真夜中の太陽 ルークの初恋

ルークの初恋 ２－１４

誰も居なくなった部屋で、ルークは一人ため息を一つ付いた。
『僕の所に』だなんて両想いの恋人同士みたいなセリフを言ったのは、ルークの精いっぱいの強がりと、独占欲だ。
だって二人の間には確かな約束なんて何もない、この関係を何て言い表したら良いのかなんてルークには分からない。二人の間に有る確かな物なんて主人と使用人という契約と、誰にも言った事の無い子供の頃の思い出だけだ。
あとは、ルークのシャルレの思う気持ちだけ。ルークは両手で自分の頬をパチパチと軽く叩いて気合を入れると、城に帰る為に自分の荷物をまとめて楽屋を出た。
シャルレ姫のお気に入りとはいえ、ルークの立場は唯の使用人だ。
ルークだけを送迎する馬車なんて無い、乗り合い馬車か徒歩か、とにかく自力で帰らなければならない、明るい内に出ないと劇場近くは繁華街だから夕方から混みだして、シャルレが帰って来る前にシャルレの寝室に帰れなくなってしまう。ルークは急ぎ足で劇場から城に向かった。
灰色蜥蜴族のルークみたいな一歩間違えば即奴隷、しかも性奴隷として狙われやすい者達が一人歩きする時、どんな場所でも通れる道はある程度決まっている。明るく人目が多い所、男達がたむろしない所、そういう所しか通れない。人通りが多い所は、それはそれで強引な呼び込みに絡まれやすいけど、人気ひとけの無い所は犯罪者に狙われやすいのだ。
特に男達だけが妙にたむろしている所では、たとえ人通りが多い所でも立ち止まってはいけない、街中で男女比が偏ってしまった所というのは、つまり公になっているにしろ、内密に処理されてしまったにしろ、何・か有った場所なのだ。
ルークに近道は通れない。