セリフに語らせる

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
14 / 28

桜が終わっちゃったね

しおりを挟む
桜が終わっちゃったね

薄紅色の花びらが舞い散る公園のベンチに、二人は肩を寄せ合っていた。陽だまりが二人を包み込み、春の温かさが心地よい。

「桜、終わっちゃったね。」

一人の少女が、静かに呟いた。

「そうだね。」

もう一人の少年が、少女の手をそっと握った。

二人は、桜が満開だった数週間前を思い出していた。

「あの日、桜見物楽しかったね。」

少女が、少年に顔を向けた。

「うん、楽しかった。」

少年は、少女の笑顔を見つめた。

あの日、二人は公園で桜を眺めながら、語り合った。

将来の夢、好きな音楽、家族のこと。

二人は、初めて会った時からずっと、親しい友達だった。

しかし、最近二人は、少し距離を感じていた。

お互いに忙しくなり、なかなか会えなくなっていた。

そして、桜の季節も終わってしまった。

「また来年、桜を見に行こうね。」

少女が、少年に提案した。

「うん、約束だよ。」

少年は、少女の目をしっかりと見た。

二人は、互いに微笑み合った。

桜は終わってしまったけれど、二人の友情は、これからも変わらず続くのだろう。

5年後

同じ公園のベンチに、二人は再び座っていた。

しかし、二人はもう学生ではなく、大人になっていた。

「桜、咲いてるね。」

少女が、桜を見上げた。

「そうだね。」

少年も、桜を見上げた。

五年前、二人は桜の終わりを惜しんだ。

しかし、今年は桜の始まりを喜んでいる。

「五年前、ここで桜見物したよね。」

少女が、少年に思い出させた。

「うん、覚えてるよ。」

少年は、少女の手をそっと握った。

あの日、二人は将来の夢について語り合った。

少女は、医者になる夢を語った。

少年は、ミュージシャンになる夢を語った。

五年の月日が流れた。

少女は、夢通り医者になっていた。

少年は、夢通りミュージシャンになっていた。

二人は、それぞれ忙しい日々を送っていたが、それでも定期的に会っていた。

そして、今年も桜の季節がやってきた。

「あの頃、私たちは学生だったね。」

少女が、しみじみと語った。

「そうだね。何もかもが、あの頃の方が楽だったような気がする。」

少年は、少し照れ笑いした。

学生時代は、自由で無責任だった。

大人になって、責任と義務が増えた。

しかし、それでも二人は、あの頃の思い出を大切にしている。

「これからも、ずっと友達でいようね。」

少女が、少年に言った。

「うん、約束だよ。」

少年も、少女に言った。

二人は、互いに微笑み合った。

桜は、今年も美しく咲き誇っている。

そして、二人の友情も、これからも変わらず続いていくのだろう。

10年後

同じ公園のベンチに、二人は再び座っていた。

しかし、二人はもう若くはなく、白髪が目立っていた。

「桜、散り始めたね。」

少女が、桜を見上げた。

「そうだね。」

少年も、桜を見上げた。

十年が経ち、二人はそれぞれ結婚し、子供を授かった。

それでも、二人は定期的に会っていた。

そして、今年も桜の季節がやってきた。

「もう、私たちは若くないね。」

少女が、しみじみと語った。

「そうだね。でも、それでも桜は美しい。」

少年も、桜を見上げた。

歳を重ねても、二人の友情は変わらなかった。

むしろ、より深まっていくような気がする。

「これからの人生も、一緒に歩んでいこうね。」

少女が、少年に言った。

「うん、約束だよ。」

少年も、少女に言った。

二人は、互いに微笑み合った。

桜は、今年も静かに散り始めている。

しかし、二人の友情は、これからも変わらず続いていくのだろう。

50年後

同じ公園のベンチに、二人は再び座っていた。

しかし、二人はもう動くことができず、車椅子に乗っていた。

「桜、もうほとんど残ってないね。」

少女が、桜を見上げた。

「そうだね。」

少年も、桜を見上げた。

五十年が経ち、二人はもう人生の終わりを迎えようとしていた。

それでも、二人は定期的に会っていた。

そして、今年も桜の季節がやってきた。

「もう、私たちはほとんど何も話せなくなったね。」

少女が、ゆっくりと語った。

「そうだね。でも、それでも一緒にいるだけで嬉しい。」

少年も、少女の手をそっと握った。

二人は、互いに目を合わせた。

言葉はなくても、二人は心で通じ合っていた。

桜は、静かに散り始めている。

しかし、二人の友情は、永遠に続くのだろう。

エピローグ

少女は、静かに息を引き取った。

少年は、少女の手を握りしめ、涙を流した。

少女は、最期まで少年の顔を笑顔で見つめていた。

少年は、少女のいない世界を想像することができなかった。

しかし、彼は分かった。

少女は、これからもずっと彼の心の中に生き続けていくのだ。

少年は、静かに立ち上がり、桜の木を見上げた。

桜は、散り終えていた。

しかし、その木は、来年もまた美しい花を咲かせるだろう。

少年は、少女との約束を思い出した。

「これからも、ずっと友達でいようね。」

少年は、静かに呟いた。

「うん、約束だよ。」

少女の声が、彼の耳に聞こえたような気がした。

少年は、微笑みながら、公園を後にした。

その他
この物語は、友情の大切さを描いた作品です。

二人は、長い人生の中で様々な困難を乗り越え、友情を深めてきました。

そして、人生の終わりを迎えるまで、二人にとってかけがえのない存在であり続けたのです。

この物語が、あなたにとって少しでも心に響くものがあれば幸いです。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

最強✕最弱Re:start

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:4

子グマのキャロット

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

セリフ集

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:0

拝啓

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

星のテロメア

SF / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:0

ごめんなさい本気じゃないの

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

約束

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

ボクらはあの桜の麓で

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:3

処理中です...