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第2章 京極正人 8

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 食事を終えた京極はリビングで仕事を、そして飯塚はキッチンで後片付けをしていた。そして飯塚が後片付けをを終えた時に京極が声を掛けてきた。

「飯塚さん、今・・ちょっとよろしいですか?」

「ええ・・私は大丈夫ですけど・・・京極さんの方こそお仕事中ですよね?いいんですか?私なんかと話をしている余裕あるんですか?」

現在無職で貯金も心もとない飯塚は、つい在宅で黙々と仕事をこなしている京極が羨ましくて棘のある言い方をしてしまう。

「ええ。僕の方はいいんですよ。それで・・届けられたミールキットサービスを見て気付かれたと思いますが・・食材は2人分あります。」

「ええ。その様ですね。」

「それはつまり・・僕と飯塚さんの分と言う事でして・・・。」

京極は何故か歯に物が挟まったような物言いをする。そこで飯塚は溜息をつくと言った。

「京極さん。」

「は、はい。」

「はっきり言って下さい。つまり・・・あのミールキットで今後、食事を作って欲しいって事ですよね?」

「は、ハイ・・そう言う事なんです。」

京極は照れ臭そうに言う。

「いいですよ・・別にそれ位。それで?食事時間は決めたほうが良いですよね?何時がご希望ですか?」

「えっと・・・それじゃ19時でいいですか?」

「ええ、分りました。19時ですね。それでは少し出かけてきます。」

飯塚の言葉に京極は首を傾げた。

「え・・出掛ける・・やはり買い物・・ですか?」

「ええ、そうですね。色々・・買い物をしたいので・・。」

すると京極が言った。

「あの・・飯塚さん。これで買い物してきてもらえますか?」

京極が黒い革の財布を手渡して来た。

「え・・?何言ってるんですかっ?!買い物位自分のお金で出来ますっ!」

「ええ・・・そうかもしれませんが・・食費位は出させて下さい。」

「食費・・ですか?」

「はい、そうですけど・・?こちらのライトミールセットは昼食と夕食のセットのみなので朝食分は買わないとならないので・・。あ、でもお米とか重い買い物をする時は僕に言って下さい。」

飯塚は自分が勘違いしていたことに気付き、思わず頬が赤くなってしまった。

(な・・何よ・・紛らわしい言い方をして・・。てっきりこのお金で何でも好きな買い物をしていいと言ったのか思ったじゃないの・・!)

「で・・では買い物に行ってきますっ!」

飯塚は自分の勘違いを京極に悟られないように強気な態度でマンションを出た。



****

 ほぼ3年ぶりの外の世界・・・。飯塚は新鮮な気持ちで町を歩いていた。ただ・・1点気に入らない点がある。それは今自分がいる場所に東京拘置所があると言う事だ。

(全く・・・京極さんはどうしてよりにもよってこんな拘置所の近くに住んでいるのかしら・・・!)

そう思うと、無性に飯塚はイライラしてしまった。

「とにかく・・・食費にならお金を使ってもいいって言ってたわよね・・。よし、それじゃスーパーへ行って・・ちょっと高級食材でも買って来よう。」

独り言のように呟くと、飯塚はスーパーへ向かい、牛乳やチーズ、ハム、ベーコン、ヨーグルト、パン等々・・朝食用の食材のついでに履歴書を購入するとマンションへと帰って行った。


 そしてその後・・・飯塚は絶望する事になる―。


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