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第101話 カイの言葉
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「アゼリア…。お願いがあるんだ」
カイが私から顔を離すと言った。
「お願い…?どんな…?」
「ヨハン先生から聞いているよ。マルセルのお父さんが明日診察に来るそうだね?そしてその後は…ここを出て両親の所へ戻るんだろう?」
「ええ、そのつもりよ」
「アゼリア、僕は…君と離れ離れになって暮らすのは嫌なんだ。だからと言って、アゼリアの両親から引き離すような事だってしたくない」
「カイ…?」
カイは一体何を言おうとしているのだろうか?
「アゼリア、僕と一緒に暮らして貰えないかな?王宮で暮らすのが気を使うって言うならこの診療所の近くに離れの屋敷があるからそこで暮らす事も出来るよ。勿論君の両親も一緒にね。」
「カ、カイ…それは…」
するとカイが淋しげな表情で言う。
「アゼリア、君の両親が住んでいる場所と王宮がある場所は…とても離れているんだ。馬車で行っても片道3時間はかかる。それにヨハン先生はアゼリアの主治医なんだろう?ここに来るだけでも馬車で2時間はかかったんじゃないかな?そうなるとなかなかヨハン先生の診察を受けることも難しくなると思うんだ」
「確かにそれはそうかもしれないけれど…両親が何と言うか…。それに…」
「それに…?何だい?」
私はカイを見た。カイは本当に分かっているのだろうか?私とカイは気持ちが通じ合っているけれども、所詮は赤の他人に過ぎないのだ。それなのに王族が所有する屋敷で私とカイ…そして両親が一緒に暮らすなど、世間が何と言うだろう?第一、国王陛下が許可してくれるとは思えなかった。だから私は言った。
「カイ…私と貴方は世間から見れば赤の他人でしか無いわ。それに貴方は王太子でじきにこの国の国王になる方なのよ?私と、私の家族と一緒に暮せば…一体どういう関係なのかと問い詰められるし、貴方の評判が落ちるかも知れないわ。だから…気持ちは嬉しいけれども、私は貴方と一緒に暮らす事は出来ない。…ごめんなさい」
私はカイに頭を下げた。するとカイは私の肩にそっと触れると言った。
「ごめん、アゼリア…僕の言葉が足りなかったよね?まだ大事な事を伝えていなかったよ」
「大事な事…?」
私は顔を上げた。するとカイは私の頬を両手で挟み、おでこをつけると言った。
「アゼリア。僕と…結婚して欲しい。どうか僕の妻になって下さい」
「!」
結婚…?!その言葉に思わず目を見開いてしまった。
「カ、カイ…。本気で言ってるの…?」
声を震わせながら尋ねた。
「勿論本気だよ。僕とアゼリアが結婚すれば…一緒に暮らしても何も問題はないだろう?アゼリアの両親が一緒に暮らす事だって…世間から見ても不自然な事ではないし」
カイはそう言うけれども…問題?問題なら大ありだ。
「む、無理よ…カイ…」
カイの肩を押して離れると私は言った。
「無理?何が無理なんだい?僕と結婚する事は…出来ないって事?」
「ええ。だって私は後数ヶ月しか生きられないのよ?私と仮に結婚したとしても…すぐに貴方は独り身になってしまうわ。それどころか貴方は王族で世継ぎだって必要なのに…世継ぎを生むことも出来ない私と結婚なんて駄目よ。」
そう、絶対に世間から反対されるに決まっている。それどころか余命が分かっている女と結婚なんて愚かな王太子だと言われ…カイの評判が下がってしまうかも知れない。何よりもそれが一番嫌だった。
「アゼリア、やっぱり僕が王族だから結婚出来ないって言うのかい?だったら王族の地位を手放したって構わない」
カイは真剣な目で私を見る。
「それは駄目よ。だって…貴方は次期国王になる為に今迄苦労してきたのでしょう。それを手放すなんて…そんな簡単に…!」
するとカイは静かに言った。
「アゼリアを手放すことのほうが…僕にとっては耐え難い事なんだよ」
「カイ…」
そこまで私の事を…?
思わず目に涙が浮かぶ。
カイの言葉に…私はついに決心した―。
カイが私から顔を離すと言った。
「お願い…?どんな…?」
「ヨハン先生から聞いているよ。マルセルのお父さんが明日診察に来るそうだね?そしてその後は…ここを出て両親の所へ戻るんだろう?」
「ええ、そのつもりよ」
「アゼリア、僕は…君と離れ離れになって暮らすのは嫌なんだ。だからと言って、アゼリアの両親から引き離すような事だってしたくない」
「カイ…?」
カイは一体何を言おうとしているのだろうか?
「アゼリア、僕と一緒に暮らして貰えないかな?王宮で暮らすのが気を使うって言うならこの診療所の近くに離れの屋敷があるからそこで暮らす事も出来るよ。勿論君の両親も一緒にね。」
「カ、カイ…それは…」
するとカイが淋しげな表情で言う。
「アゼリア、君の両親が住んでいる場所と王宮がある場所は…とても離れているんだ。馬車で行っても片道3時間はかかる。それにヨハン先生はアゼリアの主治医なんだろう?ここに来るだけでも馬車で2時間はかかったんじゃないかな?そうなるとなかなかヨハン先生の診察を受けることも難しくなると思うんだ」
「確かにそれはそうかもしれないけれど…両親が何と言うか…。それに…」
「それに…?何だい?」
私はカイを見た。カイは本当に分かっているのだろうか?私とカイは気持ちが通じ合っているけれども、所詮は赤の他人に過ぎないのだ。それなのに王族が所有する屋敷で私とカイ…そして両親が一緒に暮らすなど、世間が何と言うだろう?第一、国王陛下が許可してくれるとは思えなかった。だから私は言った。
「カイ…私と貴方は世間から見れば赤の他人でしか無いわ。それに貴方は王太子でじきにこの国の国王になる方なのよ?私と、私の家族と一緒に暮せば…一体どういう関係なのかと問い詰められるし、貴方の評判が落ちるかも知れないわ。だから…気持ちは嬉しいけれども、私は貴方と一緒に暮らす事は出来ない。…ごめんなさい」
私はカイに頭を下げた。するとカイは私の肩にそっと触れると言った。
「ごめん、アゼリア…僕の言葉が足りなかったよね?まだ大事な事を伝えていなかったよ」
「大事な事…?」
私は顔を上げた。するとカイは私の頬を両手で挟み、おでこをつけると言った。
「アゼリア。僕と…結婚して欲しい。どうか僕の妻になって下さい」
「!」
結婚…?!その言葉に思わず目を見開いてしまった。
「カ、カイ…。本気で言ってるの…?」
声を震わせながら尋ねた。
「勿論本気だよ。僕とアゼリアが結婚すれば…一緒に暮らしても何も問題はないだろう?アゼリアの両親が一緒に暮らす事だって…世間から見ても不自然な事ではないし」
カイはそう言うけれども…問題?問題なら大ありだ。
「む、無理よ…カイ…」
カイの肩を押して離れると私は言った。
「無理?何が無理なんだい?僕と結婚する事は…出来ないって事?」
「ええ。だって私は後数ヶ月しか生きられないのよ?私と仮に結婚したとしても…すぐに貴方は独り身になってしまうわ。それどころか貴方は王族で世継ぎだって必要なのに…世継ぎを生むことも出来ない私と結婚なんて駄目よ。」
そう、絶対に世間から反対されるに決まっている。それどころか余命が分かっている女と結婚なんて愚かな王太子だと言われ…カイの評判が下がってしまうかも知れない。何よりもそれが一番嫌だった。
「アゼリア、やっぱり僕が王族だから結婚出来ないって言うのかい?だったら王族の地位を手放したって構わない」
カイは真剣な目で私を見る。
「それは駄目よ。だって…貴方は次期国王になる為に今迄苦労してきたのでしょう。それを手放すなんて…そんな簡単に…!」
するとカイは静かに言った。
「アゼリアを手放すことのほうが…僕にとっては耐え難い事なんだよ」
「カイ…」
そこまで私の事を…?
思わず目に涙が浮かぶ。
カイの言葉に…私はついに決心した―。
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