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第1章 23 プレゼントは何がいい?
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私と拓也さんは今、2人で大手スーパーの中にある文房具売場に来ていた。
「ねぇ、小学生ってまだ鉛筆使うよね?」
鉛筆売り場でどの種類が良いのか、にらめっこしながら拓也さんに尋ねた。
「当然だろう?他に何使うんだ?」
拓也さんはノート売り場を見ながら返事をした。
「それは決まってるじゃない。シャーペンだよ」
「う~ん…シャーペンは中学に上がってからでもいいんじゃないかな?」
「そうだよね。あ、キャラクター物も当然駄目だろうね…」
「ああ、やめたほうが無難だな。学校によっては授業に集中出来ないって理由で禁止しているところもあるし」
「そうだ…細々とした文房具雑貨を買うよりもいっそ、ペンケースを買ったほうがいいかなぁ…それともお財布とか?」
散々悩んでいると、拓也さんが吹き出した。
「プッ」
「な、何よ。何がおかしいの?」
「い、いや…まるで我が子のプレゼントを悩む母親のように見えたからさ」
「そ、そうかな…?それじゃ、拓也さんなら何がいいと思う?」
すると、不意に拓也さんは遠い目をすると言った。
「…俺なら…ペンケースがいいかな…」
「え?」
「拓也は小学校入学の時に母親が買ってくれた筆箱を大切に使っていたけどさ…もう5年近く使っているからあちこち壊れているんだよ。だけどあの父親はそんな事気付きもしないから…」
「拓也さん…?」
私は驚いてしまった。いくら興信所の人だからって、そんなに1人の少年の事を詳しく知っているなんて…。
「ひょっとして拓也さんて…」
「な、何だよ…?」
何故か後ずさる拓也さん。
「ひょっとして、たっくんのストーカーなの?!」
「はぁっ?!そ、そんな筈無いだろっ?!」
拓也さんは真っ赤な顔になっている。
「うん、そうだよね~…そんな筈ないか。それじゃペンケースにしよう。どれがいいかな~…」
そして、その後私と拓也さんは吟味の末…ダブルファスナーのビニール製の黒いペンケースを買うことにした―。
****
「ふふ…たっくん、喜んでくれるかな…」
2人で売り場を歩きながら今買ったばかりのペンケースを入れたレジ袋を見た。
「喜ぶに決まってるさ。彩花からのプレゼントなんだから」
大真面目に頷く拓也さん。
「もしかして、それも一種の予言かな?」
「ああ、予言さ」
そこで私はたっくんの誕生日の事を思い出した。
「そう言えば、拓也さんはたっくんの誕生日知ってるんだよね?いつなの?」
「誕生日…」
ポツリと呟く拓也さん。何だか少し様子がおかしく見えた。
「どうかしたの?」
「あ、ああ。ごめん…誕生日だったよな?6月9日さ」
「6月9日か…。あ、丁度日曜日だね」
「そうだな」
「たっくんのお父さん、この日仕事なのかな…」
「…さぁ、良く分らないな」
「もし、いないならケーキ買って皆でお祝いしない?」
「…」
けれど、拓也さんは返事をしない。
「ねぇ?どうかしたの?」
私達はいつの間にか、歩きながらスーパーの外に出ていた。すると拓也さんが言った。
「悪い、俺…今日はもう行かないと。これから仕事があるんだよ」
「えっ?そうだったの?ごめんね。引き留めちゃって」
「気にしなくていいさ。それじゃあ又」
拓也さんは笑顔で手を振ると、雑踏の中へ走り去ってしまった。
「拓也さん…」
小さくなっていく拓也さんの背中を見つめながら、私は思った。
今日の拓也さんは何だか様子がおかしい―と。
「ねぇ、小学生ってまだ鉛筆使うよね?」
鉛筆売り場でどの種類が良いのか、にらめっこしながら拓也さんに尋ねた。
「当然だろう?他に何使うんだ?」
拓也さんはノート売り場を見ながら返事をした。
「それは決まってるじゃない。シャーペンだよ」
「う~ん…シャーペンは中学に上がってからでもいいんじゃないかな?」
「そうだよね。あ、キャラクター物も当然駄目だろうね…」
「ああ、やめたほうが無難だな。学校によっては授業に集中出来ないって理由で禁止しているところもあるし」
「そうだ…細々とした文房具雑貨を買うよりもいっそ、ペンケースを買ったほうがいいかなぁ…それともお財布とか?」
散々悩んでいると、拓也さんが吹き出した。
「プッ」
「な、何よ。何がおかしいの?」
「い、いや…まるで我が子のプレゼントを悩む母親のように見えたからさ」
「そ、そうかな…?それじゃ、拓也さんなら何がいいと思う?」
すると、不意に拓也さんは遠い目をすると言った。
「…俺なら…ペンケースがいいかな…」
「え?」
「拓也は小学校入学の時に母親が買ってくれた筆箱を大切に使っていたけどさ…もう5年近く使っているからあちこち壊れているんだよ。だけどあの父親はそんな事気付きもしないから…」
「拓也さん…?」
私は驚いてしまった。いくら興信所の人だからって、そんなに1人の少年の事を詳しく知っているなんて…。
「ひょっとして拓也さんて…」
「な、何だよ…?」
何故か後ずさる拓也さん。
「ひょっとして、たっくんのストーカーなの?!」
「はぁっ?!そ、そんな筈無いだろっ?!」
拓也さんは真っ赤な顔になっている。
「うん、そうだよね~…そんな筈ないか。それじゃペンケースにしよう。どれがいいかな~…」
そして、その後私と拓也さんは吟味の末…ダブルファスナーのビニール製の黒いペンケースを買うことにした―。
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「ふふ…たっくん、喜んでくれるかな…」
2人で売り場を歩きながら今買ったばかりのペンケースを入れたレジ袋を見た。
「喜ぶに決まってるさ。彩花からのプレゼントなんだから」
大真面目に頷く拓也さん。
「もしかして、それも一種の予言かな?」
「ああ、予言さ」
そこで私はたっくんの誕生日の事を思い出した。
「そう言えば、拓也さんはたっくんの誕生日知ってるんだよね?いつなの?」
「誕生日…」
ポツリと呟く拓也さん。何だか少し様子がおかしく見えた。
「どうかしたの?」
「あ、ああ。ごめん…誕生日だったよな?6月9日さ」
「6月9日か…。あ、丁度日曜日だね」
「そうだな」
「たっくんのお父さん、この日仕事なのかな…」
「…さぁ、良く分らないな」
「もし、いないならケーキ買って皆でお祝いしない?」
「…」
けれど、拓也さんは返事をしない。
「ねぇ?どうかしたの?」
私達はいつの間にか、歩きながらスーパーの外に出ていた。すると拓也さんが言った。
「悪い、俺…今日はもう行かないと。これから仕事があるんだよ」
「えっ?そうだったの?ごめんね。引き留めちゃって」
「気にしなくていいさ。それじゃあ又」
拓也さんは笑顔で手を振ると、雑踏の中へ走り去ってしまった。
「拓也さん…」
小さくなっていく拓也さんの背中を見つめながら、私は思った。
今日の拓也さんは何だか様子がおかしい―と。
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