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第二章

第14話『現実が辛くてもゲームの世界は最高』

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 どうしてこうなってしまったんだ。
 光の破片と化すモンスターを見ながらそう思う。

 鈴城はあのギリギリでとんでもない爆弾を投げてきた。
 授業が始まってからは、恐ろしいほどに委員が決められていった……そう、俺の副クラス委員長という役割も。

「はぁ……」

 学校が終わり、こうしてゲームの世界という楽宴に来ながらも、既に20回はため息を吐いている。

 仕事の内容的にはそこまで難しそうではなく、基本的には学級委員長となった鈴城の補助をするだけらしい。
 アシスタントAIが居る時代に、人をアシストするとはなんとも不思議な気分だ。

 やめだやめだ。
 せっかくのゲームの世界に来てまで現実のことは考えたくない。

「それにしても、レベルがこのままっていうのはどういうことなんだ?」

 モンスターが出現していないことを確認し、ステータスを眺める。

 昨晩、ロールバックを覚悟していたんだが、まさかのレベルが27のまま。
 さすがに昨日の今日じゃ対応できないということなのだろうか。
 それか、気づいたプレイヤー同士の暗黙の了解というやつで、誰も運営に報告していないとかだったり?

 んー……じゃあ俺が報告すればいいじゃないかってわけだけど、文章を打つのは得意じゃないし、失礼があったら嫌だ。
 なら、気づいてくれた誰か大人の人が対応してくれるのを待つとしよう。

「うーん……でもなぁ……このままだと、今日稼いだ経験値やお金までロールバックされるって考えると、うーん……でもなぁ……」

 もしもガガッドさんなら、すぐに対応してくれそうなんだけど。
 なんて、柄にもなくそう思ってしまう。

 ということは、このまま突き進んだとしても戻されるということか……。
 悩ましいな。

「あ、じゃあスキルの練習でもするか」

 ゲームの醍醐味といえば、やはりスキル。

 現実世界で探索者をやっていると、つい癖が出てしまってスキルを使わずに戦闘してしまう。
 実際に前回のボス戦の時、俺はスキルを使わなかったし、ガガッドさんも使っていなかった。

「ちょっと移動するか」

 モンスターが出現しないであろう場所まで移動する。

「では早速」

 スキル一覧を展開。
 移動系【ダッシュ】【バックステップ】【チャージジャンプ】。
 攻撃系【チャージカット】【リカバリーカット】【パリィ】【カウンター】【アクセルカット】。
 強化系【アクセル】【ディフェンドアップ】【アタックスアップ】。
 補助系【プロボーク】【ガード】。

 なるほどな。
 多い。

「使ってみるか」

 スキル一覧から【バックステップ】を選択。

「おっ」

 名前の通り、後方に跳ぶ。

 だが。

「あいたーっ」

 勢いそのままに体を預けていたら、着地は足ではなくお尻。

 実際に痛みは感じないが、視線が一気に動いたことから反射的に言ってしまった。

「なるほどなぁ。スキル+プレイヤースキルが必要ってことか。それと――」

 右上に【バックステップ】のアイコンが表示され、その上に7sと出ている。
 つまり、スキルを連続しようすることはできないということだな。

「よし次」



「なるほどな」

 あれから約1時間ぐらい、空中を相手にスキルの試行錯誤をした。

 わかったことといえば、プレイヤースキルを基準にスキルを組み合わせる戦い方が一番セオリーとなる。
 これに関しては、探索者として活動しようと思った過去の自分に感謝だ。

 そして、次が重要。

 最初の方はスキル一覧からスキルを選択して発動させていたが、動き回っているうちに気づき、スロットというのを発見した。
 そのスロットは一列8個の空欄があり、そこにスキルを設定すると、いちいちスキル一覧を開かずにスキルを発動できるようになる。
 ちなみにここに消耗品や装備も入れることができ、全ての時短を計ることがわかった。
 今のところは5列まで出すことができる。

「なんて素晴らしいシステムなんだ。後は、スキルをどのタイミングで獲得できるかがわかればいいんだが……それはさすがにないか」

 こんな序盤でスキルが多いと思ったが、これから先もレベルアップにつれて増えていくはずだ。
 使いやすいものから使いにくいものまであるわけだが、今後はスキルのコンボというのも出てくるだろう。
 だからその予備練習ができれば、と思ったんだが……まあでもこれはこれでリアリティがあっていい。

「現実が辛くてもゲームの世界は最高」

 なんてことを口に出してしまうほどに、俺は今、物凄く心が躍っている。

 スキルの使い方だけじゃない。
 スロットに入れるスキルの順番を入れ替えることによって、発動速度だって変わってくる。

 やばいだろ、やばすぎるだろ。

「今日の予定、決まったな」

 経験値とかお金とか、そこら辺はもう諦めた。
 今日はとことんスキルを研究し尽くしてやる。

 ……あ。

「危ない。完全に忘れていた。怒られる前に……」

 鈴城がゲームを始めるという話と、今晩は連絡をすると約束した。

 ゲーム内だと、連絡を確認できるが送信はできないんだよな。
 不正を防止するためには必要な処置だとはわかるが、ちょっとめんどくさい。

「仕方ないな」

 システムを操作し、ログアウトを選択。

 モンスターが出現しない安全地帯ではないため、ログアウトまで30秒攻撃を食らわない状況で待機しなければならない。

「……なんて連絡しようかな」

 自分から誰かに連絡をする頻度は限りなく低いから、なんて送ればいいのかわからない。

 ……まあ、いつもの感じでいいか。
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