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第5章 15 それぞれのクリスマス 11
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エドガーはバルコニーの外で冷たい風に当たっていた。白い息を吐きながらどうにもやるせない気持ちで一杯だった。
(俺は…相手がルドルフだったから、ヒルダを諦めることが出来たんだ。それなのにあんな奴らがヒルダを狙っているなんて…!)
その時、エドガーは思った。もし、数年後…ルドルフを亡くした傷が癒えて、ヒルダが別の男性を愛し、結ばれる時…自分は冷静でいられるのだろうかと…。
エドガーは酷く悩み、苦しんでいた。だからアンナが背後から近付いてきている事に全く気がついていなかった。
バルコニーに出たアンナはすぐにエドガーが手すりによりかかり、白い息を吐きながら美しい噴水庭園を見下ろしている事に気づき、近寄っていった。
「エドガーさ…」
名前を呼びかけた時、エドガーが深いため息をつき、ポツリと呟くのを耳にした。
「ヒルダ…」
(え?ヒルダ様…?)
アンナはエドガーがその名前を呟くのを耳にし、足を止めた。何故足を止めたのかは自分でもよく分からなかったが、ただ嫌な予感がしたのだ。
「ヒルダ…俺は…」
一方のエドガーは背後にアンナがいることに全く気付いていなかった。そしてポツリと言った。
「本当の兄妹でも無いのに…俺はお前に思いを告げる事も出来ないのか…?」
(え…?!)
その言葉にアンナは全身の血が引く思いがした。アンナは2人の婚約は政略的な物であることは十分承知していた。だが、お見合いの席で初めてエドガーを見た時、その美しい容姿にひと目で恋に落ちてしまったのだ。輝くような金の髪、まるで海の色のような青い瞳…それらは全てアンナには無いものだった。だからこそ、余計に惹かれてしまったのだ。そして落ち着きが合って優しいところも…何もかもが好きだった。自分の事を妹のような目でしか見てくれていない事は分かっていた。でもいつの日か1人の女性として意識してくれる日が訪れるだろうと思っていた。エドガーはアンナとの婚約をあっさり受け入れたので、想い人はいないだろうと勝手に勘違いしていたのだ。
そしてエドガーの妹としてアンナの前に現れた美しい女性、ヒルダ。
エドガーと同じ金の髪に青い瞳…2人は実の兄妹だとばかり思っていたので、アンナは安心してヒルダに接する事が出来たのだ。それに何よりヒルダにはルドルフという恋人がいた。アンナが不安に思う要素は何一つ存在していなかったのだ。
それなのに、エドガーとヒルダは血のつながらない兄妹だった。それだけではない。
エドガーはヒルダの事を好きだという気持ちを知ってしまった。そしてヒルダは恋人を失ってしまっている。
(そ、そんな…嘘ですよね?エドガー様…)
「ヒルダ…。お前の心に俺が入り込める隙間があれば…)
尚もエドガーは苦しげに呟いている。
(隙間があれば…?ヒルダ様に愛を告げるつもりなのですか?!)
アンナの目にいつしか涙がたまっていた。
(戻ろう…こんな顔エドガー様に見られたくない…!)
アンナは踵を返し、部屋に戻ろうとした次の瞬間―。
「アンナッ!」
バルコニーへ出てきたジャンが大きな声でアンナを呼んでしまった。何てタイミングが悪いのだろう。
「え?アンナ?」
エドガーが驚いて振り向き、アンナを見て顔色を変えた。
「良かった、アンナ!ここにいたのかよ!」
何も知らないジャンがアンナの元へ駆け寄り声を掛けてきた。
「お前、今迄こんなところで何してたんだよ…って…あ!」
その時、バルコニーに立つエドガーを見てジャンは声を上げた。
「エ、エドガー…様…ア、アンナと今迄で一緒だったんですか?」
何も知らないジャンは慌てながら声を掛けた。
「…」
エドガーは何も言わずにジャンを見ている。
(ジャンの馬鹿っ!)
アンナは思った。
これは最悪の展開だと―。
(俺は…相手がルドルフだったから、ヒルダを諦めることが出来たんだ。それなのにあんな奴らがヒルダを狙っているなんて…!)
その時、エドガーは思った。もし、数年後…ルドルフを亡くした傷が癒えて、ヒルダが別の男性を愛し、結ばれる時…自分は冷静でいられるのだろうかと…。
エドガーは酷く悩み、苦しんでいた。だからアンナが背後から近付いてきている事に全く気がついていなかった。
バルコニーに出たアンナはすぐにエドガーが手すりによりかかり、白い息を吐きながら美しい噴水庭園を見下ろしている事に気づき、近寄っていった。
「エドガーさ…」
名前を呼びかけた時、エドガーが深いため息をつき、ポツリと呟くのを耳にした。
「ヒルダ…」
(え?ヒルダ様…?)
アンナはエドガーがその名前を呟くのを耳にし、足を止めた。何故足を止めたのかは自分でもよく分からなかったが、ただ嫌な予感がしたのだ。
「ヒルダ…俺は…」
一方のエドガーは背後にアンナがいることに全く気付いていなかった。そしてポツリと言った。
「本当の兄妹でも無いのに…俺はお前に思いを告げる事も出来ないのか…?」
(え…?!)
その言葉にアンナは全身の血が引く思いがした。アンナは2人の婚約は政略的な物であることは十分承知していた。だが、お見合いの席で初めてエドガーを見た時、その美しい容姿にひと目で恋に落ちてしまったのだ。輝くような金の髪、まるで海の色のような青い瞳…それらは全てアンナには無いものだった。だからこそ、余計に惹かれてしまったのだ。そして落ち着きが合って優しいところも…何もかもが好きだった。自分の事を妹のような目でしか見てくれていない事は分かっていた。でもいつの日か1人の女性として意識してくれる日が訪れるだろうと思っていた。エドガーはアンナとの婚約をあっさり受け入れたので、想い人はいないだろうと勝手に勘違いしていたのだ。
そしてエドガーの妹としてアンナの前に現れた美しい女性、ヒルダ。
エドガーと同じ金の髪に青い瞳…2人は実の兄妹だとばかり思っていたので、アンナは安心してヒルダに接する事が出来たのだ。それに何よりヒルダにはルドルフという恋人がいた。アンナが不安に思う要素は何一つ存在していなかったのだ。
それなのに、エドガーとヒルダは血のつながらない兄妹だった。それだけではない。
エドガーはヒルダの事を好きだという気持ちを知ってしまった。そしてヒルダは恋人を失ってしまっている。
(そ、そんな…嘘ですよね?エドガー様…)
「ヒルダ…。お前の心に俺が入り込める隙間があれば…)
尚もエドガーは苦しげに呟いている。
(隙間があれば…?ヒルダ様に愛を告げるつもりなのですか?!)
アンナの目にいつしか涙がたまっていた。
(戻ろう…こんな顔エドガー様に見られたくない…!)
アンナは踵を返し、部屋に戻ろうとした次の瞬間―。
「アンナッ!」
バルコニーへ出てきたジャンが大きな声でアンナを呼んでしまった。何てタイミングが悪いのだろう。
「え?アンナ?」
エドガーが驚いて振り向き、アンナを見て顔色を変えた。
「良かった、アンナ!ここにいたのかよ!」
何も知らないジャンがアンナの元へ駆け寄り声を掛けてきた。
「お前、今迄こんなところで何してたんだよ…って…あ!」
その時、バルコニーに立つエドガーを見てジャンは声を上げた。
「エ、エドガー…様…ア、アンナと今迄で一緒だったんですか?」
何も知らないジャンは慌てながら声を掛けた。
「…」
エドガーは何も言わずにジャンを見ている。
(ジャンの馬鹿っ!)
アンナは思った。
これは最悪の展開だと―。
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