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第189話 告白
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振り返ると、横になったままこちらを見つめているセシルと目があった。
セシルは暖炉のオレンジ色の灯りに照らされている。
「セシル?目が覚めたのね?」
「あ、ああ。ついさっき……。ところで、エルザ、その格好は?」
「え?あ!」
その時になって自分が裸で毛布に身体を包んでいたことを思い出した。
そこで慌てて背中を向けると、セシルに事情を説明した。
「こ、これはその…あ、雨で服が濡れてしまったから…それで…」
「そうか…そう言えばそうだったな……」
背後でセシルが身体を起こす気配を感じる。
「セシル、具合は…その、大丈夫なの?」
背中を向けたままセシルに声を掛けた。
「ああ、もう大丈夫だ」
「そう。なら……良かったわ」
すると――。
「ごめん」
セシルが静かな声で謝ってきた。
「セシル?」
その言葉にふりむくと、身体を起こしセシルが私をじっと見つめていた。
毛布がはだけて上半身裸のセシルの身体が目に入り、慌てて後ろを向いた。
「セ、セシル。風邪を引くといけないわ。ちゃんと毛布を掛けておいてくれる?」
動揺を押さえながらセシルに声を掛けた。
「あ…そうだったな。悪かった」
「別に謝らなくてもいいわ」
「いや、でも謝らせてくれ。俺はエルザに迷惑ばかり掛けてしまっていたからな……今迄本当にすまなかった」
「え……?」
セシル、まさか記憶が……?
振り向くとそこには毛布を頭から被り、項垂れているセシルの姿があった。
「セシル……ひょっとして……記憶が……?」
「ああ、全て思い出した。自分が記憶を失ったことも。そして、その間エルザに何をしていたかも……」
「あ……」
その言葉に赤面しそうになってしまった。
「墓場で倒れていた俺を助けてくれただけじゃなく、エルザを自分の妻だと思い込んでいたんだよな?それだけじゃない、キスまで……強引に……」
セシルは申し訳無さげに頭を下げてきた。
「い、いいのよ。仕方ないわ…。だって貴方は記憶を失っていたのだから」
「いいや、ちっとも良くない。本当に…悪かった。エルザ。俺は自分の記憶を都合のいいように作り変えていたんだ。最低な男だ。自分で自分のことがイヤになってくる」
「セシル……」
「今迄黙っていたけど………子供の頃からずっと俺はエルザのことが好きだったんだ…」
俯いたセシルがポツリと呟く。
「!」
セシルがこの日、初めて私に告白してきた――。
セシルは暖炉のオレンジ色の灯りに照らされている。
「セシル?目が覚めたのね?」
「あ、ああ。ついさっき……。ところで、エルザ、その格好は?」
「え?あ!」
その時になって自分が裸で毛布に身体を包んでいたことを思い出した。
そこで慌てて背中を向けると、セシルに事情を説明した。
「こ、これはその…あ、雨で服が濡れてしまったから…それで…」
「そうか…そう言えばそうだったな……」
背後でセシルが身体を起こす気配を感じる。
「セシル、具合は…その、大丈夫なの?」
背中を向けたままセシルに声を掛けた。
「ああ、もう大丈夫だ」
「そう。なら……良かったわ」
すると――。
「ごめん」
セシルが静かな声で謝ってきた。
「セシル?」
その言葉にふりむくと、身体を起こしセシルが私をじっと見つめていた。
毛布がはだけて上半身裸のセシルの身体が目に入り、慌てて後ろを向いた。
「セ、セシル。風邪を引くといけないわ。ちゃんと毛布を掛けておいてくれる?」
動揺を押さえながらセシルに声を掛けた。
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「別に謝らなくてもいいわ」
「いや、でも謝らせてくれ。俺はエルザに迷惑ばかり掛けてしまっていたからな……今迄本当にすまなかった」
「え……?」
セシル、まさか記憶が……?
振り向くとそこには毛布を頭から被り、項垂れているセシルの姿があった。
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「あ……」
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「墓場で倒れていた俺を助けてくれただけじゃなく、エルザを自分の妻だと思い込んでいたんだよな?それだけじゃない、キスまで……強引に……」
セシルは申し訳無さげに頭を下げてきた。
「い、いいのよ。仕方ないわ…。だって貴方は記憶を失っていたのだから」
「いいや、ちっとも良くない。本当に…悪かった。エルザ。俺は自分の記憶を都合のいいように作り変えていたんだ。最低な男だ。自分で自分のことがイヤになってくる」
「セシル……」
「今迄黙っていたけど………子供の頃からずっと俺はエルザのことが好きだったんだ…」
俯いたセシルがポツリと呟く。
「!」
セシルがこの日、初めて私に告白してきた――。
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