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過去の話 0-3

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父親は、折檻に満足すると、上下下着一枚と裸足という恰好のルークを、そのまま家の外に放り出した。
季節は秋も半ば、紅葉が始まっていた。
じっとしてると寒いので、仕方なく裸足のまま歩き出し、家から離れた。
割れたガラス瓶が転がる道を裸足で歩くのは怖かったけど、何より気の変わった父親が再び自分を殴りに来るのが怖くて家から離れて夜の街の中を歩いた。

ルークの家は、いわゆるダウンタウンと呼ばれる所に有ったけど、繁華街では無いので夜は静かだ。
昼間歩く時には居るその辺でたむろしているいじめっ子達も居なかったけど、こんな時に限っていつも通りかかる町の警邏の騎士にも合わず、ルークは夜の街を独りでトボトボと歩いた。
見つけて保護してくれないかな、という淡い期待は叶えられる事は無かった。
現実なんて、そんな物だ、ピンチの時に助けてくれるヒーローなんて現れない、神様なんてこの世に居ない、死にそうになったって、自分を助けてくれるのはいつだって自分だけだ。
街燈の光を反射して、キラキラと光るガラスの破片や石英が綺麗だった。
灰色トカゲ族の血が混じるルークは、夜目が利くので暗い道も苦にならなくて、夜空の星は綺麗で、ルークは泣く気にもならなかった。

兎に角寒くて、どこか暖を取れる所が無いか思案した末、思いついたのが夜になると人が居なくなる、森の中の古びた教会だった。
あそこに確か大きな焼却炉が有る。いつも教会の管理をしている人が、夕方遅くにゴミを燃やすから、焼却炉の中なら未だ暖かいかも知れない、そう思いついて足を向けた。
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