19 / 66
第1章 安西航 19
しおりを挟む
「ここに茜と『南大輔』って男がいるのか・・・。」
航はファミレスの看板を見上げると呟いた。先ほど茜からかかってきた電話で、自分の住むマンションからほど近いファミレスにいるから来て欲しいと言われたのだ。
「さて、行くか。」
航はファミレスの入り口をくぐった。
「茜の奴・・一体どこにいるんだ・・?」
店内は広々としており、なかなかの盛況ぶりであった。その為、航は茜の姿を見つける事がなかなか出来ずにいた。するとその時・・・。
「航君!こっち、こっち!」
航の背後で茜の声が聞こえてきた。振り向くと茜は座席から立ち上り、少し恥ずかしそうに手招きしている。背広を着た相手の男性は航に背を向ける形で座っている為にここからではその表情をうかがい知ることが出来なかった。
「ああ!今行くっ!」
航は返事をすると、茜のいる席へ向かい・・・当然の如く隣の席に座り・・向かい側の席に座る男性を見た。
(へえ~・・・この男が茜の彼氏か・・何だか俺の想像よりも斜め上をいっているタイプだな・・・。)
航の想像していた『南大輔』という男は、サラリーマンで年上と聞いていたので、琢磨や修也のようなタイプの男かと思っていたのだが・・目の前に座る『南大輔』はそのどちらにも当てはまらなかった。ヘアスタイルは後ろを短く借り上げており、額を見せたワイルド・ツーブロックに眼鏡をかけた人物だった。
(随分生真面目そうな男だな・・・社長令嬢に惚れられたって聞いていたから琢磨のようにチャラチャラしたタイプの男だと思っていた・・)
航は自分の事を差し置いて、勝手に琢磨の事を持ち出して目の前の南大輔と比較していた。けれど別に琢磨はチャラチャラしたタイプの男では無かった。ただ、人目を惹く外見で妙に女性たちから一方的に行為を寄せられていた人物だった為に航が勝手にイメージしていただけなのである。
一方の南は航があまりにもぶしつけにジロジロと自分の事を見るので、正直気分は良くなかった。その為、つい険しい目で航を見ている。
「あ、あの・・・航君。この人が・・・その・・。」
茜はそんな雰囲気の悪い2人の空気を察し、紹介しようとしたところ、南が口を挟んだ。
「よろしく、俺は『南大輔』だ。」
そして腕組みをすると、航を値踏みするようにじろりと見た。
「俺は安西航だ。よろしく。」
何をどうよろしくするのかは分からないが、2人の男は視線を交わした。
南は航を一瞥すると言った。
「ひょっとして・・・君はフリーターか?」
「え?俺が?」
「ああ、そうだ。今日は平日だと言うに君は背広を着ていない。Tシャツにジーンズ姿って言う事は・・フリーターだろう?身体もとても日焼けしているし、髪も茶髪だ。金もなさそうだし・・・年上の茜に付きまとって金を無心するのが本当の目的なんじゃないのか?」
「ちょ、ちょっと・・・南くん・・。」
茜は困ったように南を見た。
「は・・・?」
一方の航は南のあまりの身勝手な言い分に呆れてしまった。今までいろんなタイプの男と渡り合ってきたが、ここまで面と向かって失礼な事を言ってくる男は仕事を除き、初めてだった。
「おい・・・俺のどこがフリーターなんだ?それ以前に俺が自営業だとか言う発想はないのかよ?それになぁ・・・誰が茜より年上だって?おれは27歳だ。お前と同じ年だよ。」
航はぞんざいな口の聞き方をした。
「な・・・何だって・・?お前が俺と同じ・・27歳だって・・?」
南は驚いた表情で航を見た。
「そういうお前こそ・・・本当に27歳なのか?随分老け込んで見えるな?30過ぎだと思ったぞ?働き過ぎて老け込んだのか?何せ社長令嬢に見初められるくらいだからなぁ?」
航は目の前の南という男がどうしても気に入らず、ぞんざいな口を聞いた―。
航はファミレスの看板を見上げると呟いた。先ほど茜からかかってきた電話で、自分の住むマンションからほど近いファミレスにいるから来て欲しいと言われたのだ。
「さて、行くか。」
航はファミレスの入り口をくぐった。
「茜の奴・・一体どこにいるんだ・・?」
店内は広々としており、なかなかの盛況ぶりであった。その為、航は茜の姿を見つける事がなかなか出来ずにいた。するとその時・・・。
「航君!こっち、こっち!」
航の背後で茜の声が聞こえてきた。振り向くと茜は座席から立ち上り、少し恥ずかしそうに手招きしている。背広を着た相手の男性は航に背を向ける形で座っている為にここからではその表情をうかがい知ることが出来なかった。
「ああ!今行くっ!」
航は返事をすると、茜のいる席へ向かい・・・当然の如く隣の席に座り・・向かい側の席に座る男性を見た。
(へえ~・・・この男が茜の彼氏か・・何だか俺の想像よりも斜め上をいっているタイプだな・・・。)
航の想像していた『南大輔』という男は、サラリーマンで年上と聞いていたので、琢磨や修也のようなタイプの男かと思っていたのだが・・目の前に座る『南大輔』はそのどちらにも当てはまらなかった。ヘアスタイルは後ろを短く借り上げており、額を見せたワイルド・ツーブロックに眼鏡をかけた人物だった。
(随分生真面目そうな男だな・・・社長令嬢に惚れられたって聞いていたから琢磨のようにチャラチャラしたタイプの男だと思っていた・・)
航は自分の事を差し置いて、勝手に琢磨の事を持ち出して目の前の南大輔と比較していた。けれど別に琢磨はチャラチャラしたタイプの男では無かった。ただ、人目を惹く外見で妙に女性たちから一方的に行為を寄せられていた人物だった為に航が勝手にイメージしていただけなのである。
一方の南は航があまりにもぶしつけにジロジロと自分の事を見るので、正直気分は良くなかった。その為、つい険しい目で航を見ている。
「あ、あの・・・航君。この人が・・・その・・。」
茜はそんな雰囲気の悪い2人の空気を察し、紹介しようとしたところ、南が口を挟んだ。
「よろしく、俺は『南大輔』だ。」
そして腕組みをすると、航を値踏みするようにじろりと見た。
「俺は安西航だ。よろしく。」
何をどうよろしくするのかは分からないが、2人の男は視線を交わした。
南は航を一瞥すると言った。
「ひょっとして・・・君はフリーターか?」
「え?俺が?」
「ああ、そうだ。今日は平日だと言うに君は背広を着ていない。Tシャツにジーンズ姿って言う事は・・フリーターだろう?身体もとても日焼けしているし、髪も茶髪だ。金もなさそうだし・・・年上の茜に付きまとって金を無心するのが本当の目的なんじゃないのか?」
「ちょ、ちょっと・・・南くん・・。」
茜は困ったように南を見た。
「は・・・?」
一方の航は南のあまりの身勝手な言い分に呆れてしまった。今までいろんなタイプの男と渡り合ってきたが、ここまで面と向かって失礼な事を言ってくる男は仕事を除き、初めてだった。
「おい・・・俺のどこがフリーターなんだ?それ以前に俺が自営業だとか言う発想はないのかよ?それになぁ・・・誰が茜より年上だって?おれは27歳だ。お前と同じ年だよ。」
航はぞんざいな口の聞き方をした。
「な・・・何だって・・?お前が俺と同じ・・27歳だって・・?」
南は驚いた表情で航を見た。
「そういうお前こそ・・・本当に27歳なのか?随分老け込んで見えるな?30過ぎだと思ったぞ?働き過ぎて老け込んだのか?何せ社長令嬢に見初められるくらいだからなぁ?」
航は目の前の南という男がどうしても気に入らず、ぞんざいな口を聞いた―。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
107
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる