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第一章侯爵家のお家騒動

4黒百合と贈り物

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真っ黒な紙に書かれているのは。


泥棒猫や盗人等という幼稚な事を書かれていた。


「紐男ってか?」

これだけ書くなんて暇だな?

俺を中傷する言葉が綴られた手紙を保管しておく。
燃やしてしまったら証拠を残しておいた方が良いから保管しておくとしよう。


「これから俺に届くブラックメールは母上にの目に届かないようにしよう」


二人が留守の間になんとか知られないように処理をしなくてはならない。
お優しいあの二人の事だ、きっと胸を痛められるだろう。


俺はある程度糾弾されるのは覚悟していたからまだいい。
身分差の恋であることは明白で、俺が貴族となっても血筋を重んじる貴族は認めようとしないだろう。


だかたこそ隙を見せてはならない。


「そろそろお茶の時間だな」


結婚してから俺が給仕する事をジョルジュ爺さんは良くお思っていないのだが、母上とのお茶は俺にとっても楽しみだった。



一階に降りてお茶の準備に向かうと。


「どうしたんだ、その届け物」

「先ほど届きまして。お嬢様宛てに」

「ん?アンジェリカに?」


一緒に添えられているのは黒に近い赤い百合。
不吉に感じた俺は、その箱から微かに鉄の匂いがしたことに気づく。


「リヒト、どうしたのです?」

「先ほど大きな届け物が届いたのです」

「それにしてもこの荷物、何やら匂いが」

「ええ、商人からです。結婚祝いですよ」


中身をこの場で開けるわけには行かない。
ましてや母上の前で開けるわけにはいかないので誤魔化そう。


「恐らく特産物の豚肉でしょう」

「まぁ…そうだったの」

「ええ、以前に視察先でローストポークを好まれまして。最高級の豚肉を送ってくれたようです」

「後で手紙を」

「ご心配なく私が出しておきますので」

とりあえず急いで厨房に運ばせよう。


厨房が恐ろしい事になるだろうが。



「なんじゃこりやぁぁぁ!」

「落ち着いてください」

「これを見て落ち着けますか!子豚にリヒト様の侮辱を書いてあるんですよ?しかもナイフを突き刺してあるのに!」


箱には血だらけの豚が入っているのは解った。
でも、幸いにして殺して時間は過ぎておらず、この状態なら調理できる。

「ゼノ、これを直ぐに調理してください」

「は?」

「豚に罪はない。後で美味しくいただいたとお礼の手紙を送っておくよ」

「…解りました」


納得はしていないようだが、食材を無駄にすることを良しとしない料理長のゼノは渋々調理をしてくれた。


これで母上の目には届かないだろう。

「さて、どうしたものか」


初日にブラックメールの脅迫状に、その次は豚と来た。

早く手を打たなくてはならない。



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