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綾波明日菜の正体
綾の思い
しおりを挟む結局冗談って受け止められた。
まあ、仕方ない……こうなる事はわかっていた。
綾として会っている以上、彼にとって私は雲の上の人扱い。
でも、私はそんな人間じゃない、そんな出来た人間じゃない。
作り物の皮を被っているだけ。
私だって人並みに恋したい、恋愛だってしたい。
でも、今は綾として、必死にやらなければいけない……恋愛なんてしている暇は……無い。
そして、それよりも……一番は妹の事……私は妹が、明日菜が大好きなのだ。
妹は恐らく彼の事が好きなのだろう……今日あんな格好で見に来たのだから間違いない。
でもあの面倒な性格では一向に二人の仲は進展しない。
だから今日彼を呼び出す事で、明日菜の心を少しかき回してみた……。
「……でも……問題が大きくなっちゃったよねえ……やっぱり」
明日菜も綾だってわかれば、なんなら私が彼にバラせば全部解決するって思っていた。
暗いけど、人見知りだけど、慣れてしまえば、問題なく可愛い、さらにはあの顔あの仕草。
全部バラせば……誰でも明日菜の虜になる……。
だから彼もって……そう思っていた。
でも……今日会って、話してわかった。
まさか……あそこ迄彼が、綾に対して入れ込んでいたとは……思ってもいなかった。
もう彼にとって綾は神と同等、彼は異常な迄に綾を神格化している。
これは……大問題だ。
つまり……明日菜も綾だって事が彼にバレたら、二人が恋愛に発展しなくなってしまう。
明日菜の事も神格化してしまう。
この状況をどうするか? どうすればいいのだろうか?
「私が彼ともっと会って、今日以上に彼を使って嫌われる?」
いや、多分彼は喜んでしまう……なんだろうか? 今日の彼は嬉々として荷物運びをしていた。
何か年季を感じる程に……彼は私に、綾に尽くそうとしていた……。
尽くす事でより神格化していく……。
「あいつ……ひょっとしたら……ドM?」
どっちにしても、会えば会うだけ綾への神格化が進んでしまう……そんな気がする。
つまりは、明日菜が綾だとバラすのは悪手だ。
より最悪な事になりかねない……。
このまま、少しずつ二人の関係を深め、進めて行くのが吉なんだろうけど……。
「多分、一生キスも出来ないだろうなあ……」
あの奥手同士じゃあ一生友達で終わる。一生本の話しか、しないだろう。
明日菜を綾だってバラさない様にしながら、どうにかして彼と恋愛にまで発展させなければならない。
それしかない、そして二人の関係が、かなり進んだ所で、綾だと言えば……彼が明日菜を神格化する事は無いだろう……。
「最低キス、できればもっと……」
……ってあの奥手二人をどうやればそこまで盛り上げる事が出来るんだ?
私は頭を抱えた。
綾ってバレない様にって事は、当然キスの時に眼鏡も外さないって事? なんかもう……意地でも外さないとかある意味変態プレイかって感じだよねえ……。
とりあえず……明日は朝早くから仕事だ。
現場が近いから明日菜は来ないし、今からじゃあ遅くなっちゃう……。
明後日、今日の事も含めてきっちり明日菜に話しておかないと……。
とりあえず今後二人をどうするか……どうする事が明日菜の幸せに繋がるか……場合によっては……最後の手段として、綾の活動を辞める事も……明日菜の為にはそこまで考えておかなければ……ならない……。
明日菜の幸せを第一に考えるのなら……それも……。
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