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ヤンの章 ③ アゼリアの花に想いを寄せて
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ボーン
ボーン
ボーン
午前11時を告げる振り子時計が室内に鳴り響いた。
「あ、いけない。私、もう帰らなくちゃ」
メロディが椅子を引いて立ち上がった。
「え?もう帰っちゃうのかよ。今日はここでお昼食べて行かないのか?」
クッキーを食べていたディータが驚いた様にメロディを見た。
「うん。今日は午後1時からピアノのレッスンが入ってるのよ。もうすぐ発表会があるから」
「あら、そうなの?今日は取れたてのジャガイモでポテトパーティーをしようと思っていたのに。差し入れで美味しいバターも頂いたからジャガバターやフライドポテトもしようかと思っていたのよ?」
シスターアンジュが残念そうに言う。
「ええ…本当は私ももっとここにいたいけど、父さんと母さんからちゃんと今日はお昼までに帰って来るようにって言われていて…」
言いながら、何故かメロディはチラリと僕の方を見る。
「?」
「メロディお姉ちゃん~帰ったらやだ~」
カレンがメロディのスカートの裾を引っ張る。
「こら!カレン!我儘言わないの!」
マリーがカレンを睨み付ける。
「カレン怖いっ!やっ!メロディお姉ちゃんがいい!」
プイっとそっぽを向くカレンにマリーが怒りを露わにした。
「な、何ですって~っ!」
「わ~ん!怖いよぉ!助けてヤンッ!」
カレンが僕に抱き着いて来た。
「よしよし、カレン。大丈夫だから」
抱上げて頭を撫でるとマリーが言った。
「な、何よっ!あ、あんたがここへ来るまでは…私が一番年下で皆から可愛がられていたのに…っ!」
マリーが顔を真っ赤にさせる。
「マリー。落ち着けって。つまり、お前やきもち焼いてるんだろう?」
ヨナスが意地悪そうな顔で言う。
「何よっ!ヨナスの馬鹿っ!」
マリーは飛び出してしまった。
「あ!マリーッ!」
メロディが慌てて追いかけようとした。するとシスターアンジュがメロディを止めた。
「待って、メロディ。貴女はもう帰らなくちゃいけないでしょう?私が行くわ。さ、カレンもいらっしゃい」
シスターアンジュがマリーに手を伸ばす。
「いやっ!ヤンがいいのっ!」
カレンはますます僕にしがみついて来る。
「何言ってるの?一緒にマリーに謝りに行くのよ。本当はマリーの事だって好きでしょう?」
シスターアンジュに言われ、カレンはようやく小さくコクリと頷く。
「分ったらいらっしゃい」
「うん…」
マリーはおとなしくシスターアンジュに手を伸ばし、抱き上げられた。
「ヤン」
マリーを抱きかかえたシスターアンジュが僕に声を掛ける。
「はい」
「メロディを送ってあげなさい。」
「え…?」
突然の言葉に首を傾げると、メロディが慌てた様に言った。
「な、何言ってるんですか。シスターアンジュ。小さい子供じゃあるまいし、1人で帰れますよ」
「ヤン。頼むわね」
しかし、シスターアンジュは聞く耳を持たずにカレンを抱きかかえたまま部屋を出て行った。
「いいから送ってもらえよ。な?ヤン」
シスターアンジュがいなくなると何故かディータまでメロディを送る様に言う。
「う、うん…。分ったよ。それじゃ送るよ。行こう、メロディ」
「あ、ありがとう…」
そして僕とメロディは連れ立って部屋を後にした―。
ボーン
ボーン
午前11時を告げる振り子時計が室内に鳴り響いた。
「あ、いけない。私、もう帰らなくちゃ」
メロディが椅子を引いて立ち上がった。
「え?もう帰っちゃうのかよ。今日はここでお昼食べて行かないのか?」
クッキーを食べていたディータが驚いた様にメロディを見た。
「うん。今日は午後1時からピアノのレッスンが入ってるのよ。もうすぐ発表会があるから」
「あら、そうなの?今日は取れたてのジャガイモでポテトパーティーをしようと思っていたのに。差し入れで美味しいバターも頂いたからジャガバターやフライドポテトもしようかと思っていたのよ?」
シスターアンジュが残念そうに言う。
「ええ…本当は私ももっとここにいたいけど、父さんと母さんからちゃんと今日はお昼までに帰って来るようにって言われていて…」
言いながら、何故かメロディはチラリと僕の方を見る。
「?」
「メロディお姉ちゃん~帰ったらやだ~」
カレンがメロディのスカートの裾を引っ張る。
「こら!カレン!我儘言わないの!」
マリーがカレンを睨み付ける。
「カレン怖いっ!やっ!メロディお姉ちゃんがいい!」
プイっとそっぽを向くカレンにマリーが怒りを露わにした。
「な、何ですって~っ!」
「わ~ん!怖いよぉ!助けてヤンッ!」
カレンが僕に抱き着いて来た。
「よしよし、カレン。大丈夫だから」
抱上げて頭を撫でるとマリーが言った。
「な、何よっ!あ、あんたがここへ来るまでは…私が一番年下で皆から可愛がられていたのに…っ!」
マリーが顔を真っ赤にさせる。
「マリー。落ち着けって。つまり、お前やきもち焼いてるんだろう?」
ヨナスが意地悪そうな顔で言う。
「何よっ!ヨナスの馬鹿っ!」
マリーは飛び出してしまった。
「あ!マリーッ!」
メロディが慌てて追いかけようとした。するとシスターアンジュがメロディを止めた。
「待って、メロディ。貴女はもう帰らなくちゃいけないでしょう?私が行くわ。さ、カレンもいらっしゃい」
シスターアンジュがマリーに手を伸ばす。
「いやっ!ヤンがいいのっ!」
カレンはますます僕にしがみついて来る。
「何言ってるの?一緒にマリーに謝りに行くのよ。本当はマリーの事だって好きでしょう?」
シスターアンジュに言われ、カレンはようやく小さくコクリと頷く。
「分ったらいらっしゃい」
「うん…」
マリーはおとなしくシスターアンジュに手を伸ばし、抱き上げられた。
「ヤン」
マリーを抱きかかえたシスターアンジュが僕に声を掛ける。
「はい」
「メロディを送ってあげなさい。」
「え…?」
突然の言葉に首を傾げると、メロディが慌てた様に言った。
「な、何言ってるんですか。シスターアンジュ。小さい子供じゃあるまいし、1人で帰れますよ」
「ヤン。頼むわね」
しかし、シスターアンジュは聞く耳を持たずにカレンを抱きかかえたまま部屋を出て行った。
「いいから送ってもらえよ。な?ヤン」
シスターアンジュがいなくなると何故かディータまでメロディを送る様に言う。
「う、うん…。分ったよ。それじゃ送るよ。行こう、メロディ」
「あ、ありがとう…」
そして僕とメロディは連れ立って部屋を後にした―。
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