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6.サリムの安堵
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ーーーサリム視点ーーー
夕食の後、俺は自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていくカリナを慌てて追いかけていった。
「カリナ、ちょっといいかな。部屋に戻る前に少し話がしたいんだ」
「ええ、大丈夫よ」
俺はカリナの細い腕をしっかりと掴み、誰も使っていない南に面した綺麗な客間に入っていった。灯りをともしてから客間の扉を閉じると同時に俺は腰を90度に曲げ、勢いよく謝り始めた。
「カリナ、本当にごめん!妹のリリアンがあんな失礼な事を言って不快な思いをさせて。そのうえ謝罪もしないなんて許される事じゃない。それに母の妹を庇う態度も父の君の立場を考えない発言も酷かった。
本当に、本当に申し訳ない!
許してくれなんて言えないけど、でも許して欲しい!
カリナ、本当にごめん!」
俺はなりふり構わず怒涛の勢いでカリナに謝り続けた。『許さない』という言葉を聞きたくなくて、彼女が口を開く間を与えない様に話し続けた。
そのせいかカリナは何も言ってこなかった、そうなると今度はその沈黙が辛くて、俺は顔だけをそっと上げ『やっぱり許すことは出来ない?』と情けないくらい小声で聞いてみた。
するとカリナはポカーンとしていた表情を崩し、いきなり笑いだした。
「ふふふ。サリムったら、いきなり暴走した馬車のような勢いで謝り始めるからびっくりして反応できなかったわよ。あははは、おかしいったらないわ。あなたでもあんな風になることがあるのね、ふふふ」
カリナが笑いながら話してくれたので、俺はやっとホッとすることが出来た。
そして『抱き締めていいかな?』とおずおずと言いながら、そっとカリナを抱き寄せ、彼女の肩に自分の顔を埋めた。
「良かった、君が帰るなんて言ったらどうしようかと夕食中ずっと気が気でなかったんだ。胃がキリキリして味も分からなかったんだ」
「あら、それは残念ね。とっても美味しいステーキだったのに、ふふふ」
「カリナ意地悪言わないでくれ。俺は本当に心配していたんだから。今日の俺ほど可哀想な男はいないよ」
俺はカリナが怒っていないのが分かると、安心していつものように話すことが出来た。カリナの愛情が自分にある事が確認出来て、俺は躍り出すほど嬉しくて仕方がなかった。
---カリナの気持ちが俺から離れていないで良かった。
ただ夕食の時みたいなことが俺がいない時に起こったらと思うとゾッとした。そんなことが続いたら彼女と上手くいかなくなってしまう。大切なカリナを安心させなくてはと、俺は彼女の肩から顔を上げて話し掛けた。
「カリナ、困った事があったら遠慮しないで言ってくれ。妹のリリアンも悪い奴ではないんだが末っ子だから甘やかされているんだ。両親も妹には甘いからあんな態度だったけど、君に対して思うところがあるわけではなんだ。
それは誤解しないでくれ。
家族は本当に君を歓迎しているからね。
それに俺は何があってもカリナの味方だから信じてくれ」
「有り難う、サリム。私もサリムの家族とは仲良くやっていきたいから、気にしない事にするわ。
それに悪気はないのはちゃんと分かっているから大丈夫よ。私も半年後にはロイアン家に嫁ぐ身なのだから、今から上手くやっていけるようにもっと頑張るわ」
「有難う。カリナが俺の家族に歩み寄ってくれて嬉しいよ。君は世界一理想的なお嫁さんだ」
愛しているカリナが俺の家族に理解を示し、仲良くしようと前向きな態度でいてくれるのが嬉しかった。
『これで大丈夫だ、解決した』と心の底から安堵し、今日の事はもう済んだ事として、両親や妹に対して話を蒸し返すようなことはせずに終わらせることにした。
---余計な波風を立てたら、カリナの居心地が悪くなるだろうから止めておこう。それにカリナも大丈夫そうだしな。
それから俺とカリナは家族の事に触れず、半年後の結婚式に呼ぶ友人やドレスの話で盛り上がっていた。
夕食の後、俺は自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていくカリナを慌てて追いかけていった。
「カリナ、ちょっといいかな。部屋に戻る前に少し話がしたいんだ」
「ええ、大丈夫よ」
俺はカリナの細い腕をしっかりと掴み、誰も使っていない南に面した綺麗な客間に入っていった。灯りをともしてから客間の扉を閉じると同時に俺は腰を90度に曲げ、勢いよく謝り始めた。
「カリナ、本当にごめん!妹のリリアンがあんな失礼な事を言って不快な思いをさせて。そのうえ謝罪もしないなんて許される事じゃない。それに母の妹を庇う態度も父の君の立場を考えない発言も酷かった。
本当に、本当に申し訳ない!
許してくれなんて言えないけど、でも許して欲しい!
カリナ、本当にごめん!」
俺はなりふり構わず怒涛の勢いでカリナに謝り続けた。『許さない』という言葉を聞きたくなくて、彼女が口を開く間を与えない様に話し続けた。
そのせいかカリナは何も言ってこなかった、そうなると今度はその沈黙が辛くて、俺は顔だけをそっと上げ『やっぱり許すことは出来ない?』と情けないくらい小声で聞いてみた。
するとカリナはポカーンとしていた表情を崩し、いきなり笑いだした。
「ふふふ。サリムったら、いきなり暴走した馬車のような勢いで謝り始めるからびっくりして反応できなかったわよ。あははは、おかしいったらないわ。あなたでもあんな風になることがあるのね、ふふふ」
カリナが笑いながら話してくれたので、俺はやっとホッとすることが出来た。
そして『抱き締めていいかな?』とおずおずと言いながら、そっとカリナを抱き寄せ、彼女の肩に自分の顔を埋めた。
「良かった、君が帰るなんて言ったらどうしようかと夕食中ずっと気が気でなかったんだ。胃がキリキリして味も分からなかったんだ」
「あら、それは残念ね。とっても美味しいステーキだったのに、ふふふ」
「カリナ意地悪言わないでくれ。俺は本当に心配していたんだから。今日の俺ほど可哀想な男はいないよ」
俺はカリナが怒っていないのが分かると、安心していつものように話すことが出来た。カリナの愛情が自分にある事が確認出来て、俺は躍り出すほど嬉しくて仕方がなかった。
---カリナの気持ちが俺から離れていないで良かった。
ただ夕食の時みたいなことが俺がいない時に起こったらと思うとゾッとした。そんなことが続いたら彼女と上手くいかなくなってしまう。大切なカリナを安心させなくてはと、俺は彼女の肩から顔を上げて話し掛けた。
「カリナ、困った事があったら遠慮しないで言ってくれ。妹のリリアンも悪い奴ではないんだが末っ子だから甘やかされているんだ。両親も妹には甘いからあんな態度だったけど、君に対して思うところがあるわけではなんだ。
それは誤解しないでくれ。
家族は本当に君を歓迎しているからね。
それに俺は何があってもカリナの味方だから信じてくれ」
「有り難う、サリム。私もサリムの家族とは仲良くやっていきたいから、気にしない事にするわ。
それに悪気はないのはちゃんと分かっているから大丈夫よ。私も半年後にはロイアン家に嫁ぐ身なのだから、今から上手くやっていけるようにもっと頑張るわ」
「有難う。カリナが俺の家族に歩み寄ってくれて嬉しいよ。君は世界一理想的なお嫁さんだ」
愛しているカリナが俺の家族に理解を示し、仲良くしようと前向きな態度でいてくれるのが嬉しかった。
『これで大丈夫だ、解決した』と心の底から安堵し、今日の事はもう済んだ事として、両親や妹に対して話を蒸し返すようなことはせずに終わらせることにした。
---余計な波風を立てたら、カリナの居心地が悪くなるだろうから止めておこう。それにカリナも大丈夫そうだしな。
それから俺とカリナは家族の事に触れず、半年後の結婚式に呼ぶ友人やドレスの話で盛り上がっていた。
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