私は大切にされていますか~花嫁修業で知る理想と現実~

矢野りと

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5.夕食

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夕食の時間になり、家族みんな揃ってダイニングルームで食事を始めることになった。
ロイアン家は使用人達も大勢いるので、平民だが給仕を受けながら食事をする。
私の実家ギャロ家でも同じようなスタイルで食事を行っていたので戸惑う事はなかったのだが、リリアンはそうは思わなかったようだ。

「カリナ姉さんは給仕されて食事をするのは初めてよね?給仕されるときに手を出したりしないのは知ってるかしら?」

リリアンは本気で私が食事のマナーを知らないと思っているようで、悪気なく聞いてくる。
それでも、もう少しオブラートに包んで尋ねるのが淑女としての対応だと思うが、彼女にはその配慮が全くない。これでは私が晒し者になってしまうのに、そこまで考えが及ばないみたいだ。

「おい、リリアン。なんだその言い方は!カリナに失礼だろう、ちゃんと謝れ!」

サリムは自分の婚約者が侮辱された事に対してちゃんと怒ってくれていた。私は声を荒げるサリムの姿はほとんど見たことはなかったが、今はその姿がとても頼もしく思えていた。

---やっぱりサリムは味方になってくれるのね。ちゃんと私の立場を考えてくれて嬉しいわ。

私は内心サリムの意見に賛同していたが、立場的にそんな表情を見せる訳にもいかず、神妙な面持ちを保って事態の成り行きを見守ることにした。

すると義母がちょっときつい言い方でサリムに反論してきた。

「確かにリリアンの言い方は良くなかったわ。でもリリアンはカリナを心配して言ったのよ、意地悪ではないでしょう。リリアンは天真爛漫で素直な子だからあの言い方だったけど、他意はないのよ。
それを兄である貴方が理解してあげないでどうするの!」
「母さん、それは天真爛漫ではなく無神経って言うんだよ。リリアンはもう20歳なんだから、ちゃんとするべきだ」

義母とサリムの応酬はしばらく続いたが、どちらも折れることはなかった。気まずい雰囲気のなか突然、義父が黙っていた私に話を振って来た。

「カリナはどう思っているんだい?私は当事者であるカリナの意見を尊重するべきだと思っているよ」

義父はこの話の決着を私に委ねてきた。正直『ずるい』と思ってしまった。この場面で私が感じたままを伝えて、リリアンを非難する事など出来るはずがない。

---はぁー、私が損な役回りをするしかないのね。

私は義父の無言の期待に応える為に『私に落ち度があった事を謝罪する』という無難な形で終わらせることにした。それ以外の選択肢なんて私には選びようがなかった。

「私を心配してくれるリリアンの気持ちはとても有り難いです。それに私が実家でも同じスタイルで食事をしていたのを伝えていなかったのが、そもそもいけなかったと思っています。ごめんなさい」

私の言葉を額面通り受け取り、分が悪かった義母達はパッと表情を明るくした。

「いいわよ。カリナ姉さん、私はもう気にしてないわ」
「そうよ。次から気を付ければいいことだから、そんなに落ち込まないで」
「はい、お心遣い有り難うございます」

リリアンと義母は寛大な心を見せ、それに対して私がお礼を述べるという茶番を見て義父は『うんうん』と満足げに頷いていた。

どうやら私の対応は満点の出来だったようだ。


隣に座るサリムは私の謝罪について何も言わなかったがその茶番にも加わらないでくれた。そしてテーブルの下でそっと私の手を強く握り締めてくれたのが救いだった。

---サリムだけでも分かってくれていて良かったと思うべきなのかな…。

その後は何事もなかったように和やかな雰囲気のまま花嫁修業初日の夕食を終えた。

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