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第73話 消えた痕跡
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「おはよう、ノリーン」
教室に入ると、私は一番後ろの席に座るノリーンに声を掛けた。
「あ、おはようございます。ユリア様。お久しぶりですね」
ノリーンは驚いたように私を見た。
「ええ、そうね。少し休みすぎてしまったかもしれないわ」
「それにしても…一体どうされたのですか?突然学校を10日以上もお休みされて…学校の先生たちもユリア様がお休みの事を話されなかったし、クラスの人たちもユリア様を気にされる人がいませんでしたよ」
「ええ、ちょっと学校を少しサボりたくなって勝手にお休みしていたのよ。クラスの人たちが私の事を気にしないのも無理は無いわよ。だって結構以前から学校をさぼりがちがだったもの」
私は何故今迄休んでいたのか、本当の理由は明かさなかった。
「それは確かにユリア様は度々学校を休まれることはありましたが…あ、そう言えばジョンさんもユリア様と同じ日に学恋を休まれていたんですよ」
ノリーンの口からジョンの名前が飛び出し、危うくその言葉に反応しそうになってしまった。此方からさり気なく誘導しようと思っていたのに、まさかいきなりジョンの話を口にするなんて…。
「え?ジョン…。ジョンて…誰?」
私は首を傾げ、演技をした。
「え…?ジョンさんですよ?ジョン・スミスさん」
「ええ。初めて聞く名前のような気がするのだけど…?」
すると…。
「え…あ!私がどうかしてしまったのかしら…てっきりユリア様なら…」
ノリーンの言葉に問いかけた。
「え?私だったら?」
「い、いえ。何でもありません。今の話は忘れて下さい、本当になんでもありませんから」
慌てたように言うノリーン。
「そう?それなら別に構わないけど…」
するとその時、予鈴が鳴り響いた。
「あ、予鈴が鳴ったわ。それじゃ私、席に戻るわね」
そして私は自分席に着席し…隣の席にジョンが転校初日に別の席に追いやられてしまった男子学生が何食わぬ顔で座っている。
そう…この学園でもやはりジョンがいたという痕跡は確実に消えていたのだった―。
私は学校の授業を真面目に聞いた。以前の私ならつまらない、興味が無い授業の場合は授業中でも教室を勝手に出て平気でさぼっていた。しかし、今の私はもう違う。以前の記憶を取り戻しつつあるものの、別人格である今の私の方が悪女だった頃の自分を上回っているのだから―。
キーンコーンカーンコーン
午前中の授業が全て終了し、昼休みに入った。私は昼食を食べる為に教室を出て廊下を歩いていると、背後からバタバタと誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。
「ユリア様!」
振り向くと、そこにはハアハア息を切らしたノリーンが立っていた。
「あら?ノリーン。どうかしたの?」
するとノリーンが言った。
「い、いえ…一緒にお昼をどうかと思って…追いかけてきたのです」
「…ええ、いいわよ」
少しの間、ノリーンを見つめた後…私は返事をした。
「良かった、ありがとうございます!」
ノリーンは嬉しそうに笑みを浮かべると私を見た。
2人で並んで学食に向かって歩いていると、不意にノリーンが声を掛けてきた。
「あの…ユリア様」
「何?」
「ベルナルド王子とは…うまくいっていますか…?」
ノリーンがためらいがちに尋ねてきた―。
教室に入ると、私は一番後ろの席に座るノリーンに声を掛けた。
「あ、おはようございます。ユリア様。お久しぶりですね」
ノリーンは驚いたように私を見た。
「ええ、そうね。少し休みすぎてしまったかもしれないわ」
「それにしても…一体どうされたのですか?突然学校を10日以上もお休みされて…学校の先生たちもユリア様がお休みの事を話されなかったし、クラスの人たちもユリア様を気にされる人がいませんでしたよ」
「ええ、ちょっと学校を少しサボりたくなって勝手にお休みしていたのよ。クラスの人たちが私の事を気にしないのも無理は無いわよ。だって結構以前から学校をさぼりがちがだったもの」
私は何故今迄休んでいたのか、本当の理由は明かさなかった。
「それは確かにユリア様は度々学校を休まれることはありましたが…あ、そう言えばジョンさんもユリア様と同じ日に学恋を休まれていたんですよ」
ノリーンの口からジョンの名前が飛び出し、危うくその言葉に反応しそうになってしまった。此方からさり気なく誘導しようと思っていたのに、まさかいきなりジョンの話を口にするなんて…。
「え?ジョン…。ジョンて…誰?」
私は首を傾げ、演技をした。
「え…?ジョンさんですよ?ジョン・スミスさん」
「ええ。初めて聞く名前のような気がするのだけど…?」
すると…。
「え…あ!私がどうかしてしまったのかしら…てっきりユリア様なら…」
ノリーンの言葉に問いかけた。
「え?私だったら?」
「い、いえ。何でもありません。今の話は忘れて下さい、本当になんでもありませんから」
慌てたように言うノリーン。
「そう?それなら別に構わないけど…」
するとその時、予鈴が鳴り響いた。
「あ、予鈴が鳴ったわ。それじゃ私、席に戻るわね」
そして私は自分席に着席し…隣の席にジョンが転校初日に別の席に追いやられてしまった男子学生が何食わぬ顔で座っている。
そう…この学園でもやはりジョンがいたという痕跡は確実に消えていたのだった―。
私は学校の授業を真面目に聞いた。以前の私ならつまらない、興味が無い授業の場合は授業中でも教室を勝手に出て平気でさぼっていた。しかし、今の私はもう違う。以前の記憶を取り戻しつつあるものの、別人格である今の私の方が悪女だった頃の自分を上回っているのだから―。
キーンコーンカーンコーン
午前中の授業が全て終了し、昼休みに入った。私は昼食を食べる為に教室を出て廊下を歩いていると、背後からバタバタと誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。
「ユリア様!」
振り向くと、そこにはハアハア息を切らしたノリーンが立っていた。
「あら?ノリーン。どうかしたの?」
するとノリーンが言った。
「い、いえ…一緒にお昼をどうかと思って…追いかけてきたのです」
「…ええ、いいわよ」
少しの間、ノリーンを見つめた後…私は返事をした。
「良かった、ありがとうございます!」
ノリーンは嬉しそうに笑みを浮かべると私を見た。
2人で並んで学食に向かって歩いていると、不意にノリーンが声を掛けてきた。
「あの…ユリア様」
「何?」
「ベルナルド王子とは…うまくいっていますか…?」
ノリーンがためらいがちに尋ねてきた―。
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