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アゼリア&カイの章 ③ また…会えたね(アゼリアside)
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今日は医学の歴史についての授業だった。
「まさか医学部で歴史を習う事になるとは思わなかったわ」
階段教室の一番後ろの座席に座ると、ケイトがうんざりしたように言う。
「そう?私は歴史の授業って好きだけど?昔の人たちの暮らしぶりとか…どんな歴史を辿って来たのかを知るのって何だかロマンを感じない?」
「アゼリアってやっぱり何処か夢見がちよね。それにお嬢様っぽい雰囲気があるし」
「何言ってるの?うちは至って平凡なサラリーマン家庭なのよ?父も母も共働きだもの。それを言うならケイトの方がお嬢様じゃない。お父さんは内科医で、お母さんは薬剤師でしょう?」
「う~ん…そうなんだけどね…」
するとその時チャイムが鳴り響き、男性教授が教室に入ってきた。教授は教壇に置かれたマイクを持って話し始めた。
「はい、では皆さん。タブレットを開いて、医学の歴史のページを開いて下さい…」
そして私達学生はタブレットを操作し、指定されたページ画面を開いた―。
「…現代の医学では白血病の治療は目覚しい発展を遂げました。その功労者として称えられているのが2人の医師の存在です…」
本日の授業はかつて不治の病と呼ばれた白血病治療の歴史を辿る内容だった。
白血病…。
何故だろう。この病気を耳にするだけで胸がざわめくのは。元々私が医師を目指すようになったのは白血病という血液の病があることを知り、その治療の為に生涯を捧げた医者がいたという話を子供の頃に見たテレビ番組で偶然知ったからだった。
私も病気で苦しんでいる人達の役に立ちたいと、子供心に強く感じたのだ。
教授の話は続いている。
「…そして彼らのお陰で白血病の治療が飛躍的に発展していったのです。彼等の名前はあまり知られてはおりませんが、大変有能な医師でした。1人はカイザード・アークライト、そしてもう1人はマルセル・ハイムという2人の医師です。何とカイザード医師は元王族、そしてマルセル医師は伯爵だったのです」
「え?」
その名前を聞いた時…まるで私は雷に打たれたかの様な衝撃を受けた。
カイザード…王太子…カイ…。マルセル…様…?
突然胸に熱いものがこみ上げてきた。目には涙が溢れてきた。
「えっ?!ちょ、ちょっとどうしたの?アゼリア。何で泣いているのよ…」
涙を流している私を見て、ケイトが驚いたように私を見た。
「え…?あ」
私は慌ててハンカチを取り出し、涙を拭った。
「ねぇ…大丈夫?どうして急に泣き出したりしたの?」
授業中と言う事もあり、ケイトが小声で尋ねてきた。
「それが…自分でも分からないの…。だけど、何だか…とても悲しいことを思い出した気がして…」
そして私はハンカチを顔に押し当て、必死で涙が溢れてくるのを堪えた。
「アゼリア…」
そんな私をケイトは背中を撫でて慰めてくれた。
どうしてなのだろう?あの2人の名前を耳にした時…とても懐かしい、それでいて切ない気持ちがこみ上げて来たのは…。
もう彼等はこの世に生きてはいないのに…無性に会いたくてたまらない気持ちがこみ上げて来るのは何故なのだろう?
私は自分の気持ちに戸惑いながら泣き続けた―。
「まさか医学部で歴史を習う事になるとは思わなかったわ」
階段教室の一番後ろの座席に座ると、ケイトがうんざりしたように言う。
「そう?私は歴史の授業って好きだけど?昔の人たちの暮らしぶりとか…どんな歴史を辿って来たのかを知るのって何だかロマンを感じない?」
「アゼリアってやっぱり何処か夢見がちよね。それにお嬢様っぽい雰囲気があるし」
「何言ってるの?うちは至って平凡なサラリーマン家庭なのよ?父も母も共働きだもの。それを言うならケイトの方がお嬢様じゃない。お父さんは内科医で、お母さんは薬剤師でしょう?」
「う~ん…そうなんだけどね…」
するとその時チャイムが鳴り響き、男性教授が教室に入ってきた。教授は教壇に置かれたマイクを持って話し始めた。
「はい、では皆さん。タブレットを開いて、医学の歴史のページを開いて下さい…」
そして私達学生はタブレットを操作し、指定されたページ画面を開いた―。
「…現代の医学では白血病の治療は目覚しい発展を遂げました。その功労者として称えられているのが2人の医師の存在です…」
本日の授業はかつて不治の病と呼ばれた白血病治療の歴史を辿る内容だった。
白血病…。
何故だろう。この病気を耳にするだけで胸がざわめくのは。元々私が医師を目指すようになったのは白血病という血液の病があることを知り、その治療の為に生涯を捧げた医者がいたという話を子供の頃に見たテレビ番組で偶然知ったからだった。
私も病気で苦しんでいる人達の役に立ちたいと、子供心に強く感じたのだ。
教授の話は続いている。
「…そして彼らのお陰で白血病の治療が飛躍的に発展していったのです。彼等の名前はあまり知られてはおりませんが、大変有能な医師でした。1人はカイザード・アークライト、そしてもう1人はマルセル・ハイムという2人の医師です。何とカイザード医師は元王族、そしてマルセル医師は伯爵だったのです」
「え?」
その名前を聞いた時…まるで私は雷に打たれたかの様な衝撃を受けた。
カイザード…王太子…カイ…。マルセル…様…?
突然胸に熱いものがこみ上げてきた。目には涙が溢れてきた。
「えっ?!ちょ、ちょっとどうしたの?アゼリア。何で泣いているのよ…」
涙を流している私を見て、ケイトが驚いたように私を見た。
「え…?あ」
私は慌ててハンカチを取り出し、涙を拭った。
「ねぇ…大丈夫?どうして急に泣き出したりしたの?」
授業中と言う事もあり、ケイトが小声で尋ねてきた。
「それが…自分でも分からないの…。だけど、何だか…とても悲しいことを思い出した気がして…」
そして私はハンカチを顔に押し当て、必死で涙が溢れてくるのを堪えた。
「アゼリア…」
そんな私をケイトは背中を撫でて慰めてくれた。
どうしてなのだろう?あの2人の名前を耳にした時…とても懐かしい、それでいて切ない気持ちがこみ上げて来たのは…。
もう彼等はこの世に生きてはいないのに…無性に会いたくてたまらない気持ちがこみ上げて来るのは何故なのだろう?
私は自分の気持ちに戸惑いながら泣き続けた―。
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