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第2章 102 タイムトラベルの鉄則
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12月10日午前10時――
この日、俺は21回目のタイムトラベルをする為に教授と2人で『時巡神社』に立っていた。
「いいか上野。今度のタイムトラベルではお前の進んでいるルートを俺も確認する
為に定期的にこちらの世界に戻って来るんだぞ?同じ時間軸から外れないようにしろ。それにあまり過去の世界で長く過ごしていると、ますますお前の実年齢が狂ってくる。だから最低でも1週間…‥出来れば半月は空けて過去に戻るんだ。分かったな?俺は何とかお前が命を犠牲にしなくても南さんを助けられる方法が無いか策を練る」
「教授…ありがとうございます」
俺は改めて教授に頭を下げた。
けれど何故教授は肉親でもない、赤の他人の俺にここまで尽くしてくれるのだろう?
だが、理由を尋ねるのは気恥ずかしくて出来そうに無い。
「何だ?上野。人の顔をじっと見たりして‥‥」
「いえ、そんなことありません。では行ってきます。それで戻る時間は何時に…」
「そうだな。今が10時3分だから…10時5分にこちらに戻って来れるように磁場発生装置をセットしておけ」
「はい、分かりました」
教授に指定された日時をセットした。
「よし、それじゃ…行ってこい、上野!」
「はい」
そして磁場発生装置を起動させた――。
****
午前11時――
「もう‥‥いい加減この景色もすっかり見慣れてしまったな」
俺は例の如く、彩花が暮らすアパートの向かい側の部屋を借りた。明日は子供の頃の自分があのアパートに引っ越してくる日だ。
その様子を見届ける為に前日にこの部屋を借りることにしたのだ。
「今日は土曜日だから…彩花は仕事が休みだろうな。今‥‥何をしているんだろうな…」
呟きながら彩花の部屋をじっと見つめる。
本当なら今すぐ会いに行って…抱きしめたいくらい彩花が恋しくてたまらない。
だが今回のタイムトラベルでは、彩花とは恋人同士にならないと決めていた。
必要最小限の関わりにとどめるのだ。
何故ならこのタイムトラベルで、必ず俺は彩花の命を救い‥‥彩花の代わりに死ぬつもりだからだ。
6月9日に必ず死ぬことになっている彩花。
彩花が死ぬのは決して逃げられない運命。その運命を変えるには…彩花の代わりに誰かが死ななければならない…。
それが彩花を『死のループ』から救う為の唯一の手段なのだ。
「彩花……俺はお前の傍にはいられないけど…大丈夫だ、安心しろ。必ず…何があっても守ってやるからな……」
そして部屋のカーテンを強く握りしめた。
俺は彩花の代わりに死ぬ。
だから必要以上に関わって、彩花が俺の死を悲しまないようにさせてあげなければならない。
そう思っていたのに……何故か話は予想外の方向へと向かっていくことになるのだった――。
この日、俺は21回目のタイムトラベルをする為に教授と2人で『時巡神社』に立っていた。
「いいか上野。今度のタイムトラベルではお前の進んでいるルートを俺も確認する
為に定期的にこちらの世界に戻って来るんだぞ?同じ時間軸から外れないようにしろ。それにあまり過去の世界で長く過ごしていると、ますますお前の実年齢が狂ってくる。だから最低でも1週間…‥出来れば半月は空けて過去に戻るんだ。分かったな?俺は何とかお前が命を犠牲にしなくても南さんを助けられる方法が無いか策を練る」
「教授…ありがとうございます」
俺は改めて教授に頭を下げた。
けれど何故教授は肉親でもない、赤の他人の俺にここまで尽くしてくれるのだろう?
だが、理由を尋ねるのは気恥ずかしくて出来そうに無い。
「何だ?上野。人の顔をじっと見たりして‥‥」
「いえ、そんなことありません。では行ってきます。それで戻る時間は何時に…」
「そうだな。今が10時3分だから…10時5分にこちらに戻って来れるように磁場発生装置をセットしておけ」
「はい、分かりました」
教授に指定された日時をセットした。
「よし、それじゃ…行ってこい、上野!」
「はい」
そして磁場発生装置を起動させた――。
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午前11時――
「もう‥‥いい加減この景色もすっかり見慣れてしまったな」
俺は例の如く、彩花が暮らすアパートの向かい側の部屋を借りた。明日は子供の頃の自分があのアパートに引っ越してくる日だ。
その様子を見届ける為に前日にこの部屋を借りることにしたのだ。
「今日は土曜日だから…彩花は仕事が休みだろうな。今‥‥何をしているんだろうな…」
呟きながら彩花の部屋をじっと見つめる。
本当なら今すぐ会いに行って…抱きしめたいくらい彩花が恋しくてたまらない。
だが今回のタイムトラベルでは、彩花とは恋人同士にならないと決めていた。
必要最小限の関わりにとどめるのだ。
何故ならこのタイムトラベルで、必ず俺は彩花の命を救い‥‥彩花の代わりに死ぬつもりだからだ。
6月9日に必ず死ぬことになっている彩花。
彩花が死ぬのは決して逃げられない運命。その運命を変えるには…彩花の代わりに誰かが死ななければならない…。
それが彩花を『死のループ』から救う為の唯一の手段なのだ。
「彩花……俺はお前の傍にはいられないけど…大丈夫だ、安心しろ。必ず…何があっても守ってやるからな……」
そして部屋のカーテンを強く握りしめた。
俺は彩花の代わりに死ぬ。
だから必要以上に関わって、彩花が俺の死を悲しまないようにさせてあげなければならない。
そう思っていたのに……何故か話は予想外の方向へと向かっていくことになるのだった――。
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