余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
60 / 73
連載

第101話 カイの言葉

しおりを挟む
「アゼリア…。お願いがあるんだ」

カイが私から顔を離すと言った。

「お願い…?どんな…?」

「ヨハン先生から聞いているよ。マルセルのお父さんが明日診察に来るそうだね?そしてその後は…ここを出て両親の所へ戻るんだろう?」

「ええ、そのつもりよ」

「アゼリア、僕は…君と離れ離れになって暮らすのは嫌なんだ。だからと言って、アゼリアの両親から引き離すような事だってしたくない」

「カイ…?」

カイは一体何を言おうとしているのだろうか?

「アゼリア、僕と一緒に暮らして貰えないかな?王宮で暮らすのが気を使うって言うならこの診療所の近くに離れの屋敷があるからそこで暮らす事も出来るよ。勿論君の両親も一緒にね。」

「カ、カイ…それは…」

するとカイが淋しげな表情で言う。

「アゼリア、君の両親が住んでいる場所と王宮がある場所は…とても離れているんだ。馬車で行っても片道3時間はかかる。それにヨハン先生はアゼリアの主治医なんだろう?ここに来るだけでも馬車で2時間はかかったんじゃないかな?そうなるとなかなかヨハン先生の診察を受けることも難しくなると思うんだ」

「確かにそれはそうかもしれないけれど…両親が何と言うか…。それに…」

「それに…?何だい?」

私はカイを見た。カイは本当に分かっているのだろうか?私とカイは気持ちが通じ合っているけれども、所詮は赤の他人に過ぎないのだ。それなのに王族が所有する屋敷で私とカイ…そして両親が一緒に暮らすなど、世間が何と言うだろう?第一、国王陛下が許可してくれるとは思えなかった。だから私は言った。

「カイ…私と貴方は世間から見れば赤の他人でしか無いわ。それに貴方は王太子でじきにこの国の国王になる方なのよ?私と、私の家族と一緒に暮せば…一体どういう関係なのかと問い詰められるし、貴方の評判が落ちるかも知れないわ。だから…気持ちは嬉しいけれども、私は貴方と一緒に暮らす事は出来ない。…ごめんなさい」

私はカイに頭を下げた。するとカイは私の肩にそっと触れると言った。

「ごめん、アゼリア…僕の言葉が足りなかったよね?まだ大事な事を伝えていなかったよ」

「大事な事…?」

私は顔を上げた。するとカイは私の頬を両手で挟み、おでこをつけると言った。

「アゼリア。僕と…結婚して欲しい。どうか僕の妻になって下さい」

「!」

結婚…?!その言葉に思わず目を見開いてしまった。

「カ、カイ…。本気で言ってるの…?」

声を震わせながら尋ねた。

「勿論本気だよ。僕とアゼリアが結婚すれば…一緒に暮らしても何も問題はないだろう?アゼリアの両親が一緒に暮らす事だって…世間から見ても不自然な事ではないし」

カイはそう言うけれども…問題?問題なら大ありだ。

「む、無理よ…カイ…」

カイの肩を押して離れると私は言った。

「無理?何が無理なんだい?僕と結婚する事は…出来ないって事?」

「ええ。だって私は後数ヶ月しか生きられないのよ?私と仮に結婚したとしても…すぐに貴方は独り身になってしまうわ。それどころか貴方は王族で世継ぎだって必要なのに…世継ぎを生むことも出来ない私と結婚なんて駄目よ。」

そう、絶対に世間から反対されるに決まっている。それどころか余命が分かっている女と結婚なんて愚かな王太子だと言われ…カイの評判が下がってしまうかも知れない。何よりもそれが一番嫌だった。

「アゼリア、やっぱり僕が王族だから結婚出来ないって言うのかい?だったら王族の地位を手放したって構わない」

カイは真剣な目で私を見る。

「それは駄目よ。だって…貴方は次期国王になる為に今迄苦労してきたのでしょう。それを手放すなんて…そんな簡単に…!」

するとカイは静かに言った。

「アゼリアを手放すことのほうが…僕にとっては耐え難い事なんだよ」

「カイ…」

そこまで私の事を…?

思わず目に涙が浮かぶ。

カイの言葉に…私はついに決心した―。



しおりを挟む
感想 1,487

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。