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19.予感②
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「ロナだってケイが聞いてきたら全部教えるって言っていたでしょう、今がその時よ。
この子はね、自分で知ったことを自分で考えて聞いてきたの。まだ六歳だけど、この子なりにちゃんと考えている。お母さんに心配を掛けたくないからロナに聞かずに私達に聞いてきた。
だからその気持ちを大切にしてあげるべきよ。
‥‥それにね、どこかの親切な人から余計なことを聞くよりは私達がちゃんと話した方がよっぽど良いわ」
伯母さんはそう言うと僕を優しく抱きしめてくる。
ここはお母さんの次に安心できる場所だ。
「‥‥そうだな。分かったケイ、お前の質問に答えてやる。だがなこれはあくまでも俺とカサア伯母さんから見た事実だ、それだけは覚えておいてくれ」
そう言ってからトム伯父さんとカサア伯母さんは僕のお父さんについて話してくれた。
物語よりも長い話だった。
お父さんとお母さんの結婚と離縁、お父さんは僕の存在を知らずに別れたこと、そして僕が生まれた後そのことを知って後悔していること、そして僕をとても大切に想っていて法律上父親ではないけど我が子として心から愛していること。
そして僕とお母さんのために毎月お金を預けていること。
一瞬だけ見たあの人の優しそうな横顔を思い出す、やっぱり優しい人なんだと素直に思えた。
一度も話したことがないお父さんという存在が身近に感じられる。
おとうさん、僕のことをあいしてくれているんだ。
だからいつもあいにきてくれてたんだ。
おとうさんって僕がよんでもいいよね?
お父さんに愛されているんだと思うと嬉しかった。
話したことはないけど僕とお母さんにこっそりと会いに来ていることが嬉しかった。
難しい話もいっぱいあって分からないこともたくさんあった。僕はその度に質問をして伯父さん達もなるべく易しい言い方で答えてくれる。
でもまだ分からないことがある。
おとうさんは僕のことがすきなんだよね。
それにおかあさんのこともずっとすきみたい。
どうしてべつべつにくらすのかな?
いっしょにくらしちゃだめなの‥‥。
伯父さん達の話からお父さんがお母さんと僕を好きなのは分かった。僕もそんなお父さんが好きになっている。
そしてお母さんだってきっとお父さんのことがすきなんだと思う。
お母さんは大切にとってある新聞記事をいつも読み返して嬉しそうな顔しながらちょっぴり寂しそうな顔をしていたのを思いだす。今まではそれに何が書いてあるのか知らなかったけど、今日それは隣町の新聞記事で騎士団のことが書いてあるものだと教えてもらった。
お父さんは騎士でその活躍が新聞に載ると会ったことがない僕の叔母さんがトム伯父さん宛に新聞を送ってくるらしい。
『これをロナさんに渡してください』と。
それをお母さんは宝物にしている。
それにお父さんを見掛けた日の夕食はなぜかいつもより量が多かった。
『作り過ぎちゃったわ、ケイたくさん食べてね』って笑うお母さんに『おいしいね、おかあさん!』と無邪気に笑っている僕。
美味しい料理がたくさんで何も考えずにパクパクと食べていたけど、今ならあの料理はお父さんが来るかもと思って一人前多く作っていた気がする。
僕のかんがえすぎかな?
でもきっとあれはおとうさんの分なんだよね!
これってお母さんはまだお父さんが好きってことなんだと思う。
「ねえ、おとうさんはおかあさんがだいすき。おかあさんもおとうさんがすき…だよね。
そしてふたりとも僕のことがだいすきなんだよね。
だったらいっしょにくらさないのかな?」
六歳の僕は単純にそう思う、だって好き同士なのに別々なんて変だ。
「ケイ、いろいろと難しいんだよ。お父さんもお母さんも良い人でお互いを想っている。でもね拗れてしまった糸は簡単に元に戻らないのさ、大人だからこそ考え過ぎてしまうことがあるんだよ」
カサア伯母さんは少し悲しそうな顔でそう言うけど、僕にはよく分からない。
うーん、なんでかな?
いっしょにくらしせたらうれしいのに…。
「まあいろいろとあるんだ、ケイ。大人って奴は考え過ぎて素直になれないこともある。ロナは頑張り屋だが頑張り過ぎて甘えるのがちょっと下手だったしな、ザイは大切なものを今度こそ守りたいと臆病になっちまっている。
お前みたいにもっと素直になる勇気を持てたらいいのにな‥‥」
伯父さんは優しい声音でそう言うと僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でながら『お前は本当にいい子だな、誰に似たんだ?そうか俺に似たのかっ!』と言って『何言っているの、ケイは両親の良いところを貰ったんだろう』とまた伯母さんに叱られていた。
なんだかホッとする。
知りたいことが分かったし、お父さんとお母さんがお互いを好きなのが嬉しい。
「‥‥僕、これからどうすればいいかな?」
僕はお父さんとお母さんに仲直りをして貰いたい。でも正直どうすればいいのか分からない。大人って難しいみたいだから子供みたいに『ごめんね、もうなかなおりしよう!』では駄目なのだろう。
「ケイ、自分が思った通りに行動しなさい。
お父さんとお母さんにはそれぞれ考えがあって別れたけどそれはあなたは関係ないことよ。大人の都合なんて考える必要はないわ、それはあなたが背負うことじゃない。
だからいいのよ、今日のように自分で考えて行動して。
困った時には私もトム伯父さんがいつでも助けてあげる。それにね、あなたのお母さんとお父さんは誰よりもケイの味方よ」
本当にいいの…?
だれかがいやがったら…どうしよう?
それでもいいのかな…。
僕は伯母さんがそう言ってくれるならそうしたかった。でも不安もある。大好きなお母さんを困らせたくないしお父さんに嫌われたくない。
‥‥難し過ぎる。
「あっはっは、ケイ男は度胸だ。失敗したらまたやり直せばいいんだ」
バンバンと僕の肩を叩いて豪快に笑っている伯父さんとそれを見て『たまには良いこと言うじゃない!』と笑っている伯母さん。
いいんだ、失敗してもやり直せばいいんだ。
そうだ、そうしよう!
僕は伯父さん達と一緒に笑っていた、朝と違って気分はすっきりしていた。
この子はね、自分で知ったことを自分で考えて聞いてきたの。まだ六歳だけど、この子なりにちゃんと考えている。お母さんに心配を掛けたくないからロナに聞かずに私達に聞いてきた。
だからその気持ちを大切にしてあげるべきよ。
‥‥それにね、どこかの親切な人から余計なことを聞くよりは私達がちゃんと話した方がよっぽど良いわ」
伯母さんはそう言うと僕を優しく抱きしめてくる。
ここはお母さんの次に安心できる場所だ。
「‥‥そうだな。分かったケイ、お前の質問に答えてやる。だがなこれはあくまでも俺とカサア伯母さんから見た事実だ、それだけは覚えておいてくれ」
そう言ってからトム伯父さんとカサア伯母さんは僕のお父さんについて話してくれた。
物語よりも長い話だった。
お父さんとお母さんの結婚と離縁、お父さんは僕の存在を知らずに別れたこと、そして僕が生まれた後そのことを知って後悔していること、そして僕をとても大切に想っていて法律上父親ではないけど我が子として心から愛していること。
そして僕とお母さんのために毎月お金を預けていること。
一瞬だけ見たあの人の優しそうな横顔を思い出す、やっぱり優しい人なんだと素直に思えた。
一度も話したことがないお父さんという存在が身近に感じられる。
おとうさん、僕のことをあいしてくれているんだ。
だからいつもあいにきてくれてたんだ。
おとうさんって僕がよんでもいいよね?
お父さんに愛されているんだと思うと嬉しかった。
話したことはないけど僕とお母さんにこっそりと会いに来ていることが嬉しかった。
難しい話もいっぱいあって分からないこともたくさんあった。僕はその度に質問をして伯父さん達もなるべく易しい言い方で答えてくれる。
でもまだ分からないことがある。
おとうさんは僕のことがすきなんだよね。
それにおかあさんのこともずっとすきみたい。
どうしてべつべつにくらすのかな?
いっしょにくらしちゃだめなの‥‥。
伯父さん達の話からお父さんがお母さんと僕を好きなのは分かった。僕もそんなお父さんが好きになっている。
そしてお母さんだってきっとお父さんのことがすきなんだと思う。
お母さんは大切にとってある新聞記事をいつも読み返して嬉しそうな顔しながらちょっぴり寂しそうな顔をしていたのを思いだす。今まではそれに何が書いてあるのか知らなかったけど、今日それは隣町の新聞記事で騎士団のことが書いてあるものだと教えてもらった。
お父さんは騎士でその活躍が新聞に載ると会ったことがない僕の叔母さんがトム伯父さん宛に新聞を送ってくるらしい。
『これをロナさんに渡してください』と。
それをお母さんは宝物にしている。
それにお父さんを見掛けた日の夕食はなぜかいつもより量が多かった。
『作り過ぎちゃったわ、ケイたくさん食べてね』って笑うお母さんに『おいしいね、おかあさん!』と無邪気に笑っている僕。
美味しい料理がたくさんで何も考えずにパクパクと食べていたけど、今ならあの料理はお父さんが来るかもと思って一人前多く作っていた気がする。
僕のかんがえすぎかな?
でもきっとあれはおとうさんの分なんだよね!
これってお母さんはまだお父さんが好きってことなんだと思う。
「ねえ、おとうさんはおかあさんがだいすき。おかあさんもおとうさんがすき…だよね。
そしてふたりとも僕のことがだいすきなんだよね。
だったらいっしょにくらさないのかな?」
六歳の僕は単純にそう思う、だって好き同士なのに別々なんて変だ。
「ケイ、いろいろと難しいんだよ。お父さんもお母さんも良い人でお互いを想っている。でもね拗れてしまった糸は簡単に元に戻らないのさ、大人だからこそ考え過ぎてしまうことがあるんだよ」
カサア伯母さんは少し悲しそうな顔でそう言うけど、僕にはよく分からない。
うーん、なんでかな?
いっしょにくらしせたらうれしいのに…。
「まあいろいろとあるんだ、ケイ。大人って奴は考え過ぎて素直になれないこともある。ロナは頑張り屋だが頑張り過ぎて甘えるのがちょっと下手だったしな、ザイは大切なものを今度こそ守りたいと臆病になっちまっている。
お前みたいにもっと素直になる勇気を持てたらいいのにな‥‥」
伯父さんは優しい声音でそう言うと僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でながら『お前は本当にいい子だな、誰に似たんだ?そうか俺に似たのかっ!』と言って『何言っているの、ケイは両親の良いところを貰ったんだろう』とまた伯母さんに叱られていた。
なんだかホッとする。
知りたいことが分かったし、お父さんとお母さんがお互いを好きなのが嬉しい。
「‥‥僕、これからどうすればいいかな?」
僕はお父さんとお母さんに仲直りをして貰いたい。でも正直どうすればいいのか分からない。大人って難しいみたいだから子供みたいに『ごめんね、もうなかなおりしよう!』では駄目なのだろう。
「ケイ、自分が思った通りに行動しなさい。
お父さんとお母さんにはそれぞれ考えがあって別れたけどそれはあなたは関係ないことよ。大人の都合なんて考える必要はないわ、それはあなたが背負うことじゃない。
だからいいのよ、今日のように自分で考えて行動して。
困った時には私もトム伯父さんがいつでも助けてあげる。それにね、あなたのお母さんとお父さんは誰よりもケイの味方よ」
本当にいいの…?
だれかがいやがったら…どうしよう?
それでもいいのかな…。
僕は伯母さんがそう言ってくれるならそうしたかった。でも不安もある。大好きなお母さんを困らせたくないしお父さんに嫌われたくない。
‥‥難し過ぎる。
「あっはっは、ケイ男は度胸だ。失敗したらまたやり直せばいいんだ」
バンバンと僕の肩を叩いて豪快に笑っている伯父さんとそれを見て『たまには良いこと言うじゃない!』と笑っている伯母さん。
いいんだ、失敗してもやり直せばいいんだ。
そうだ、そうしよう!
僕は伯父さん達と一緒に笑っていた、朝と違って気分はすっきりしていた。
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