103 / 204
第101話 2人が帰る場所
しおりを挟む
「さて、それじゃ報告したいことは全て終わったから…離れに戻ろうか?エルザ」
笑みを浮かべて私に声を掛けてきた。
「ええ…」
フィリップは立ち上がると、手を差し出してきた。
「立てるかい?」
「え?ええ…。立てるわ」
彼の手につかまって立ち上がると、お義父様はハッとした表情を浮かべた。
「待てっ!もう戻るつもりなのかっ?!話は終わっていないぞっ?!」
眉間にシワを寄せてお義父様はフィリップを責めてきた。
「ええ、そうよ。いきなり仕事を引退だなんて…もう少しお父様と話し合いをしないと。ね?」
「いいえ…もう話すことは終わりました。僕の命はせいぜいもって後半年。だったら残りの人生は愛する人と過ごしたいんです」
そしてフィリップは私を見つめてきた。
…その瞳はとても優しいものだった。
「待てっ!今のお前の言い方だと…それではまるでお前は我々家族を愛していないということではないのかっ?!」
「そうよっ!私達は…こんなにも貴方を愛しているのよ?!」
お義父様はかなり激怒しているし、お義母様は泣きそうだった。
「いいえ、愛していましたよ。それなりに…。でも、他の男性の元へ行ったローズ の身代わりにエルザに嫌がらせを働こうとしたことは許せません」
「な、何だとっ?!この親不孝者め…今まで育てた恩を忘れおって!」
怒りで真っ赤になるお義父様についにセシルが声を上げた。
「父さん、母さんっ!落ち着いて下さいっ!兄さんは…もう先が長くないんですよ?!少しは気持ちを汲んであげて下さいっ!」
「「!!」」
セシルの言葉に、義父母は言葉を無くしてしまった。
その時…。
「う…」
フィリップが突然苦しみだした。
「フィリップッ?!どうしたの?ひょっとして痛むの?」
「う、うん…痛み止めが切れてしまったみたいで…部屋に戻って休まないと…」
額に脂汗をにじませ、眉をしかめるとフィリップが訴えてきた。
「何だって…?」
「そんな…まさか本当に…?」
苦しそうなフィリップの姿に途端に義父母の顔が青ざめる。
「だったらもう部屋に戻ったほうがいいわ。肩を…」
すると素早くセシルが動いた。
「エルザは身重の身体なんだ。俺が兄さんを離れまで連れて行くよ。俺の肩に捕まるといい」
セシルがフィリップの身体を支えた。
「…ありがとう、セシル…」
苦痛に顔をしかめるフィリップに義父母が声を掛けた。
「待て、フィリップ。具合が悪いなら離れに行く必要はない。ここで休んでいくといい」
「そうよ、途中で倒れたりしたらどうするの?」
その口調は先程とは打って変わって優しげなものだった。
「いいえ…遠慮…しておきます…。僕とエルザの家は…あの離れなのですから…。ここでは…ゆっくり休むことも…出来ません」
「「!!」」
この言葉は…流石にショックだったのか、義父母は黙ってしまった。
「それじゃ行こう、兄さん。エルザも」
フィリップを支えたセシルが声を掛けてきた。
「うん…帰ろう…」
「ええ、帰りましょう?」
そして私達は呆然としている義父母を残し、部屋を後にした。
「…うっ…」
セシルに支えられながら苦しげな様子で歩くフィリップを見て私は思った。
ひょっとしてフィリップはこうなることを想定して…わざと薬を飲まずにいたのだろうか…と―。
笑みを浮かべて私に声を掛けてきた。
「ええ…」
フィリップは立ち上がると、手を差し出してきた。
「立てるかい?」
「え?ええ…。立てるわ」
彼の手につかまって立ち上がると、お義父様はハッとした表情を浮かべた。
「待てっ!もう戻るつもりなのかっ?!話は終わっていないぞっ?!」
眉間にシワを寄せてお義父様はフィリップを責めてきた。
「ええ、そうよ。いきなり仕事を引退だなんて…もう少しお父様と話し合いをしないと。ね?」
「いいえ…もう話すことは終わりました。僕の命はせいぜいもって後半年。だったら残りの人生は愛する人と過ごしたいんです」
そしてフィリップは私を見つめてきた。
…その瞳はとても優しいものだった。
「待てっ!今のお前の言い方だと…それではまるでお前は我々家族を愛していないということではないのかっ?!」
「そうよっ!私達は…こんなにも貴方を愛しているのよ?!」
お義父様はかなり激怒しているし、お義母様は泣きそうだった。
「いいえ、愛していましたよ。それなりに…。でも、他の男性の元へ行ったローズ の身代わりにエルザに嫌がらせを働こうとしたことは許せません」
「な、何だとっ?!この親不孝者め…今まで育てた恩を忘れおって!」
怒りで真っ赤になるお義父様についにセシルが声を上げた。
「父さん、母さんっ!落ち着いて下さいっ!兄さんは…もう先が長くないんですよ?!少しは気持ちを汲んであげて下さいっ!」
「「!!」」
セシルの言葉に、義父母は言葉を無くしてしまった。
その時…。
「う…」
フィリップが突然苦しみだした。
「フィリップッ?!どうしたの?ひょっとして痛むの?」
「う、うん…痛み止めが切れてしまったみたいで…部屋に戻って休まないと…」
額に脂汗をにじませ、眉をしかめるとフィリップが訴えてきた。
「何だって…?」
「そんな…まさか本当に…?」
苦しそうなフィリップの姿に途端に義父母の顔が青ざめる。
「だったらもう部屋に戻ったほうがいいわ。肩を…」
すると素早くセシルが動いた。
「エルザは身重の身体なんだ。俺が兄さんを離れまで連れて行くよ。俺の肩に捕まるといい」
セシルがフィリップの身体を支えた。
「…ありがとう、セシル…」
苦痛に顔をしかめるフィリップに義父母が声を掛けた。
「待て、フィリップ。具合が悪いなら離れに行く必要はない。ここで休んでいくといい」
「そうよ、途中で倒れたりしたらどうするの?」
その口調は先程とは打って変わって優しげなものだった。
「いいえ…遠慮…しておきます…。僕とエルザの家は…あの離れなのですから…。ここでは…ゆっくり休むことも…出来ません」
「「!!」」
この言葉は…流石にショックだったのか、義父母は黙ってしまった。
「それじゃ行こう、兄さん。エルザも」
フィリップを支えたセシルが声を掛けてきた。
「うん…帰ろう…」
「ええ、帰りましょう?」
そして私達は呆然としている義父母を残し、部屋を後にした。
「…うっ…」
セシルに支えられながら苦しげな様子で歩くフィリップを見て私は思った。
ひょっとしてフィリップはこうなることを想定して…わざと薬を飲まずにいたのだろうか…と―。
221
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる