5 / 36
5.夕食
しおりを挟む
夕食の時間になり、家族みんな揃ってダイニングルームで食事を始めることになった。
ロイアン家は使用人達も大勢いるので、平民だが給仕を受けながら食事をする。
私の実家ギャロ家でも同じようなスタイルで食事を行っていたので戸惑う事はなかったのだが、リリアンはそうは思わなかったようだ。
「カリナ姉さんは給仕されて食事をするのは初めてよね?給仕されるときに手を出したりしないのは知ってるかしら?」
リリアンは本気で私が食事のマナーを知らないと思っているようで、悪気なく聞いてくる。
それでも、もう少しオブラートに包んで尋ねるのが淑女としての対応だと思うが、彼女にはその配慮が全くない。これでは私が晒し者になってしまうのに、そこまで考えが及ばないみたいだ。
「おい、リリアン。なんだその言い方は!カリナに失礼だろう、ちゃんと謝れ!」
サリムは自分の婚約者が侮辱された事に対してちゃんと怒ってくれていた。私は声を荒げるサリムの姿はほとんど見たことはなかったが、今はその姿がとても頼もしく思えていた。
---やっぱりサリムは味方になってくれるのね。ちゃんと私の立場を考えてくれて嬉しいわ。
私は内心サリムの意見に賛同していたが、立場的にそんな表情を見せる訳にもいかず、神妙な面持ちを保って事態の成り行きを見守ることにした。
すると義母がちょっときつい言い方でサリムに反論してきた。
「確かにリリアンの言い方は良くなかったわ。でもリリアンはカリナを心配して言ったのよ、意地悪ではないでしょう。リリアンは天真爛漫で素直な子だからあの言い方だったけど、他意はないのよ。
それを兄である貴方が理解してあげないでどうするの!」
「母さん、それは天真爛漫ではなく無神経って言うんだよ。リリアンはもう20歳なんだから、ちゃんとするべきだ」
義母とサリムの応酬はしばらく続いたが、どちらも折れることはなかった。気まずい雰囲気のなか突然、義父が黙っていた私に話を振って来た。
「カリナはどう思っているんだい?私は当事者であるカリナの意見を尊重するべきだと思っているよ」
義父はこの話の決着を私に委ねてきた。正直『ずるい』と思ってしまった。この場面で私が感じたままを伝えて、リリアンを非難する事など出来るはずがない。
---はぁー、私が損な役回りをするしかないのね。
私は義父の無言の期待に応える為に『私に落ち度があった事を謝罪する』という無難な形で終わらせることにした。それ以外の選択肢なんて私には選びようがなかった。
「私を心配してくれるリリアンの気持ちはとても有り難いです。それに私が実家でも同じスタイルで食事をしていたのを伝えていなかったのが、そもそもいけなかったと思っています。ごめんなさい」
私の言葉を額面通り受け取り、分が悪かった義母達はパッと表情を明るくした。
「いいわよ。カリナ姉さん、私はもう気にしてないわ」
「そうよ。次から気を付ければいいことだから、そんなに落ち込まないで」
「はい、お心遣い有り難うございます」
リリアンと義母は寛大な心を見せ、それに対して私がお礼を述べるという茶番を見て義父は『うんうん』と満足げに頷いていた。
どうやら私の対応は満点の出来だったようだ。
隣に座るサリムは私の謝罪について何も言わなかったがその茶番にも加わらないでくれた。そしてテーブルの下でそっと私の手を強く握り締めてくれたのが救いだった。
---サリムだけでも分かってくれていて良かったと思うべきなのかな…。
その後は何事もなかったように和やかな雰囲気のまま花嫁修業初日の夕食を終えた。
ロイアン家は使用人達も大勢いるので、平民だが給仕を受けながら食事をする。
私の実家ギャロ家でも同じようなスタイルで食事を行っていたので戸惑う事はなかったのだが、リリアンはそうは思わなかったようだ。
「カリナ姉さんは給仕されて食事をするのは初めてよね?給仕されるときに手を出したりしないのは知ってるかしら?」
リリアンは本気で私が食事のマナーを知らないと思っているようで、悪気なく聞いてくる。
それでも、もう少しオブラートに包んで尋ねるのが淑女としての対応だと思うが、彼女にはその配慮が全くない。これでは私が晒し者になってしまうのに、そこまで考えが及ばないみたいだ。
「おい、リリアン。なんだその言い方は!カリナに失礼だろう、ちゃんと謝れ!」
サリムは自分の婚約者が侮辱された事に対してちゃんと怒ってくれていた。私は声を荒げるサリムの姿はほとんど見たことはなかったが、今はその姿がとても頼もしく思えていた。
---やっぱりサリムは味方になってくれるのね。ちゃんと私の立場を考えてくれて嬉しいわ。
私は内心サリムの意見に賛同していたが、立場的にそんな表情を見せる訳にもいかず、神妙な面持ちを保って事態の成り行きを見守ることにした。
すると義母がちょっときつい言い方でサリムに反論してきた。
「確かにリリアンの言い方は良くなかったわ。でもリリアンはカリナを心配して言ったのよ、意地悪ではないでしょう。リリアンは天真爛漫で素直な子だからあの言い方だったけど、他意はないのよ。
それを兄である貴方が理解してあげないでどうするの!」
「母さん、それは天真爛漫ではなく無神経って言うんだよ。リリアンはもう20歳なんだから、ちゃんとするべきだ」
義母とサリムの応酬はしばらく続いたが、どちらも折れることはなかった。気まずい雰囲気のなか突然、義父が黙っていた私に話を振って来た。
「カリナはどう思っているんだい?私は当事者であるカリナの意見を尊重するべきだと思っているよ」
義父はこの話の決着を私に委ねてきた。正直『ずるい』と思ってしまった。この場面で私が感じたままを伝えて、リリアンを非難する事など出来るはずがない。
---はぁー、私が損な役回りをするしかないのね。
私は義父の無言の期待に応える為に『私に落ち度があった事を謝罪する』という無難な形で終わらせることにした。それ以外の選択肢なんて私には選びようがなかった。
「私を心配してくれるリリアンの気持ちはとても有り難いです。それに私が実家でも同じスタイルで食事をしていたのを伝えていなかったのが、そもそもいけなかったと思っています。ごめんなさい」
私の言葉を額面通り受け取り、分が悪かった義母達はパッと表情を明るくした。
「いいわよ。カリナ姉さん、私はもう気にしてないわ」
「そうよ。次から気を付ければいいことだから、そんなに落ち込まないで」
「はい、お心遣い有り難うございます」
リリアンと義母は寛大な心を見せ、それに対して私がお礼を述べるという茶番を見て義父は『うんうん』と満足げに頷いていた。
どうやら私の対応は満点の出来だったようだ。
隣に座るサリムは私の謝罪について何も言わなかったがその茶番にも加わらないでくれた。そしてテーブルの下でそっと私の手を強く握り締めてくれたのが救いだった。
---サリムだけでも分かってくれていて良かったと思うべきなのかな…。
その後は何事もなかったように和やかな雰囲気のまま花嫁修業初日の夕食を終えた。
82
あなたにおすすめの小説
【完結】貴方の望み通りに・・・
kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも
どんなに貴方を見つめても
どんなに貴方を思っても
だから、
もう貴方を望まない
もう貴方を見つめない
もう貴方のことは忘れる
さようなら
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる