任しているんじゃないか?ああ、もしかしたら他に女がいるかもね」
「アンタね!」
仕事はできても妻としてはまるでなってない。
母親としても何もできないからこそ、義兄は逃げるように仕事をして家に帰ってこないんじゃないか。
「ロンド!謝りなさい」
「そうだ。悪いのはリサさんだろう?」
「そういう二人はどうなんだよ!」
姉さんが全部悪い。
でも、この二人だって悪くないわけがない。
「何を…」
「母さんだってリサを奴隷のように使い倒していただろ。姉さんと一緒に」
「ロンド…貴方、なんてことを」
「父さんだって一緒になってリサを使い倒していた癖に」
姉さんが里返ししている間、何をしていた?
「アンタ、自分は何もしていなかった癖に?」
「僕は…」
「黙って聞いていれば何なの?自分の事は棚に上げて!」
姉さんが僕を睨みつけて怒鳴り散らした。
2,206
あなたにおすすめの小説
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。
ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。
【コミカライズ・取り下げ予定】契約通りに脇役を演じていましたが
曽根原ツタ
恋愛
公爵令嬢ロゼは、優秀な妹の引き立て役だった。周囲は妹ばかりを優先し、ロゼは妹の命令に従わされて辛い日々を過ごしていた。
そんなとき、大公から縁談を持ちかけられる。妹の引き立て役から解放されたロゼは、幸せになっていく。一方の妹は、破滅の道をたどっていき……?
脇役だと思っていたら妹と立場が逆転する話。
事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。
木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。
彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。
しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる