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第90話 王太子様の写真
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私達はリビングのソファに座ってケリーのお茶を飲みながら話をしていた。
「それでアゼリア、両親と暮らすって…本当なのか?」
私の向かい側に座ったオリバーさんが神妙な面持ちで尋ねてきた。
「はい、そうです」
「それで家はここから遠いのか?」
「ヨハン先生のお宅からだと馬車で1時間以上はかかりますね…」
するとオリバーさんが髪をクシャリとかき上げながら言った。
「くそっ!馬車で1時間か…自転車ならどれくらいかかるんだ?」
するとその言葉に驚いたようにヨハン先生が言う。
「オリバー。自転車でって…まさか会いに行くつもりだったのか?」
「当り前じゃないか!そんなのは当然だろう?ヨハンはひょっとしてアゼリアに会いに行かないつもりだったのか?随分冷たい男だな?」
オリバーさんがイライラした様子でヨハン先生を見る。
「そんな事は一言も口にしていないじゃないか」
「オリバーさん、落ち着いてください」
ケリーがオリバーさんを窘める。
「あ、ああ…すまなかったな。悪い、2人を驚かせてしまったか?」
申し訳無さげにオリバーさんが頭を下げて来る。
「いいえ、私なら大丈夫ですから」
オリバーさんに声を掛けた。
「そっか、ありがとな。それで、ヨハン。お前はどうなんだ?」
「うん、明日アゼリアのお父さんが馬車で迎えに来ることになっているのだけど…恐らくエテルノ家は侯爵だから専属の主治医がいると思う。けど僕は…」
ヨハン先生は顔を上げて私をじっと見つめると言った。
「僕は…ずっとアゼリアの主治医でいたい。アゼリアさえよければ…」
「ヨハン先生…」
「そう言えばアゼリア様のご両親は病気の事を御存じなのですか?」
「スタンリー侯爵夫人には病気の事と余命の事は話してあるけれども…まだ私の口からは話していないの。でも病気の事は知ってるみたいだったわ」
「僕も電話で少しアゼリアの病気の事は話していないけどね。特に余命については」
ヨハン先生の言葉に突然オリバーさんが口を挟んできた。
「おい。さっきから余命って言ってるけど…一体何の事だよ?アゼリアが病気なのは知ってるけど、余命って何の事だ?」
「「「あ」」」
私とケリー、ヨハン先生が同時に声を上げた。そうだった…誰もがオリバーさんにはっきりと余命の事を話していなかったのだ。この場にいる全員が知っていると思っていた。
「…」
オリバーさんはじっと私を見つめている。その瞳は不安げに揺れて見えた。
「アゼリア…どうする?病気の事…オリバーに伝えるのか?」
ヨハン先生が心配そうに私を見る。
「はい。お話しします」
だってオリバーさんはこんなにも私の事を心配してくれているのだから。
私はじっとオリバーさんを見つめると言った。
「オリバーさん…私の病気の事…聞いてください…」
「わ、分った…」
オリバーさんはゴクリと息を飲むと頷いた―。
****
「う・う・うううう…」
オリバーさんが俯き、肩を震わせて嗚咽している。まさか…こんなに涙まで流して悲しむとは思ってもいなかった。
「「…」」
ヨハン先生もケリーも沈痛な面持ちでオリバーさんを見つめている。
「あ、あの…オリバーさん…」
私が声を掛けるとオリバーさんが顔を上げて袖で涙をゴシゴシ擦ると言った。
「アゼリア…俺に…俺に何かできる事は無いか?アゼリアの願いだった両親は見つかったけど、他に何か望みは無いか?俺に出来る事なら何だってしてやるぞ?」
オリバーさんは必死の眼差しで私を見つめて来る。本当に…何て良い人なのだろう。
するとヨハン先生が言った。
「アゼリア、そう言えばもう1人探したい人物がいると言っていたじゃないか。とても大切な男性なんだろう?」
「ええ。そうです。『カイ』というお名前の人ですよね。確か22歳の男性と言ってましたよね?」
ケリーが嬉しそうに言う。
「ええ。そうだけど…ケリー。よくそんな細かい事覚えていたわね?」
ケリーの記憶力に感心してしまった。
「え?若い男?マルセルじゃなくてか?」
オリバーさんが首を傾げる。
「はい。カイと言う男性は私がフレーベル家にいた時、とてもお世話になったんです」
「ふ~ん。そうか…あ、そう言えば今日インタビューした王太子様も22歳って言ってたな」
するとケリーが目をキラキラさせた。
「王太子様ってどんな方ですか?」
やはりケリーも興味があるのだろうか?でもこの国の王太子様なら誰でも興味を持つかも知れない。
「あ、そうだ。写真撮って来たんだぜ。アゼリアに見せる為に急いで現像してきたんだよ」
オリバーさんは手元のカバンを引き寄せ、写真を探し始めた。
「お、あった、あった。この人だよ。彼がカイザード・アークライト王太子様だ」
そして写真をテーブルの上に置いた。
「え…?」
私はその写真を見て目を見開いた。
う、嘘…。
写真に写る人物は…カイだった―。
「それでアゼリア、両親と暮らすって…本当なのか?」
私の向かい側に座ったオリバーさんが神妙な面持ちで尋ねてきた。
「はい、そうです」
「それで家はここから遠いのか?」
「ヨハン先生のお宅からだと馬車で1時間以上はかかりますね…」
するとオリバーさんが髪をクシャリとかき上げながら言った。
「くそっ!馬車で1時間か…自転車ならどれくらいかかるんだ?」
するとその言葉に驚いたようにヨハン先生が言う。
「オリバー。自転車でって…まさか会いに行くつもりだったのか?」
「当り前じゃないか!そんなのは当然だろう?ヨハンはひょっとしてアゼリアに会いに行かないつもりだったのか?随分冷たい男だな?」
オリバーさんがイライラした様子でヨハン先生を見る。
「そんな事は一言も口にしていないじゃないか」
「オリバーさん、落ち着いてください」
ケリーがオリバーさんを窘める。
「あ、ああ…すまなかったな。悪い、2人を驚かせてしまったか?」
申し訳無さげにオリバーさんが頭を下げて来る。
「いいえ、私なら大丈夫ですから」
オリバーさんに声を掛けた。
「そっか、ありがとな。それで、ヨハン。お前はどうなんだ?」
「うん、明日アゼリアのお父さんが馬車で迎えに来ることになっているのだけど…恐らくエテルノ家は侯爵だから専属の主治医がいると思う。けど僕は…」
ヨハン先生は顔を上げて私をじっと見つめると言った。
「僕は…ずっとアゼリアの主治医でいたい。アゼリアさえよければ…」
「ヨハン先生…」
「そう言えばアゼリア様のご両親は病気の事を御存じなのですか?」
「スタンリー侯爵夫人には病気の事と余命の事は話してあるけれども…まだ私の口からは話していないの。でも病気の事は知ってるみたいだったわ」
「僕も電話で少しアゼリアの病気の事は話していないけどね。特に余命については」
ヨハン先生の言葉に突然オリバーさんが口を挟んできた。
「おい。さっきから余命って言ってるけど…一体何の事だよ?アゼリアが病気なのは知ってるけど、余命って何の事だ?」
「「「あ」」」
私とケリー、ヨハン先生が同時に声を上げた。そうだった…誰もがオリバーさんにはっきりと余命の事を話していなかったのだ。この場にいる全員が知っていると思っていた。
「…」
オリバーさんはじっと私を見つめている。その瞳は不安げに揺れて見えた。
「アゼリア…どうする?病気の事…オリバーに伝えるのか?」
ヨハン先生が心配そうに私を見る。
「はい。お話しします」
だってオリバーさんはこんなにも私の事を心配してくれているのだから。
私はじっとオリバーさんを見つめると言った。
「オリバーさん…私の病気の事…聞いてください…」
「わ、分った…」
オリバーさんはゴクリと息を飲むと頷いた―。
****
「う・う・うううう…」
オリバーさんが俯き、肩を震わせて嗚咽している。まさか…こんなに涙まで流して悲しむとは思ってもいなかった。
「「…」」
ヨハン先生もケリーも沈痛な面持ちでオリバーさんを見つめている。
「あ、あの…オリバーさん…」
私が声を掛けるとオリバーさんが顔を上げて袖で涙をゴシゴシ擦ると言った。
「アゼリア…俺に…俺に何かできる事は無いか?アゼリアの願いだった両親は見つかったけど、他に何か望みは無いか?俺に出来る事なら何だってしてやるぞ?」
オリバーさんは必死の眼差しで私を見つめて来る。本当に…何て良い人なのだろう。
するとヨハン先生が言った。
「アゼリア、そう言えばもう1人探したい人物がいると言っていたじゃないか。とても大切な男性なんだろう?」
「ええ。そうです。『カイ』というお名前の人ですよね。確か22歳の男性と言ってましたよね?」
ケリーが嬉しそうに言う。
「ええ。そうだけど…ケリー。よくそんな細かい事覚えていたわね?」
ケリーの記憶力に感心してしまった。
「え?若い男?マルセルじゃなくてか?」
オリバーさんが首を傾げる。
「はい。カイと言う男性は私がフレーベル家にいた時、とてもお世話になったんです」
「ふ~ん。そうか…あ、そう言えば今日インタビューした王太子様も22歳って言ってたな」
するとケリーが目をキラキラさせた。
「王太子様ってどんな方ですか?」
やはりケリーも興味があるのだろうか?でもこの国の王太子様なら誰でも興味を持つかも知れない。
「あ、そうだ。写真撮って来たんだぜ。アゼリアに見せる為に急いで現像してきたんだよ」
オリバーさんは手元のカバンを引き寄せ、写真を探し始めた。
「お、あった、あった。この人だよ。彼がカイザード・アークライト王太子様だ」
そして写真をテーブルの上に置いた。
「え…?」
私はその写真を見て目を見開いた。
う、嘘…。
写真に写る人物は…カイだった―。
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