私は大切にされていますか~花嫁修業で知る理想と現実~

矢野りと

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25.サリムの決意

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ーーーサリム視点ーーー


トムは『立ち話も何ですからどうぞ』と言いながら、俺に椅子を勧めてきた。どうやらトムにはすべてお見通しのようだった。

「で、この花嫁修業がどんなに酷いものか知りたいんでしょう。カリナ様は従業員並みに働いていますよ、弱音を吐かず一生懸命にね。ちなみに坊ちゃん達が子供時分に経験したお遊びとは違いますから。
私はただの従業員ですから口出しは控えていましたけど、奥様や坊ちゃんはカリナ様に何か恨みでもあるんですか?」
「なっ、あるわけないだろう!カリナは俺の大事な婚約者だぞ」
「ええ、分かっています。でもそう言いたくなるくらいの仕打ちを奥様はしていたし、坊ちゃんは黙認していましたよね」

トムの言い方はいつもの気さく感じは微塵も感じられず、辛辣だった。
俺は『違う!』と言いたかったが、母に任せっきりで自分は何も知ろうとしていなかったのは事実だ。それは傍から見たら黙認していたと思われても仕方がないことだった。
暫く沈黙が続いた後、俺は声を絞り出すようにしてトムに聞いてみた。

「トム、カリナは俺の事を許してくれると思うか?」
「それは正直に答えていいんですか、それとも雇われ人として答えを言った方がいいですか」

またしてもトムはチクリと言葉の針を俺に刺してくる。

---ああ、カリナはここでも好かれているんだな。頑張り屋で優しい彼女はまったく変わってなかった。


「うっ…、正直に頼む」
「では遠慮なく。かなり難しいと思います。今回の事は奥様から始まっていますが、それを放置したのは婚約者であるサリム坊ちゃんです。
どんなに酷い姑がいても、旦那が妻の味方をすればなんとか夫婦は上手くいくものです。例え妻に落ち度があっても旦那は一旦は妻側に立ってあげるべきなんです。妻に間違えがあった時は二人だけの時にこっそりと教えてあげればいいんです」
「………」
「心当たりがあるでしょう。坊ちゃんは花嫁修業で苦しんでいるカリナ様を助けなかったうえに、味方にもならずに責めたでしょう?そんな男と結婚したいとは女性は思いませんよ」
「……でも、ちゃんと謝れば許してくれるかもしれない」

俺は少しでも希望を持ちたくて、縋るような目をトムに向けた。

「まぁ頑張ってくださいとしか言えません。ちなみに私は離縁経験者ですから…」

そういうとトムは遠い目をしていた。

---これはまずい。このままでは俺もああなるんだ…。

俺はトムにお礼を言うとカリナが戻ってくるのを待たずに自分の部屋に急いで戻った。そして残業をせずに帰る為に残りの仕事に取り掛かった。
もう遅いかもしれないがカリナにちゃんと謝って、全ての問題を片づけようと決めていた。

---なんとか間に合いますように!カリナ、本当にごめんな。
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