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両家の事情 5(第三者視点)<終>

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 丁度その頃、アレックスとランスは宿泊先の宿屋で食事を取っていた。

「しかし、2週間以上同じ宿屋に滞在しているといい加減に食事にも飽きて来たな」

アレックスはニョッキをフォークでブスリとさし、トマトソースに絡めて口に入れると溜息をついた。もともとアレックスは自分でグルメ雑誌にコラムを掲載するほど、舌が肥えているグルメ家である。なので旅を続ける傍ら、契約している新聞社に自分のグルメ紀行文を書いては旅先から郵便で新聞社に郵送し、銀行に振り込みをしてもらっているのであった。

「これ以上長く滞在するわけにはいかない。俺は早く次の場所へ移動してグルメ記事を書かなくてはならないと言うのに…」

アレックスはブツブツ言いながらほうれん草のキッシュを食べる。

「ふ~ん…。最近部屋に籠って何か書いているかと思えば、そんな仕事をしていたのか?ちっとも知らなかったよ。だけどアレックス。段々この旅の本筋を見失っていないかい?この旅の目的はレベッカを探す事だっただろう?」

「ああ、勿論忘れてはいない。だがな、こんな風に旅を続けていればいずれ路銀が尽きてしまうだろう?なのでレベッカを探す傍ら、立ち寄った村や町で出会った料理を食して、ルポライトするのだ。どうだ?まさに趣味と実益を兼ねた仕事を俺はしているのだ。すごいだろう?」

アレックスは自慢げに言うが、ランスは人差し指を立て、チッチと左右に振りながら言う。

「それを言うなら、でも僕の仕事の方がずっと歩合がいいと思うね。何しろ僕は山に入って鉱石の採掘をする事だからね?」

それを聞いたアレックスは眉をひそめた。

「はぁ?鉱石だと?馬鹿な事を言うな。ここ『カタルパ』では鉱石は採掘出来ないぞ?鉱脈が無い事位、俺だって知っているのだからな?」

「ところが僕は出来るのさ。何しろレベッカから特別な力を授かっているからね?」

その言葉にアレックスは反応する。

「な、何だって?それは一体どういうことだ?!」

「本当にレベッカには感謝するよ。彼女に親切にしていたからこそお礼にと言われてこんなに素晴らしい力を与えて貰えたんだから。レベッカはやっぱり最高だね」

ランスがうっとりした眼つきで言った途端…。

「な、何ですってっ?!レベッカが何ですってっ?!」

怒りに満ちた大きな声が食堂内に響き渡る。アレックスとランスは驚いて声の方向を見た。するとそこには戸口に立って、ゼーハーと荒い息を吐きながら鬼のような形相でこちらを見ているジョセフィーヌがいるではないか。

「うわあああっ?!ジョ、ジョセフィーヌッ!!」

ランスが叫んだ。

「げ!あ、あの女は‥レベッカの姉!」

ジョセフィーヌはズカズカと2人のテーブルに大股で近付くとテーブルを叩いた。

バンッ!!

「ヒッ!!」

ランスが震え上がる。アレックスは隙を見ていつでも逃げ出そうと構えていた。

「ランスッ!!どういう事なのっ?!貴方私の事好きだって言ってたでしょう?!なのに何故、今レベッカの名前を出していたのよっ!」

「い、いや…そ、それは誤解なんだ‥た、確かに僕はレベッカが好きだったけど…今は君の事がす、好きだよ…?」

ランスは震えながら言う。

「だったら、何故!今レベッカの名を出していたのよ?!それにお父様に聞いたわよ?!レベッカにプロポーズしたんですって?!」

「し、したよ!けどフラれたんだよ!」

「それでも行方をくらましたレベッカを追って、こうして旅をしているわけでしょう?!しかもおぞましい事にあんた達兄弟、親子でレベッカを狙っているって言うじゃないのよ!この変態が!!」

「俺は変態じゃないぞっ!それに父は今はこの村で露天商をしている女に入れ込んでいるからレベッカの事は諦めたはずだ!」

変態の仲間にされたアレックスは口を挟んだその時…。

「ランス!アレックス!」

突如、元グランダ国王が駆け込んできた。

「ウウウウ‥あの女は私の運命の相手では無かった‥私の事を単なる金づるとしてしか見ていなかったのだ!やはり私の相手はあの美少女のレベッカしかいない!さあ、早くこんなシケた村を出てレベッカを探す旅に出よう!」

元グランダ国王は2人の息子に泣きついた。

「ば、馬鹿親父!!」

「何てタイミングが悪いんだ!!」

アレックスとランスは同時に声を上げた。彼らの周囲には見物客が集まっている。

「や、やっぱりあんた達親子はレベッカを狙う変態だったのね…?!ランス!貴方は最低な男よ!こうなったら意地でもあんた達にレベッカは渡さないからね!!」

ジョセフィーヌは悔しそうに捨て台詞を言うと、店を飛び出した。目指すは借家の我が家。

「見てなさいよ!!あの親子よりも絶対先にレベッカを見つけて…二度と出てこれないような場所へあの子を閉じ込めてやるんだからっ!!」

嫉妬に狂ったジョセフィーヌはレベッカを監禁する方法を思い巡らせながら家族の元へ走った。



 こうして、様々な思惑が入り交ざった両家のレベッカ争奪戦が幕を開けた。

しかし、肝心のレベッカちは自分を狙う魔の手の存在にまだ気づいてはいない―。



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