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綾波明日菜の正体
綾波明日菜の正体
しおりを挟む「さあ……何時間でも待ってやる」
俺は気合を入れて待ち合わせ2時間前、開店と同時に待ち合わせ場所の喫茶店に入った。
そして、席に着きモーニングセットを頼むとそのまま目を瞑る。
大丈夫、暇潰しはいくらでもある。俺の頭の中に……。
俺は頭の中にある本棚から、お気に入りのラノベを取り出すと、ペラペラと数ページ捲りこの間読んだ所から読み直す。
大好きなラノベ数十冊は全て記憶しているので、いつでもどこでも読める。
妹の様には記憶は出来ないけど、好きな本数十冊程度なら、俺にも出来る。
慣れてくれば、目を開けて周りを見ながらでも、歩きながらでも読めるけど、やっぱり面白い所では集中してしまい、何度か車に轢かれそうになったので、一応読むときは目を瞑る事にしている。
閉店まで十分に時間を潰せる。そんな覚悟でいた。
まだ開店直後でそれ程人はいない。
俺は時折目を開け、周囲を見回す。
綾波は来ない……、確かに時間は伝えた……。
ただ綾波の意思を、都合を確認せずに切ってしまった。
勝手な男だって思われたかも知れない。
だけど、怖かった。無下もなく断られる事が……
約束の時間が少し過ぎた。モーニングセットのパンは既に食べ終え、氷が解け薄まってきたアイスコーヒーを飲み干す。
俺はコーヒーのお替りを頼もうと顔を上げ店員さんを探そうと周囲を見回すと、俺の目にとんでもない物が……いや、とんでもない者が飛び込んでくる。
「…………え?」
信じられない光景……でも、間違いない、俺が間違える筈がない。
何故ここに? 何故こんな所に? 俺はなんども見返すが、やはり間違いない。
「あ、あやぽん……」
俺の目にあやぽんが、変装もせずに昨日の様な金髪でも、この間のサングラスにスーツでもなく、いつもSNSに上げる様なお洒落なバックを片手に、白基調のノースリーブのシャツ、綺麗な足を見せ付けるようなミニスカート姿で店に入って来る。
そして、店員になにか告げると、立ち止まり店内を見回している。
「ま、まさか……また俺に会いに?」
でも、なんで居場所が? この席は外から見えない筈……。
あやぽんは俺と目が合うと、ゆっくりとこっちに向かって来る。
でも、昨日とは全く違う表情……全く笑う事なく真顔で俺の方に向かって、まるでファッションショーの様な足取りで歩いてくる。
一体なんなんだ? 俺は何も言えずにあやぽんを見つめていた。
そして、あやぽんは俺の前に立ち止まると俺を見下ろしながら言った。
「日下部君……ごめんね、ちょっと遅れちゃった」
「……え?」
「……ごめんね……」
すまなさそうにそう言ったその顔に、俺は心当たりがあった。
でもまさかそんな……あり得ない……何で? どういう事?
だがそれしかない、考えられない。
俺は確認する様に尋ねた。
「ま、まさか……綾波?」
「…………うん」
そう言って笑ったその顔は……俺の大好きな、女神……あやぽん事『綾』その人だった。
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