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マルセルの章 ⑭ 君に伝えたかった言葉
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結局、この日はブライアンに言われるまま家に帰宅したが…ずっと落ち着かない日々を過ごす事となってしまった。
そして翌朝―
「おはようございます…」
朝食を取る為にダイニングルームへ行くと、既に母が席に着いていた。
「おはよう。あら…?どうしたの?目の下にクマが出来ているわよ?」
「ええ…昨夜考え事をしていてあまりよく眠れなかったものですから…」
着席するとすぐにメイドが紅茶を淹れてくれた。紅茶を一口飲むと母に尋ねた。
「父さんは…また出張ですか?」
「ええ。『キーナ』で白血病の治療の研究発表の学会があるそうよ」
「『キーナ』…」
「あら?どうかしたの?」
母がスープを飲みながら尋ねて来た。
「いえ…カイ、いやカイザード王太子が近々『キーナ』の医療大学に入学するそうなのです」
「そう…でもあの方はとても優秀だから、きっと素晴らしい医者になれるはずね」
「そうですね…」
朝食を食べながら俺は思った。本当に彼は立派な方だ。そこへいくと俺は一体どうなんだ?いつまでもアゼリアの死を引きずり…前に進むことも出来ないでいる。それに俺の取った行動で…尊敬する上司の婚約を駄目にしてしまった可能性があると言うのに…。そして俺は深いため息をついた。
今日は会社に行きたくない―と。
****
俺の勤めている会社は『リンデン』の町にある製薬会社だった。
「おはようございます…」
憂鬱な気分で自分の働く部署…経理部に出社すると、既にブライアンが出勤していた。
「おはよう、マルセル」
「あ…お、おはようございます。今朝は随分早い出勤ですね」
まだ朝の8時半なのに、既にブライアンは仕事をしていた。
「ああ、そうなんだ。早めに仕事を済ませて…少し上と相談したい事があったからね」
「え…相談…?」
一体何の…。いや、それよりも他に尋ねる事があった。
「それより、ブライアン。昨日は…」
その時―。
「おはようございます」
同じ部署で働く女性社員が出勤してきた。
「ああ、おはよう」
「おはようございます」
ブライアンが笑顔で挨拶するので、俺もそれにならって挨拶し…その後、続々と社員が出勤してきた為に結局話をするチャンスを失ってしまった―。
****
結局、その日は仕事が忙しく昼食時間も一緒に取ることが出来なかった為にブライアンと昨日の件について会話をする事も出来ずに退社時間になってしまった。
帰り支度をしながら、ブライアンのデスクを見るも不在である。すると俺の視線に気付いたのか同僚の女性が声を掛けて来た。
「ブライアンさんなら上の人と話があると言って、席を外しているわよ」
「そうか…ありがとう。お疲れさま」
「ええ。お疲れさま。尤も私もすぐに退社するけどね。今夜は彼とデートなのよ。楽しみだわ~」
彼女は俺が尋ねてもいない事を言う。
「そうか、良かったね。それじゃ」
「ええ。また明日」
そして俺は会社を後にした―。
****
「ふぅ…」
そのまま、真っすぐ帰宅する気になれず今夜も俺はすっかり馴染みとなっていたバーで1人アルコールを飲んでいた。
「…」
周囲を見渡せば、男女ペアで来店している同世代の若者たちの姿が目立った。…そう言えば俺とアゼリアはこういう店にも来たことが無かったっけ…。
そして度数の強いアルコールの2杯目を傾けていた時、その騒ぎは起こった。
「いや!やめてっ!離して下さいっ!」
何処かで聞覚えのある女性の声が店内に響き渡った―。
そして翌朝―
「おはようございます…」
朝食を取る為にダイニングルームへ行くと、既に母が席に着いていた。
「おはよう。あら…?どうしたの?目の下にクマが出来ているわよ?」
「ええ…昨夜考え事をしていてあまりよく眠れなかったものですから…」
着席するとすぐにメイドが紅茶を淹れてくれた。紅茶を一口飲むと母に尋ねた。
「父さんは…また出張ですか?」
「ええ。『キーナ』で白血病の治療の研究発表の学会があるそうよ」
「『キーナ』…」
「あら?どうかしたの?」
母がスープを飲みながら尋ねて来た。
「いえ…カイ、いやカイザード王太子が近々『キーナ』の医療大学に入学するそうなのです」
「そう…でもあの方はとても優秀だから、きっと素晴らしい医者になれるはずね」
「そうですね…」
朝食を食べながら俺は思った。本当に彼は立派な方だ。そこへいくと俺は一体どうなんだ?いつまでもアゼリアの死を引きずり…前に進むことも出来ないでいる。それに俺の取った行動で…尊敬する上司の婚約を駄目にしてしまった可能性があると言うのに…。そして俺は深いため息をついた。
今日は会社に行きたくない―と。
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俺の勤めている会社は『リンデン』の町にある製薬会社だった。
「おはようございます…」
憂鬱な気分で自分の働く部署…経理部に出社すると、既にブライアンが出勤していた。
「おはよう、マルセル」
「あ…お、おはようございます。今朝は随分早い出勤ですね」
まだ朝の8時半なのに、既にブライアンは仕事をしていた。
「ああ、そうなんだ。早めに仕事を済ませて…少し上と相談したい事があったからね」
「え…相談…?」
一体何の…。いや、それよりも他に尋ねる事があった。
「それより、ブライアン。昨日は…」
その時―。
「おはようございます」
同じ部署で働く女性社員が出勤してきた。
「ああ、おはよう」
「おはようございます」
ブライアンが笑顔で挨拶するので、俺もそれにならって挨拶し…その後、続々と社員が出勤してきた為に結局話をするチャンスを失ってしまった―。
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結局、その日は仕事が忙しく昼食時間も一緒に取ることが出来なかった為にブライアンと昨日の件について会話をする事も出来ずに退社時間になってしまった。
帰り支度をしながら、ブライアンのデスクを見るも不在である。すると俺の視線に気付いたのか同僚の女性が声を掛けて来た。
「ブライアンさんなら上の人と話があると言って、席を外しているわよ」
「そうか…ありがとう。お疲れさま」
「ええ。お疲れさま。尤も私もすぐに退社するけどね。今夜は彼とデートなのよ。楽しみだわ~」
彼女は俺が尋ねてもいない事を言う。
「そうか、良かったね。それじゃ」
「ええ。また明日」
そして俺は会社を後にした―。
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「ふぅ…」
そのまま、真っすぐ帰宅する気になれず今夜も俺はすっかり馴染みとなっていたバーで1人アルコールを飲んでいた。
「…」
周囲を見渡せば、男女ペアで来店している同世代の若者たちの姿が目立った。…そう言えば俺とアゼリアはこういう店にも来たことが無かったっけ…。
そして度数の強いアルコールの2杯目を傾けていた時、その騒ぎは起こった。
「いや!やめてっ!離して下さいっ!」
何処かで聞覚えのある女性の声が店内に響き渡った―。
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