一番になれなかった身代わり王女が見つけた幸せ

矢野りと

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おまけの話

【おまけの話】可愛いかくれんぼ③〜ゾルド視点〜

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まるで大きなタイキとちびタイキが並んでいるみたいだ。

燃えるような赤い髪に、真っ赤な瞳、それに顔つきまですべて似ている。カナニーア様も生まれてきた我が子を初めて目にした時『私、タイキを産んだみたいだわ』と笑っていたというが、その気持ちがよく分かる。

これほど似ている親子もいないだろう。


「どうしてぼくだけ子豚なんですか?ぼくとそっくりな父上はどうして大きな豚じゃないんですか?」
「豚?」

まず先に口を開いたユウサが、子供らしい質問をする。タイキは豚という言葉に首を傾げているから、絵姿の自分を子豚だと思ったのはユウサだけのようだ。


流石に盛るにしても豚はないだろうとは思っていた……。


「もしかして絵姿のことか?ユウサ」
「はい、そうです。父上はすごく格好よくて、母上はすごく可愛いのに、ぼくだけ子ブタみたいに丸々してました。色だって泥みたいだし。すっごく嫌な気持ちになりました……」
「だから、フロルの子になりたいと言ったのか?」
「ぼくだけ仲間はずれなのは嫌です。それなら、飛狼竜の弟達と家族になります。赤い髪だってお揃いだし、フロルは優しいから大丈夫です」

ユウサはしっかりと自分が嫌だったことを父親に伝えていく。
泣かずに言えているのは、父親が自分を突き放すはずはないと信じているから、愛されていると分かっているからだ。

――そう、タイキはカナニーア様との間に生まれたユウサを心から愛している。王族に生まれたから厳しい教育を受けさせているが、それ以上の愛情を注いでいるからこそ、ユウサもここまで真っ直ぐな子に育っているのだ。



「あの絵はわざとユウサだけ違うふうに描かせた。……豚みたいだと思わなかったがな」
「どうしてですか?父上」
「ローゼンという国は大きくて力がある。だがその一方で王族は狙われることも多いから、自分の身を守れない子供の時は容姿を晒さないほうがいいと思っている。だからお前だけはわざと似せなかった。だが安心しろ、ユウサと母上のことは父上がなにがあっても守るからな」

最後の言葉を言いながら、タイキは安心させるためにユウサの髪を大きな手でくしゃと撫でる。

情報操作だとか、身分を偽って見聞を広めるといった後々のことを伝えなかったのは、まだ四歳の子には分かりづらいことだからだろう。
だからタイキは今一番重要なこと――守りたいという気持ち――だけを伝えたのだ。


ユウサの顔がぱぁと笑顔になり、タイキに向かって身を乗り出す。

「じゃあ、子ブタなのは大切だからですか?!」
「くっくく、そうだ。ユウサ」

どうやらユウサの中では子豚は確定事項のようだ。タイキが否定をしないのは、もうその子豚発言に違う意味が出来ていると分かっているからだ。


――『子豚=愛されている証』と。


「それじゃ、今母上のお腹にいる赤ちゃんも将来は子ブタですか?ぼくといっしょで!」
「そうだ。ユウサとお揃いの子豚になるのは確定だ。よろしくな、小さな兄上」
「はい!ぼく、すっごくいい兄上になります」
「そうか、それは頼もしいな。だが、今は立派な兄上ではなく、可愛い一人息子に戻ってくれ。母上が甘いお菓子を用意して待っているからな。これ以上待たせたら、厩舎まで走って来てしまうかもしれないぞ」
「それは大変です、父上。お腹の赤ちゃんがびっくりして泣いちゃいます。早く、母上のところに戻りましょう!」

ユウサはタイキの大きな手を引っ張りながら厩舎から出ていく。
もちろん、俺とフロルと弟達とグレゴールに『おじゃましました』と礼儀正しく挨拶をしてから。


俺は赤い髪の幸せそうな親子の姿を見送ったあと、目の前にいるこれまた幸せそのものの飛狼竜親子の姿を見つめる。



思い浮かんだ言葉はたった一つだけ。


――羨ましい……。



俺だって騎士団長の息子で、王族とも遠縁で、王太子の右腕と呼ばれているから条件はいいはずだ。それなのになぜか未だに独り身である。

「はぁ…、俺も幸せになりたいなー」

一人寂しく愚痴っていると、トコトコと一頭の飛狼竜が近づいてくる。

「グッルルー」
「なんだ、チャーリー。飯はもう食っただろ」

このチャーリーは飛狼竜達の中で最年長だ。今みたいに何度も餌の催促をしてくるので多少ボケているようだが、元気でまだまだ長生きしそうだ。

 ……そう言えば、このチャーリーも番ったことはないはず。

チャーリーは性格も悪くないし見た目もそこそこなのに、なぜか振られてばかりだと聞いている。
まさか俺もこうなってしまうのだろうか。

そう思うとチャーリーに未来の自分の姿が重なって可哀想に思えてくる。

「ほら、チャーリー。おやつだぞ」
「グルル♪」

俺が渡した干し芋をハグハグと美味しそうに食べるチャーリーを見ながら思った。


――こんな人生もそう悪くないかもしれないなと……。






****************
おまけの話まで読んでいただきありがとうございました(≧∇≦)

これにて一旦は完結表示としますが、また【おまけの話】を投稿した時には読んでいただけたら嬉しいです。


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