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第6話 先に帰らせて下さい
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「それでは、私…先に馬車に乗って自宅へ帰っています…」
お腹を押さえながら父と母に声を掛けた。早くこの場から退散しなければアルトが戻って来てしまうかもしれない。
「ねぇ、クライス家の別荘で休ませてもらったら?」
「ああ、それがいいだろう。そうしてもらいなさい」
「えっ?!」
じょ、冗談じゃない。クライス家の別荘で休ませてもらっているなんてことがアルトに知られてはきっと、私の所へやってきて問答無用で婚約破棄を告げてくるだろう。大体私はアルトと会いたく無い為に仮病を使っているのだから、ここから逃げなければ意味が無い。
「いえ。私が腹痛を起こしているのは…きょ、極度の緊張状態にあるからだと思うんです。だ、だから…自宅に先に帰らせて下さい」
本当に、ここにいたらまずいんだってばっ!お願いっ!帰らせて下さいっ!もしここでアルトと鉢合わせしてしまえば、間違いなく婚約式の場が、婚約破棄宣言発表式になってしまうし、第一あのおっかないトビーに一生恨まれてしまいそうだ。それだけは絶対に避けなければならない。何故なら彼はヤバイ人だと私の本能が告げているのだから。
「分った。そこまで自宅に帰ることを願うなら…そうした方がいいだろう」
「そうね。確かに我が家で休んだ方がゆっくりやすめるかもしれないわね」
「あ、ありがとうございますっ!」
青ざめた顔でガタガタ震えている私を見て、父も母もこれはただ事では無いと感じ取ってくれたようだ。
「そ、それでは私…馬車乗り場に行って先に帰らせて頂きますね…」
こうして私は何とかパーティー会場を抜け出す事に成功した―。
****
「どうもありがとうございました」
乗せて貰った辻馬車にお金を支払い、馬車から降りると屋敷の扉が突然開いた。
「エイミー様ではありませんかっ!」
姿を現したのは黒いお仕着せに真っ白なエプロンドレス姿のメイドのアネッサだった。
「た、ただいま…」
「まぁっ!エイミー様、どうされたのですか?!今日はアルト様との婚約式がクライス家の別宅で行われるはずだったではありませんか?」
「え、ええ。まぁ…ちょっと、色々あって…それで1人で先に帰ってきてしまったのよ」
アネッサは辻馬車が走り去って行く様子を見ると言った。
「驚きましたよ。丁度屋敷の窓掃除をしていたところ、見慣れない辻馬車がこちらへ向かってやってきたので何事かと思って見ていれば、降りてきた方がエイミー様だったのですから」
「あ、見ていたのね?だからこんなに早く迎えに出て来れたのね?」
「ええ、そうですが…とりあえずはまず中へお入り下さい」
屋敷の扉を開けながらアネッサは返事をした―。
お腹を押さえながら父と母に声を掛けた。早くこの場から退散しなければアルトが戻って来てしまうかもしれない。
「ねぇ、クライス家の別荘で休ませてもらったら?」
「ああ、それがいいだろう。そうしてもらいなさい」
「えっ?!」
じょ、冗談じゃない。クライス家の別荘で休ませてもらっているなんてことがアルトに知られてはきっと、私の所へやってきて問答無用で婚約破棄を告げてくるだろう。大体私はアルトと会いたく無い為に仮病を使っているのだから、ここから逃げなければ意味が無い。
「いえ。私が腹痛を起こしているのは…きょ、極度の緊張状態にあるからだと思うんです。だ、だから…自宅に先に帰らせて下さい」
本当に、ここにいたらまずいんだってばっ!お願いっ!帰らせて下さいっ!もしここでアルトと鉢合わせしてしまえば、間違いなく婚約式の場が、婚約破棄宣言発表式になってしまうし、第一あのおっかないトビーに一生恨まれてしまいそうだ。それだけは絶対に避けなければならない。何故なら彼はヤバイ人だと私の本能が告げているのだから。
「分った。そこまで自宅に帰ることを願うなら…そうした方がいいだろう」
「そうね。確かに我が家で休んだ方がゆっくりやすめるかもしれないわね」
「あ、ありがとうございますっ!」
青ざめた顔でガタガタ震えている私を見て、父も母もこれはただ事では無いと感じ取ってくれたようだ。
「そ、それでは私…馬車乗り場に行って先に帰らせて頂きますね…」
こうして私は何とかパーティー会場を抜け出す事に成功した―。
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「どうもありがとうございました」
乗せて貰った辻馬車にお金を支払い、馬車から降りると屋敷の扉が突然開いた。
「エイミー様ではありませんかっ!」
姿を現したのは黒いお仕着せに真っ白なエプロンドレス姿のメイドのアネッサだった。
「た、ただいま…」
「まぁっ!エイミー様、どうされたのですか?!今日はアルト様との婚約式がクライス家の別宅で行われるはずだったではありませんか?」
「え、ええ。まぁ…ちょっと、色々あって…それで1人で先に帰ってきてしまったのよ」
アネッサは辻馬車が走り去って行く様子を見ると言った。
「驚きましたよ。丁度屋敷の窓掃除をしていたところ、見慣れない辻馬車がこちらへ向かってやってきたので何事かと思って見ていれば、降りてきた方がエイミー様だったのですから」
「あ、見ていたのね?だからこんなに早く迎えに出て来れたのね?」
「ええ、そうですが…とりあえずはまず中へお入り下さい」
屋敷の扉を開けながらアネッサは返事をした―。
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