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14−17 カインとマティアス
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エルウィンが晩餐会へ出席し、散々な目に合っている頃――。
離宮のダイニングルームでは騎士たちが食卓を囲んで大騒ぎしていた。
「今頃、エルウィン様はさぞかし高級な食事を召し上がっておられるのだろうな?」
「何を言う、この離宮の食事だって豪華だぞ」
「だが、こう言っては何だが俺なら晩餐会には参加したくないね。陛下の前で食事なんて緊張して食べた気がしないぜ」
「その通りだ!俺もそう思う!」
騎士たちはワインを片手にすっかり出来上がっていた。
そして、その中にはアリアドネの姿はない。
何故ならこのダイニングルームには給仕の為にメイド達がいるからだ。
しかもベアトリスの息がかかったメイド達が……。
大騒ぎしている騎士たちとは別のテーブルでカインとマティアスが2人で食事をしていた。
「だけど、何故アリアドネ様は晩餐会に参加しなかったのだろう?」
カインがポツリと呟いた。
「確かにそうだよな。アリアドネ様の性格から考えても余程の事情が無い限り、大事な晩餐会だから欠席なんて普通はしないはずなのに……」
マティアスはグイッとワインを飲み干した。
「それだけではありませんよ。今だって食事の席に姿を現さないじゃありませんか」
カインは、まさかアリアドネがこの離宮のメイド達に嫌がらせ行為を受けているとは思いもしていなかったのだ。
何しろメイド達は彼らがいない場所でアリアドネを追い詰めていたからだ。
「言われてみればその通りだ。やはり余程お体の具合が悪いのだろうか……?」
「そう言えばアリアドネ様のお食事はどうされているのだろう……?」
「食事なら離宮のメイド達が運んでくれているんじゃないか?アリアドネ様が食事の席に姿を現さないので部屋に用意しますと言っていたからな」
カインの疑問に答えるマティアス。
それでもカインはアリアドネのことが心配だった。
「すみません、マティアスさん。お部屋に行ってアリアドネ様の様子を見てきます」
カインが席を立った。
「俺もアリアドネ様の様子が気になる。一緒に行こう」
マティアスも席を立つ。
「そうですね、では参りましょう」
「ああ」
そして2人はアリアドネのいる部屋へと向かった。
その頃、アリアドネは1人で部屋に閉じこもっていた。
「エルウィン様……今頃どうしていらっしゃるのかしら……」
窓から外の様子を眺めながらポツリと呟き、ため息を付いた。
「お腹……空いたわ……」
メイドがアリアドネに用意した食事は硬い黒パン1個と水差しに入れた水だけであった。
これはこの部屋の扉の前に置かれていた食事だったのだ。
「歓迎されていないと思ったけれども、まさかここまでだったなんて……」
本当なら、今すぐこの離宮を離れてアイゼンシュタット城へ戻りたかった。
しかし、そんな事をすればエルウィンの顔を潰すことになる。
それだけは避けたかったので、アリアドネは今の状況に耐えるしか無かったのだ。
その時、扉をノックする音が部屋に響いた。
『アリアドネ様、いらっしゃいますか?』
その声はカインだった。
「カイン様?どうぞお入り下さい」
声を掛けると、すぐに扉が開かれた。
カインの背後には、マティアスの姿もある。
「まぁ、マティアス様も一緒だったのですか?どうぞお入り下さい」
笑みを浮かべて2人を迎え入れるアリアドネ。
「アリアドネ様、お食事は召し上がりましたか?」
部屋に入るなり、カインが声を掛けてきた。
「ええ、頂きました」
「何を召し上がったのですか?」
「え?」
突然の質問にアリアドネは首を傾げた。
実はカインには気になることが合ったのだ。
アリアドネの部屋に置かれたテーブルには小皿に水差し、コップのみだったからである。
「あの……パンとお水を頂きました」
「「え?」」
その言葉にカインとマティアスが眉をしかめた――。
離宮のダイニングルームでは騎士たちが食卓を囲んで大騒ぎしていた。
「今頃、エルウィン様はさぞかし高級な食事を召し上がっておられるのだろうな?」
「何を言う、この離宮の食事だって豪華だぞ」
「だが、こう言っては何だが俺なら晩餐会には参加したくないね。陛下の前で食事なんて緊張して食べた気がしないぜ」
「その通りだ!俺もそう思う!」
騎士たちはワインを片手にすっかり出来上がっていた。
そして、その中にはアリアドネの姿はない。
何故ならこのダイニングルームには給仕の為にメイド達がいるからだ。
しかもベアトリスの息がかかったメイド達が……。
大騒ぎしている騎士たちとは別のテーブルでカインとマティアスが2人で食事をしていた。
「だけど、何故アリアドネ様は晩餐会に参加しなかったのだろう?」
カインがポツリと呟いた。
「確かにそうだよな。アリアドネ様の性格から考えても余程の事情が無い限り、大事な晩餐会だから欠席なんて普通はしないはずなのに……」
マティアスはグイッとワインを飲み干した。
「それだけではありませんよ。今だって食事の席に姿を現さないじゃありませんか」
カインは、まさかアリアドネがこの離宮のメイド達に嫌がらせ行為を受けているとは思いもしていなかったのだ。
何しろメイド達は彼らがいない場所でアリアドネを追い詰めていたからだ。
「言われてみればその通りだ。やはり余程お体の具合が悪いのだろうか……?」
「そう言えばアリアドネ様のお食事はどうされているのだろう……?」
「食事なら離宮のメイド達が運んでくれているんじゃないか?アリアドネ様が食事の席に姿を現さないので部屋に用意しますと言っていたからな」
カインの疑問に答えるマティアス。
それでもカインはアリアドネのことが心配だった。
「すみません、マティアスさん。お部屋に行ってアリアドネ様の様子を見てきます」
カインが席を立った。
「俺もアリアドネ様の様子が気になる。一緒に行こう」
マティアスも席を立つ。
「そうですね、では参りましょう」
「ああ」
そして2人はアリアドネのいる部屋へと向かった。
その頃、アリアドネは1人で部屋に閉じこもっていた。
「エルウィン様……今頃どうしていらっしゃるのかしら……」
窓から外の様子を眺めながらポツリと呟き、ため息を付いた。
「お腹……空いたわ……」
メイドがアリアドネに用意した食事は硬い黒パン1個と水差しに入れた水だけであった。
これはこの部屋の扉の前に置かれていた食事だったのだ。
「歓迎されていないと思ったけれども、まさかここまでだったなんて……」
本当なら、今すぐこの離宮を離れてアイゼンシュタット城へ戻りたかった。
しかし、そんな事をすればエルウィンの顔を潰すことになる。
それだけは避けたかったので、アリアドネは今の状況に耐えるしか無かったのだ。
その時、扉をノックする音が部屋に響いた。
『アリアドネ様、いらっしゃいますか?』
その声はカインだった。
「カイン様?どうぞお入り下さい」
声を掛けると、すぐに扉が開かれた。
カインの背後には、マティアスの姿もある。
「まぁ、マティアス様も一緒だったのですか?どうぞお入り下さい」
笑みを浮かべて2人を迎え入れるアリアドネ。
「アリアドネ様、お食事は召し上がりましたか?」
部屋に入るなり、カインが声を掛けてきた。
「ええ、頂きました」
「何を召し上がったのですか?」
「え?」
突然の質問にアリアドネは首を傾げた。
実はカインには気になることが合ったのだ。
アリアドネの部屋に置かれたテーブルには小皿に水差し、コップのみだったからである。
「あの……パンとお水を頂きました」
「「え?」」
その言葉にカインとマティアスが眉をしかめた――。
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