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第188話 暖炉の前で
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「神父様。毛布はありませんか?」
暖炉に火をくべている神父様に声を掛けた。
「ええ、勿論それ位ならございますよ」
「すみません、それでは毛布をお借り出来ないでしょうか?出来れば2枚」
「はい、大丈夫です。今、お持ち致しますね」
暖炉に火を起こすと神父様は立ち上がり、部屋を出て行った。
「セシル、大丈夫?」
車椅子の上でぐったり意識を無くしているセシルに声を掛けるものの、やはり無反応だった。
それに身体はまるで氷のように冷え切っている。
「セシル……」
このままでは風邪どころか肺炎を起こしてしまうかもしれない。
そこで車椅子を押すと、暖炉のすぐ傍まで連れて行った。
「ここなら少しは温かいかもしれないわ……」
丁度そこへ神父様が毛布を持って部屋に現れた。
「どうぞ、毛布をお使いください」
「はい、ありがとうございます。それで、もう一つお願いがあるのですが……」
「お願いですか?何でしょうか?」
「実は……」
私は顔を赤らめながら神父様にお願いをした――。
****
寒さに震えながら部屋の外で待っていると、扉が開かれ神父様が姿を見せた。
「どうもお待たせ致しました。お願いされた通りに致しましたよ」
「ありがとうございます」
部屋の中を覗いてみると、暖炉の前にベッドのマットレスが置かれていた。そしてそこには濡れた服を脱がされ、毛布にくるまれているセシルの姿があった。
濡れた服は暖炉近くに置かれた椅子の上に掛けてある。
私は神父様にお願いしたのだ。
セシルの濡れた服を脱がせて毛布でくるんでもらいたいと。
そうしなければいつまでもセシルは凍えた状態になるかもしれないと思ったからだ。
「いかがでしょうか?」
神父様が声を掛けて来た。
「はい、これなら彼が寒さで凍えることは無いと思います。ありがとうございます」
「いえ、これくらい大丈夫です。それより貴女の方が今は寒そうですよ。唇が真っ青です。すぐに身体を温めた方が良いでしょう。私は部屋を出ておりますので」
神父様の言う通り、先程から身体が寒くて寒くてたまらなかった。私も一刻も早くこの濡れた衣服を脱いで乾かしたかった。
「はい、お気遣いありがとうございます」
「いえ、では失礼致します」
神父様は頭を下げると部屋を出て行った。
パタン……
扉が閉ざされると、私はセシルの様子を伺った。
セシルは私に背を向けるような姿で完全に意識を無くしていた。
今なら……大丈夫かもしれない。
「……」
私は意を決すると、濡れた衣服を脱ぎ始めた――。
****
パチパチと暖炉の火が爆ぜる音を聞きながら毛布を体に巻き付け、暖炉の前に座っていた。
「暖かいわ……」
私は濡れた服を全て脱いで、暖炉の傍に置いた椅子の上に濡れた衣服を掛けて乾かしていた。
近くではセシルの寝息が規則的に聞こえている。
「それにしても……まだアンバー家の馬車は到着しないのかしら…‥?」
あれから2時間近く経過している。そろそろ到着しても良い頃なのに。そうしないといつまでたっても着替えることが出来ない。
その時……。
「エルザ……?」
セシルが私を呼ぶ声が聞こえた――。
暖炉に火をくべている神父様に声を掛けた。
「ええ、勿論それ位ならございますよ」
「すみません、それでは毛布をお借り出来ないでしょうか?出来れば2枚」
「はい、大丈夫です。今、お持ち致しますね」
暖炉に火を起こすと神父様は立ち上がり、部屋を出て行った。
「セシル、大丈夫?」
車椅子の上でぐったり意識を無くしているセシルに声を掛けるものの、やはり無反応だった。
それに身体はまるで氷のように冷え切っている。
「セシル……」
このままでは風邪どころか肺炎を起こしてしまうかもしれない。
そこで車椅子を押すと、暖炉のすぐ傍まで連れて行った。
「ここなら少しは温かいかもしれないわ……」
丁度そこへ神父様が毛布を持って部屋に現れた。
「どうぞ、毛布をお使いください」
「はい、ありがとうございます。それで、もう一つお願いがあるのですが……」
「お願いですか?何でしょうか?」
「実は……」
私は顔を赤らめながら神父様にお願いをした――。
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寒さに震えながら部屋の外で待っていると、扉が開かれ神父様が姿を見せた。
「どうもお待たせ致しました。お願いされた通りに致しましたよ」
「ありがとうございます」
部屋の中を覗いてみると、暖炉の前にベッドのマットレスが置かれていた。そしてそこには濡れた服を脱がされ、毛布にくるまれているセシルの姿があった。
濡れた服は暖炉近くに置かれた椅子の上に掛けてある。
私は神父様にお願いしたのだ。
セシルの濡れた服を脱がせて毛布でくるんでもらいたいと。
そうしなければいつまでもセシルは凍えた状態になるかもしれないと思ったからだ。
「いかがでしょうか?」
神父様が声を掛けて来た。
「はい、これなら彼が寒さで凍えることは無いと思います。ありがとうございます」
「いえ、これくらい大丈夫です。それより貴女の方が今は寒そうですよ。唇が真っ青です。すぐに身体を温めた方が良いでしょう。私は部屋を出ておりますので」
神父様の言う通り、先程から身体が寒くて寒くてたまらなかった。私も一刻も早くこの濡れた衣服を脱いで乾かしたかった。
「はい、お気遣いありがとうございます」
「いえ、では失礼致します」
神父様は頭を下げると部屋を出て行った。
パタン……
扉が閉ざされると、私はセシルの様子を伺った。
セシルは私に背を向けるような姿で完全に意識を無くしていた。
今なら……大丈夫かもしれない。
「……」
私は意を決すると、濡れた衣服を脱ぎ始めた――。
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パチパチと暖炉の火が爆ぜる音を聞きながら毛布を体に巻き付け、暖炉の前に座っていた。
「暖かいわ……」
私は濡れた服を全て脱いで、暖炉の傍に置いた椅子の上に濡れた衣服を掛けて乾かしていた。
近くではセシルの寝息が規則的に聞こえている。
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セシルが私を呼ぶ声が聞こえた――。
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