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マルセルの章 ㉕ 君に伝えたかった言葉
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門番が門を開けてくれて、馬車は敷地内へと入っていき…やがてエントランスへ到着した。
「イングリット嬢、せっかく送って頂いた事ですし…上がってお茶でも飲んでいかれませんか?」
「え?ですが…ご迷惑では…?」
怪訝そうな顔つきになるイングリット嬢に言った。
「実は、この辺りではあまり手に入りにくい珍しい茶葉があるのです。とても美味しくて飲みやすいので是非、飲んでいかれませんか?」
折角送ってもらったのだから、このまま帰って貰うのは失礼に当たるだろう。
「そうですか…?ではお言葉に甘えさせて頂きます」
「ええ。是非そうして下さい」
そこでまず最初に馬車から下りるとイングリット嬢に手を差し伸べた。
「さ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます…」
イングリット嬢は俺の手を取ると馬車から降り立った。すると扉が開かれ、執事が現れた。
「マルセル様、お帰りなさいませ。オルグレン様もようこそお越し頂きました」
「「え…?」」
俺とイングリット嬢は同時に声を上げた。
「何故、イングリット嬢の事を知っているんだ?」
執事に尋ねた。彼はイングリット嬢の事を知らないはずなのに…?
「ええ。今夜はオルグレン様がお越しになることは承知しておりましたので」
執事の言葉に今度はイングリット嬢が質問した。
「何故、私がここへ来るのをご存知だったのですか?」
「ええ、奥様からお話を伺っておりましたから」
「え?母から…?」
一体どういう事なのだ?そう言えば…確か今夜は母から何処にも寄らずに真っ直ぐに帰るように言われていた。
「奥様が応接室でお待ちですのでこちらへどうぞ」
執事を先頭に俺とイングリット嬢はついて歩く。前を歩く執事の後ろ姿を見ながら、再び不安な気持ちが沸き上がってくる。何故だろう…?何故か非常に嫌な予感がしてならない。一方のイングリット嬢も何処か不安そうな表情で歩いている。
「大丈夫ですか?」
俺は隣で歩くイングリット嬢に近寄ると小声で囁いた。
「は、はい。でも…一体どういうことなのでしょう?」
「さぁ…俺にもさっぱり…でもとりあえず行くしか無いでしょうね」
「ええ、そうですね…」
その時の俺は全く気付いていなかった。
小声で囁きながら歩く俺とイングリット嬢の様子を執事が気にかけていたという事に…。
コンコン
応接室に到着ると執事が扉をノックしながら声を掛けた。
「マルセル様とイングリット・オルグレン様をお連れ致しました」
するとすぐに中から母の返事が帰ってくる。
「ええ、入ってもらって」
「失礼致します」
執事が扉をカチャリと開けて、応接室の光景が目に飛び込んできて俺は息を飲んだ。
そ、そんな…一体何故…?
「お父様、お母様っ?!何故ここにっ?!」
イングリット嬢が驚いたように声を上げた。
なんと、応接室にはイングリット嬢の両親が母と向き直って座っていたのだ。
「お変えなさい、マルセル」
「は、はい。ただいま、戻りました…」
「ああ、お疲れだったね。マルセルさん」
レイモンド氏が俺に声を掛けてきた。
「昨夜はお邪魔致しました」
マルセルさんだって…?
「イングリット、マルセル様とちゃんと会えたのね?」
ジョセフィ―ヌ夫人が笑みを浮かべてイングリット嬢を見る。
「は?はい…」
イングリット嬢もこの状況に戸惑っているのだろうか?返事が上ずっている。
「それでは2人とも中へ入ってお掛けなさい」
母が俺とイングリット嬢に声をかける。
「「はい…」」
戸惑いながら2人揃って返事をすると、俺とイングリット嬢は室内へ入り…隣同士でソファに座った―。
「イングリット嬢、せっかく送って頂いた事ですし…上がってお茶でも飲んでいかれませんか?」
「え?ですが…ご迷惑では…?」
怪訝そうな顔つきになるイングリット嬢に言った。
「実は、この辺りではあまり手に入りにくい珍しい茶葉があるのです。とても美味しくて飲みやすいので是非、飲んでいかれませんか?」
折角送ってもらったのだから、このまま帰って貰うのは失礼に当たるだろう。
「そうですか…?ではお言葉に甘えさせて頂きます」
「ええ。是非そうして下さい」
そこでまず最初に馬車から下りるとイングリット嬢に手を差し伸べた。
「さ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます…」
イングリット嬢は俺の手を取ると馬車から降り立った。すると扉が開かれ、執事が現れた。
「マルセル様、お帰りなさいませ。オルグレン様もようこそお越し頂きました」
「「え…?」」
俺とイングリット嬢は同時に声を上げた。
「何故、イングリット嬢の事を知っているんだ?」
執事に尋ねた。彼はイングリット嬢の事を知らないはずなのに…?
「ええ。今夜はオルグレン様がお越しになることは承知しておりましたので」
執事の言葉に今度はイングリット嬢が質問した。
「何故、私がここへ来るのをご存知だったのですか?」
「ええ、奥様からお話を伺っておりましたから」
「え?母から…?」
一体どういう事なのだ?そう言えば…確か今夜は母から何処にも寄らずに真っ直ぐに帰るように言われていた。
「奥様が応接室でお待ちですのでこちらへどうぞ」
執事を先頭に俺とイングリット嬢はついて歩く。前を歩く執事の後ろ姿を見ながら、再び不安な気持ちが沸き上がってくる。何故だろう…?何故か非常に嫌な予感がしてならない。一方のイングリット嬢も何処か不安そうな表情で歩いている。
「大丈夫ですか?」
俺は隣で歩くイングリット嬢に近寄ると小声で囁いた。
「は、はい。でも…一体どういうことなのでしょう?」
「さぁ…俺にもさっぱり…でもとりあえず行くしか無いでしょうね」
「ええ、そうですね…」
その時の俺は全く気付いていなかった。
小声で囁きながら歩く俺とイングリット嬢の様子を執事が気にかけていたという事に…。
コンコン
応接室に到着ると執事が扉をノックしながら声を掛けた。
「マルセル様とイングリット・オルグレン様をお連れ致しました」
するとすぐに中から母の返事が帰ってくる。
「ええ、入ってもらって」
「失礼致します」
執事が扉をカチャリと開けて、応接室の光景が目に飛び込んできて俺は息を飲んだ。
そ、そんな…一体何故…?
「お父様、お母様っ?!何故ここにっ?!」
イングリット嬢が驚いたように声を上げた。
なんと、応接室にはイングリット嬢の両親が母と向き直って座っていたのだ。
「お変えなさい、マルセル」
「は、はい。ただいま、戻りました…」
「ああ、お疲れだったね。マルセルさん」
レイモンド氏が俺に声を掛けてきた。
「昨夜はお邪魔致しました」
マルセルさんだって…?
「イングリット、マルセル様とちゃんと会えたのね?」
ジョセフィ―ヌ夫人が笑みを浮かべてイングリット嬢を見る。
「は?はい…」
イングリット嬢もこの状況に戸惑っているのだろうか?返事が上ずっている。
「それでは2人とも中へ入ってお掛けなさい」
母が俺とイングリット嬢に声をかける。
「「はい…」」
戸惑いながら2人揃って返事をすると、俺とイングリット嬢は室内へ入り…隣同士でソファに座った―。
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