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第2章 121 無駄な願い
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22時半になった。
「それじゃ、俺はそろそろ帰るよ」
「ありがとう。遅くまで付き合わせちゃってごめんね」
玄関まで彩花はついてくると、再び声を掛けてきた。
「拓也さんの家はここから近いの?」
え?
その質問に戸惑ってしまった。
「俺の家…か…そうだな。…近いのに…遠い場所にあるよ」
「ねぇ、拓也さん?今の…どういう意味なの?」
そうだよな、そんな答えで納得するはずないか。
「ごめん、今の話は忘れてくれ。4駅先の駅近くに住んでるんだ」
本当は向かい側のマンションに住んでいると伝えたかったが、警戒されたくは無かったので嘘をついた。
「あ?そうなのね?」
「ああ。それじゃ、おやすみ彩花。」
「うん、おやすみなさい。気を付けて帰ってね」
「嘘ついてごめん……彩花」
夜空を見上げながらポツリと呟いた。
そうだ、明日……罪滅ぼしの為に彩花を誘って卓也を訪ねよう。
そしてマンションへ足を向けた――。
****
「駄目だ……やっぱり……」
マンションに戻った俺はすぐに磁場発生装置をPCに繋ぎ、状況を確認した。
けれど、彩花は6月9日に死を迎えるルートに完全に入ってしまっている。
「このままじゃ……確実に彩花は死ぬ。やはり、俺が犠牲になって彩花の代わりに死ぬしか……ないのか……?」
泣きたい気持ちになってきた。
彩花とは距離を置こうと決めていたのに、まさか彼女の方から俺に接近してくるとは思ってもいなかった。 そんな事をされたら決心が鈍ってしまう。
あれ程、彩花とは恋人同士にならないと決めたのに……やはり俺は彩花を求めてしまう。
許されるなら……彩花と恋人同士になりたい。
先が無い未来なのは分かりきっているけれども、それでも俺は彩花を愛している。
「彩花……」
愛しい彼女を思い、1人部屋で涙した――。
****
翌日18時半――
彩花の会社の前で待っていた。
すると、程なくして彩花が会社から出てきて俺を見ると目を見開く。
「仕事お疲れ様。彩花」
「え…?な、何で拓也さんが…?」
駆け寄ってくる彩花。
「うん、卓也に会いたいかと思ってね」
「え?嘘…もしかしてたっくんに会えるの?」
「ああ、勿論だ。嘘なんかつくはず無いだろう?どうだ?会いたいか?」
彩花の顔を覗き込むと尋ねた。
「会いたい…会いたいに決まってるじゃない!」
「よし、それじゃ…決まりだな?実は車をレンタルしてあるんだ」
「へ~そうなの?気が利いてるじゃない?」
「まあな~。コインパーキングに停めてあるんだ。行こう」
「うん」
そして俺は彩花を連れてコインパーキングへ向かった――。
****
彩花と夜のドライブは最高に楽しかった。
互いに軽口を叩きながらの会話はまるで恋人同士のような錯覚を覚える。
この時間がずっと…永遠に続いて欲しい。
無駄とは知りつつ、俺は祈った。
6月9日なんか、来なければいいのに――と。
「それじゃ、俺はそろそろ帰るよ」
「ありがとう。遅くまで付き合わせちゃってごめんね」
玄関まで彩花はついてくると、再び声を掛けてきた。
「拓也さんの家はここから近いの?」
え?
その質問に戸惑ってしまった。
「俺の家…か…そうだな。…近いのに…遠い場所にあるよ」
「ねぇ、拓也さん?今の…どういう意味なの?」
そうだよな、そんな答えで納得するはずないか。
「ごめん、今の話は忘れてくれ。4駅先の駅近くに住んでるんだ」
本当は向かい側のマンションに住んでいると伝えたかったが、警戒されたくは無かったので嘘をついた。
「あ?そうなのね?」
「ああ。それじゃ、おやすみ彩花。」
「うん、おやすみなさい。気を付けて帰ってね」
「嘘ついてごめん……彩花」
夜空を見上げながらポツリと呟いた。
そうだ、明日……罪滅ぼしの為に彩花を誘って卓也を訪ねよう。
そしてマンションへ足を向けた――。
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「駄目だ……やっぱり……」
マンションに戻った俺はすぐに磁場発生装置をPCに繋ぎ、状況を確認した。
けれど、彩花は6月9日に死を迎えるルートに完全に入ってしまっている。
「このままじゃ……確実に彩花は死ぬ。やはり、俺が犠牲になって彩花の代わりに死ぬしか……ないのか……?」
泣きたい気持ちになってきた。
彩花とは距離を置こうと決めていたのに、まさか彼女の方から俺に接近してくるとは思ってもいなかった。 そんな事をされたら決心が鈍ってしまう。
あれ程、彩花とは恋人同士にならないと決めたのに……やはり俺は彩花を求めてしまう。
許されるなら……彩花と恋人同士になりたい。
先が無い未来なのは分かりきっているけれども、それでも俺は彩花を愛している。
「彩花……」
愛しい彼女を思い、1人部屋で涙した――。
****
翌日18時半――
彩花の会社の前で待っていた。
すると、程なくして彩花が会社から出てきて俺を見ると目を見開く。
「仕事お疲れ様。彩花」
「え…?な、何で拓也さんが…?」
駆け寄ってくる彩花。
「うん、卓也に会いたいかと思ってね」
「え?嘘…もしかしてたっくんに会えるの?」
「ああ、勿論だ。嘘なんかつくはず無いだろう?どうだ?会いたいか?」
彩花の顔を覗き込むと尋ねた。
「会いたい…会いたいに決まってるじゃない!」
「よし、それじゃ…決まりだな?実は車をレンタルしてあるんだ」
「へ~そうなの?気が利いてるじゃない?」
「まあな~。コインパーキングに停めてあるんだ。行こう」
「うん」
そして俺は彩花を連れてコインパーキングへ向かった――。
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彩花と夜のドライブは最高に楽しかった。
互いに軽口を叩きながらの会話はまるで恋人同士のような錯覚を覚える。
この時間がずっと…永遠に続いて欲しい。
無駄とは知りつつ、俺は祈った。
6月9日なんか、来なければいいのに――と。
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