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21.親切な忠告②
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「いきなり不躾な事を言って気を悪くしましたか」
「いいえ、そんな事はないです。でもなぜそう思ったんですか?私と会うのはまだ二回目ですよね」
確かに私は無理をしている、それは合っている。けれどもそんな事は一言も話していないし、トムが話したとは思えない。
---どうして知っているのかしら。
リチャードさんは私の疑問が分かったようで、『まずは私の話をしていいですか』と訊ねてくる。私が黙ったまま頷くと彼は落ち着いた声で話し始めた。
「私は子供時分、良く言えば無邪気、悪く言えば考えなしの馬鹿な子供でした。ある日私を含めた愚かな家族が実母を酷く傷つけ追い込んだんです。本当に許されない事を私は口にしたんですよ…。
私は年下の妹に怒られ自分のした事に気づいたときは後の祭りで、その後に両親は離縁しました。
それから馬鹿な私なりに考え周りをよく見て行動する事を心掛けるようになりました。そして分かったんです、言葉で母を傷つける前から、母を傷つけていたことに」
「それはどういう事ですか?」
「私や家族は母の頑張りという犠牲によって幸せに暮らしていたんです。それに気づかずに『母なら分かってくれる、大丈夫だ』と周りは甘え続けていました。みんなで傷つけた後もそう思い込んでいたんです。
呆れるくらい愚かでしょう?
ちゃんと現実を見て最初から実母をフォローしていたら、離縁には至らなかったかもしれないと今では思っています」
彼が言う事はなんとなく分かった、だがそれは子供のリチャードさんの責任ではなく大人達の問題だろうと感じた。子供が馬鹿な事をしても大人が叱ってやれば学んでいくのだから。
---でもリチャードさんはこの経験を糧にして頑張ってきたんだろうな。
「そして私の記憶にある頑張っている時の母のふとした表情と貴方の表情が同じ様に感じたんです。だから勝手に気になってしまって」
「…そうでしたか。リチャードさんの勘は当たっていますよ、私は今無理しています」
---気づいてくれる人がここにもう一人いた…。義家族なんか全然気にもしないし、サリムも言っても信じてくれなかったのに。
私は吹っ切れたように言うと、まだ会って二回目の人に自分の今置かれている境遇をなぜか話してしまっていた。リチャードさんには不思議と何でも話せる雰囲気があったのだ。
ハッと我に返った時にはすべて気持ちをぶちまけた後だった。
---私…、やってしまったわ。
トムから接待を頼まれていたのに、なんて事を話してしまったのかと落ち込んでいる私を見て、リチャードさんはにっこりと微笑んでいた。
「それでいいんですよ。一人で我慢したらどうにかなるなんて幻想です。無理をしたらどこかで綻びが出て、最後には上手くいかなくなるものです。
一人に我慢させて成り立つ幸せなんて、本当の幸せではないですからね。
私に話した気持ちを義家族に話してみたらいいですよ。それで終わってしまう関係ならカリナさんが頑張るに値しない関係だったという事です。もし義家族が変わってくれるようなら、その時に自分がこれからどうするか考えればいいんです」
「どうするか…、ですか?」
「ええ、婚約を続行するかそれともやめるか。カリナさんが考えていいんですよ」
私は婚約して花嫁修業までしているのだからもう引き返せないとばかり思っていたが、リチャードさんは選択肢がある事を教えてくれた。
なんだか私の前に突然道が現れたような気持ちになった。
「でもね、どれを選択してもメリットとデメリットはあります。婚約破棄は世間体は悪いでしょうし、婚約続行となると義家族との関係は改善されてもその後に何かあるかもしれませんし。
あぁ~、なんか偉そうなことを言いながら、最後は上手く纏められずにカリナさんを混乱させていますね…」
リチャードさんは『なんで最後に困らせて終わるんだー。これだから妹からは未だにお兄様は詰めが甘い!と言われるのか俺は…』と頭を抱えてしまっていた。
その姿は商談でトムに白旗を上げさせた人と同一人物とは思えず、なんとも可愛く見えてしまい私は笑ってしまった。
「ふふふ、大丈夫です。忠告有り難うございます。リチャードさんのお陰で私ちゃんと義家族と向き合う勇気が持てました」
「えっ、そうですか…」
「はい、今日早速幸せのために頑張ってみます!」
「それは良かったです。カリナさん、でも無理はしないでください」
私は食事を終えてリチャードさんと別れると、ロイアン商会に戻ってからすぐに残りの仕事を片付け終業時間と同時に屋敷へと帰っていった。
「いいえ、そんな事はないです。でもなぜそう思ったんですか?私と会うのはまだ二回目ですよね」
確かに私は無理をしている、それは合っている。けれどもそんな事は一言も話していないし、トムが話したとは思えない。
---どうして知っているのかしら。
リチャードさんは私の疑問が分かったようで、『まずは私の話をしていいですか』と訊ねてくる。私が黙ったまま頷くと彼は落ち着いた声で話し始めた。
「私は子供時分、良く言えば無邪気、悪く言えば考えなしの馬鹿な子供でした。ある日私を含めた愚かな家族が実母を酷く傷つけ追い込んだんです。本当に許されない事を私は口にしたんですよ…。
私は年下の妹に怒られ自分のした事に気づいたときは後の祭りで、その後に両親は離縁しました。
それから馬鹿な私なりに考え周りをよく見て行動する事を心掛けるようになりました。そして分かったんです、言葉で母を傷つける前から、母を傷つけていたことに」
「それはどういう事ですか?」
「私や家族は母の頑張りという犠牲によって幸せに暮らしていたんです。それに気づかずに『母なら分かってくれる、大丈夫だ』と周りは甘え続けていました。みんなで傷つけた後もそう思い込んでいたんです。
呆れるくらい愚かでしょう?
ちゃんと現実を見て最初から実母をフォローしていたら、離縁には至らなかったかもしれないと今では思っています」
彼が言う事はなんとなく分かった、だがそれは子供のリチャードさんの責任ではなく大人達の問題だろうと感じた。子供が馬鹿な事をしても大人が叱ってやれば学んでいくのだから。
---でもリチャードさんはこの経験を糧にして頑張ってきたんだろうな。
「そして私の記憶にある頑張っている時の母のふとした表情と貴方の表情が同じ様に感じたんです。だから勝手に気になってしまって」
「…そうでしたか。リチャードさんの勘は当たっていますよ、私は今無理しています」
---気づいてくれる人がここにもう一人いた…。義家族なんか全然気にもしないし、サリムも言っても信じてくれなかったのに。
私は吹っ切れたように言うと、まだ会って二回目の人に自分の今置かれている境遇をなぜか話してしまっていた。リチャードさんには不思議と何でも話せる雰囲気があったのだ。
ハッと我に返った時にはすべて気持ちをぶちまけた後だった。
---私…、やってしまったわ。
トムから接待を頼まれていたのに、なんて事を話してしまったのかと落ち込んでいる私を見て、リチャードさんはにっこりと微笑んでいた。
「それでいいんですよ。一人で我慢したらどうにかなるなんて幻想です。無理をしたらどこかで綻びが出て、最後には上手くいかなくなるものです。
一人に我慢させて成り立つ幸せなんて、本当の幸せではないですからね。
私に話した気持ちを義家族に話してみたらいいですよ。それで終わってしまう関係ならカリナさんが頑張るに値しない関係だったという事です。もし義家族が変わってくれるようなら、その時に自分がこれからどうするか考えればいいんです」
「どうするか…、ですか?」
「ええ、婚約を続行するかそれともやめるか。カリナさんが考えていいんですよ」
私は婚約して花嫁修業までしているのだからもう引き返せないとばかり思っていたが、リチャードさんは選択肢がある事を教えてくれた。
なんだか私の前に突然道が現れたような気持ちになった。
「でもね、どれを選択してもメリットとデメリットはあります。婚約破棄は世間体は悪いでしょうし、婚約続行となると義家族との関係は改善されてもその後に何かあるかもしれませんし。
あぁ~、なんか偉そうなことを言いながら、最後は上手く纏められずにカリナさんを混乱させていますね…」
リチャードさんは『なんで最後に困らせて終わるんだー。これだから妹からは未だにお兄様は詰めが甘い!と言われるのか俺は…』と頭を抱えてしまっていた。
その姿は商談でトムに白旗を上げさせた人と同一人物とは思えず、なんとも可愛く見えてしまい私は笑ってしまった。
「ふふふ、大丈夫です。忠告有り難うございます。リチャードさんのお陰で私ちゃんと義家族と向き合う勇気が持てました」
「えっ、そうですか…」
「はい、今日早速幸せのために頑張ってみます!」
「それは良かったです。カリナさん、でも無理はしないでください」
私は食事を終えてリチャードさんと別れると、ロイアン商会に戻ってからすぐに残りの仕事を片付け終業時間と同時に屋敷へと帰っていった。
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