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第3章 九条琢磨 19 <終>
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「九条・・・お前・・・。」
二階堂は深い溜息をついた。
「わ、分かってますよ!社長の言いたいことくらいっ!」
「重症だな・・・お前、そこまで恋の病に憑りつかれていたのか?30過ぎて・・・そんなにピュアだったのか?」
「ピュ、ピュアって・・・何恥ずかしい事言ってるんですかっ!お、俺は・・・ただ・・自分の子供でも無いのに、愛情込めて子育てしている姿が・・・。」
琢磨は顔を赤らめて抗議した。
「朱莉さんと被ったんだろう?」
「う・・っ!」
自分の心を言い当てられて、琢磨は何も言えなくなってしまった。
「い、いいですよ・・・笑いたければ笑って下さい。それでも俺は・・約束したんですから。力になるって。」
フイと視線をそらせて、琢磨は再び物件探しを始めていると二階堂は言った。
「ここの不動産サイトはやめておけ・・・俺の友人が不動産物件を持っているんだ。学生時代、俺はさんざんあいつの面倒を見てやったからな・・安く借り上げられるように便宜を図ってやるよ。それで?場所はどのあたりが希望なんだ?」
「え・・・先輩・・・?」
琢磨は思わず二階堂の事を「社長」ではなく、「先輩」と呼んでいた―。
****
その日の夜7時―
「本当に・・このマンションを借りたのですか・・?」
舞はレンを連れて、琢磨と共に新居として住むマンションの前に立っていた。
「ええ、ここなら幼稚園も近いし・・セキュリティもばっちりです。オートロック式だから不審人物も入って来れません。」
「うわ~!舞ちゃん!すごく素敵な建物だね?早く中へ入ろうよ!」
レンが舞の腕を引っ張る。
「レ、レンちゃん・・だけど・・。」
すると、琢磨はレンをひょいと担ぎ上げ、肩に乗せた。
「うわ~!高い高い!」
レンは大喜びしている。
「ハハハ・・・どうだい?眺めがいいだろう?よし、それじゃ一緒に中へ入ろう。」
琢磨はレンを肩車したままマンションの中へと入って行った―。
12畳のリビングダイニングルームに6畳間と4畳半の洋室、全て収納庫付きの部屋は今まで古い賃貸アパートに暮らしていた舞にはまるで夢のような部屋だった。トイレからバスルーム迄もがまるでモデルルームのような作りに舞は声を震わせて言った。
「だ、駄目ですよ!九条さん・・こ、こんな・・立派なマンション・・・私とてもじゃないですけど払っていけません!だ、だって・・正社員でも契約社員でもない・・ただのフリーターに過ぎないんですよ・・?」
最後の方は消え入りそうな声だった。
「ああ・・その事なんですけどね・・。」
琢磨は舞に行った。
「実は・・『ラージウェアハウス』で、今新しい事業所を計画しているところなんですよ。今迄はネット通販のみの会社だったのですけど、実際に手に取って商品を見て選べるように大型店舗を作る予定で・・良かったらそこで働いて見ませんか?」
「え?」
「ヘルパーの仕事をしているなら・・・人と接する仕事にも慣れているでしょうし・・・。ちゃんと正社員として雇えますけど?」
「で、でも・・・本当に・・いいんですか・・?」
舞は琢磨をじっと見ると言った。
「ええ、勿論ですよ。」
琢磨は答える。
実はこの案は全て二階堂によるものだった。以前から店舗を構える計画を持っており、販売員を新たに募集しようと考えていた矢先の出来事だったのである。
「そ、それでは・・よろしくお願いしますっ!」
舞はお辞儀をすると笑顔を見せた。
「こちらこそ・・・よろしくお願いします。」
笑みを浮かべる琢磨。
その後、2人が恋人同士になるのにはさほどは時間がかからなかった。
さらに知り合って1年後・・琢磨と舞はレンにお父さんになって欲しいとたっての願いから、2人は結婚式を挙げ、家族となるのだった―。
そして20年の歳月が流れ・・・各務蓮と九条レンは出会うことになる―。
<終>
二階堂は深い溜息をついた。
「わ、分かってますよ!社長の言いたいことくらいっ!」
「重症だな・・・お前、そこまで恋の病に憑りつかれていたのか?30過ぎて・・・そんなにピュアだったのか?」
「ピュ、ピュアって・・・何恥ずかしい事言ってるんですかっ!お、俺は・・・ただ・・自分の子供でも無いのに、愛情込めて子育てしている姿が・・・。」
琢磨は顔を赤らめて抗議した。
「朱莉さんと被ったんだろう?」
「う・・っ!」
自分の心を言い当てられて、琢磨は何も言えなくなってしまった。
「い、いいですよ・・・笑いたければ笑って下さい。それでも俺は・・約束したんですから。力になるって。」
フイと視線をそらせて、琢磨は再び物件探しを始めていると二階堂は言った。
「ここの不動産サイトはやめておけ・・・俺の友人が不動産物件を持っているんだ。学生時代、俺はさんざんあいつの面倒を見てやったからな・・安く借り上げられるように便宜を図ってやるよ。それで?場所はどのあたりが希望なんだ?」
「え・・・先輩・・・?」
琢磨は思わず二階堂の事を「社長」ではなく、「先輩」と呼んでいた―。
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その日の夜7時―
「本当に・・このマンションを借りたのですか・・?」
舞はレンを連れて、琢磨と共に新居として住むマンションの前に立っていた。
「ええ、ここなら幼稚園も近いし・・セキュリティもばっちりです。オートロック式だから不審人物も入って来れません。」
「うわ~!舞ちゃん!すごく素敵な建物だね?早く中へ入ろうよ!」
レンが舞の腕を引っ張る。
「レ、レンちゃん・・だけど・・。」
すると、琢磨はレンをひょいと担ぎ上げ、肩に乗せた。
「うわ~!高い高い!」
レンは大喜びしている。
「ハハハ・・・どうだい?眺めがいいだろう?よし、それじゃ一緒に中へ入ろう。」
琢磨はレンを肩車したままマンションの中へと入って行った―。
12畳のリビングダイニングルームに6畳間と4畳半の洋室、全て収納庫付きの部屋は今まで古い賃貸アパートに暮らしていた舞にはまるで夢のような部屋だった。トイレからバスルーム迄もがまるでモデルルームのような作りに舞は声を震わせて言った。
「だ、駄目ですよ!九条さん・・こ、こんな・・立派なマンション・・・私とてもじゃないですけど払っていけません!だ、だって・・正社員でも契約社員でもない・・ただのフリーターに過ぎないんですよ・・?」
最後の方は消え入りそうな声だった。
「ああ・・その事なんですけどね・・。」
琢磨は舞に行った。
「実は・・『ラージウェアハウス』で、今新しい事業所を計画しているところなんですよ。今迄はネット通販のみの会社だったのですけど、実際に手に取って商品を見て選べるように大型店舗を作る予定で・・良かったらそこで働いて見ませんか?」
「え?」
「ヘルパーの仕事をしているなら・・・人と接する仕事にも慣れているでしょうし・・・。ちゃんと正社員として雇えますけど?」
「で、でも・・・本当に・・いいんですか・・?」
舞は琢磨をじっと見ると言った。
「ええ、勿論ですよ。」
琢磨は答える。
実はこの案は全て二階堂によるものだった。以前から店舗を構える計画を持っており、販売員を新たに募集しようと考えていた矢先の出来事だったのである。
「そ、それでは・・よろしくお願いしますっ!」
舞はお辞儀をすると笑顔を見せた。
「こちらこそ・・・よろしくお願いします。」
笑みを浮かべる琢磨。
その後、2人が恋人同士になるのにはさほどは時間がかからなかった。
さらに知り合って1年後・・琢磨と舞はレンにお父さんになって欲しいとたっての願いから、2人は結婚式を挙げ、家族となるのだった―。
そして20年の歳月が流れ・・・各務蓮と九条レンは出会うことになる―。
<終>
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