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第2章 京極正人 10
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京極から借りたパソコンは3年間刑務所に入っていた飯塚にとっては最新モデルに感じた。勿論パソコンはウィンドウズ10であり、パスワードは顔認証システムになっている。セキュリティもしっかりしており、ネットの速度も速い。
飯塚はパソコンでインターネット求人サイトで検索をしながら呟いた。
「何が少し型落ちはしますが・・よ。これって最新モデルなんじゃないの?私が3年間アナログ生活を送っていたから・・・ひょっとして馬鹿にしてるのかしら?」
京極から性能の良いパソコンを借りておいて、飯塚は京極に対して文句を呟いていた。本当に自分でもどうかしていると思う。これほど良くして貰っているのに、感謝の言葉こそ言うべきなのに、素直になれない。それどころか、飯塚の失礼な態度や言葉遣いにも一切、言い返すことも無く、ニコニコと言う事を聞いてくれる京極。だからこそ余計京極には自分の訳の分からない苛立ちやうっぷんをぶつけてしまいたくなるのかもしれない。
「本当に・・私って何やってるんだろう・・。こんな性格だから・・家族にも友達にも・・見捨てられてしまったのかも・・。」
飯塚はポツリと呟きながら、ネットで仕事の検索を続け・・いくつか希望の職種を見つけたので、早速自分のプロフィールを入力し始め・・手を止めた。
「・・刑務所に入っている間の3年間・・・空白になってしまうけど・・どうしたらいいんだろう・・・それに賞罰はどうするのかしら・・?」
飯塚は自分が買ってきた履歴書を見た。そこには賞罰を記載する欄は無い。しかし・・履歴書の書き方のサイトを見る限り・・飯塚は賞罰を記載する必要がありそうだ。
(でも・・・そんな事、書けるはずないじゃない・・。3年間の空白期間、私は傷害事件を起こし、刑に服していました・・・なんて書けるはずないじゃないっ!)
いっそ、服役した事なんか書かなければ・・ばれる事はないのでは・・?そこまで思い、飯塚は念のために自分の名前を検索に掛けてみた。
「・・・!」
そして、次の瞬間飯塚は凍り付いた。そこには自分の名前と共に3年前の傷害事件が詳細に記されていたからである。
「そ、そんな・・・。」
飯塚の身体は震えた。まさかと思い、試しに別の方法で検索を掛けてみるとまたもや自分の名前がヒットし、事件の内容が記されていたのである。
「嘘・・・でしょう・・・。」
しかし・・そこに表示されている内容は紛れもない事実。さらに掲示板を見ると、そこには飯塚の起こした傷害事件について、面白おかしく書かれていた。そのどれもが誹謗中傷が多く目立つ内容ばかりであった。
「フ・・・アハハハ・・・。」
飯塚は乾いた笑いをして頭を押さえた。
「ばかよね・・・私・・外の世界はこんなにも平和で・・誰もこんなちっぽけな私を気に留める人なんかいないだろうって思っていたのに・・なのに・・・ネットの世界じゃ・・・こんなにも私の事を知る人間がいたなんて・・・。」
いつしか飯塚の目には涙が浮かんでいた。
「何よ・・・折角・・生まれ変わった気持ちで・・やり直そうかと思っていたのに・・こんな・・!ひとのやる気をそぐような・・・!」
飯塚は悔し気にテーブルをバンッと叩いた。
刑務所にいた頃、よく話を聞かされていた。一度刑務所に入った人間は・・再犯して
戻ってくる場合が多いと・・その理由は外の世界は生き難い場所だからと教えてくれた人は言った。その話を聞いた時に飯塚は思った。こんな不便で自由も無い生活なのに、何故戻てくるのだろう。自分だったら絶対にそんな事は考えないのに・・と思っていたのだが・・。
「ふふ・・こういう事だったのね・・皆が刑務所に戻ってくる理由は・・・。」
そして飯塚はとうとう我慢できず・・激しく嗚咽しだした。
「ウウ・・・ウッウッウ・・。」
「・・・。」
そしてそんな様子の飯塚を、京極はドアの前で心配そうに見つめているのだった―。
飯塚はパソコンでインターネット求人サイトで検索をしながら呟いた。
「何が少し型落ちはしますが・・よ。これって最新モデルなんじゃないの?私が3年間アナログ生活を送っていたから・・・ひょっとして馬鹿にしてるのかしら?」
京極から性能の良いパソコンを借りておいて、飯塚は京極に対して文句を呟いていた。本当に自分でもどうかしていると思う。これほど良くして貰っているのに、感謝の言葉こそ言うべきなのに、素直になれない。それどころか、飯塚の失礼な態度や言葉遣いにも一切、言い返すことも無く、ニコニコと言う事を聞いてくれる京極。だからこそ余計京極には自分の訳の分からない苛立ちやうっぷんをぶつけてしまいたくなるのかもしれない。
「本当に・・私って何やってるんだろう・・。こんな性格だから・・家族にも友達にも・・見捨てられてしまったのかも・・。」
飯塚はポツリと呟きながら、ネットで仕事の検索を続け・・いくつか希望の職種を見つけたので、早速自分のプロフィールを入力し始め・・手を止めた。
「・・刑務所に入っている間の3年間・・・空白になってしまうけど・・どうしたらいいんだろう・・・それに賞罰はどうするのかしら・・?」
飯塚は自分が買ってきた履歴書を見た。そこには賞罰を記載する欄は無い。しかし・・履歴書の書き方のサイトを見る限り・・飯塚は賞罰を記載する必要がありそうだ。
(でも・・・そんな事、書けるはずないじゃない・・。3年間の空白期間、私は傷害事件を起こし、刑に服していました・・・なんて書けるはずないじゃないっ!)
いっそ、服役した事なんか書かなければ・・ばれる事はないのでは・・?そこまで思い、飯塚は念のために自分の名前を検索に掛けてみた。
「・・・!」
そして、次の瞬間飯塚は凍り付いた。そこには自分の名前と共に3年前の傷害事件が詳細に記されていたからである。
「そ、そんな・・・。」
飯塚の身体は震えた。まさかと思い、試しに別の方法で検索を掛けてみるとまたもや自分の名前がヒットし、事件の内容が記されていたのである。
「嘘・・・でしょう・・・。」
しかし・・そこに表示されている内容は紛れもない事実。さらに掲示板を見ると、そこには飯塚の起こした傷害事件について、面白おかしく書かれていた。そのどれもが誹謗中傷が多く目立つ内容ばかりであった。
「フ・・・アハハハ・・・。」
飯塚は乾いた笑いをして頭を押さえた。
「ばかよね・・・私・・外の世界はこんなにも平和で・・誰もこんなちっぽけな私を気に留める人なんかいないだろうって思っていたのに・・なのに・・・ネットの世界じゃ・・・こんなにも私の事を知る人間がいたなんて・・・。」
いつしか飯塚の目には涙が浮かんでいた。
「何よ・・・折角・・生まれ変わった気持ちで・・やり直そうかと思っていたのに・・こんな・・!ひとのやる気をそぐような・・・!」
飯塚は悔し気にテーブルをバンッと叩いた。
刑務所にいた頃、よく話を聞かされていた。一度刑務所に入った人間は・・再犯して
戻ってくる場合が多いと・・その理由は外の世界は生き難い場所だからと教えてくれた人は言った。その話を聞いた時に飯塚は思った。こんな不便で自由も無い生活なのに、何故戻てくるのだろう。自分だったら絶対にそんな事は考えないのに・・と思っていたのだが・・。
「ふふ・・こういう事だったのね・・皆が刑務所に戻ってくる理由は・・・。」
そして飯塚はとうとう我慢できず・・激しく嗚咽しだした。
「ウウ・・・ウッウッウ・・。」
「・・・。」
そしてそんな様子の飯塚を、京極はドアの前で心配そうに見つめているのだった―。
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