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14−23 怒りの行方
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「……」
離宮へ向かう馬車の中、エルウィンは無言で窓の外を眺めながら座っていた。
彼の身体からは恐るべき殺気が漲っている。
そして向かい側に座るのはエルウィンの2人の部下。
「「……」」
彼らはエルウィンの殺気が恐ろしく、口を聞くことも出来ないまま無言で馬車に乗っていた。
(一体エルウィン様は何故ここまで激怒されているのだろう?)
(誰に対して怒ってらっしゃるんだ……?)
すると、突然エルウィンが忌々し気に物騒な言葉を口走った。
「…くそっ!あの女……!王女という身分で無ければ、叩き斬ってやるところだ。おまけに伯爵……奴がアリアドネを虐待していたのか……?忌々しい奴め……切り捨ててやりたいくらいだ」
「エルウィン様!王宮内でそのような物騒な言葉は口になさらないで下さい!」
「ええ、ナレクの言う通りです。お気持ちは分かりますが、どうか城に滞在中は堪えれて下さい!」
部下たちの必死の訴えにエルウィンは忌々し気に舌打ちした。
「チッ!そんなこと位言われなくても分かっている。ただ、どうにも腹の虫が収まらない。本来なら今すぐにでもアイゼンシュタット城に帰りたいくらいだ」
「そんな無茶を仰らないで下さい」
「陛下からの招待なのですから」
2人の部下の言葉にエルウィンはそっぽを向いて返事をした。
「分かってる。ただ口に出して言ってみただけだ。一々真に受けるな」
そして再び窓の外に目を向けながら、思った。
離宮に戻ったら、すぐにアリアドネの元へ向かおうと――。
****
「お帰りなさいませ、エルウィン様」
離宮に戻ったエルウィンをエントランスまで出迎えたのはマティアスだった。
「アリアドネはどうしている?」
軍服の詰襟ボタンを外しながらエルウィンは尋ねた。
「はい、アリアドネ様は今ダイニングルームにいらっしゃいます。我らと一緒にお食事を召し上がっていられるところです」
「そうか、ダイニングルームにいるのだな?」
エルウィンは頷くと、大股でダイニングルームへと向かって行った。
そんな彼の後姿を見送るマティアス。
「全く、恐ろしくてたまらなかったよ」
不意にマティアスは背後から声を掛けられ、振り向いた。
「グレン。何があったんだ?」
振り向くと、そこに立っていたのはメイド達を連れて来た騎士である。
「あったなんてもんじゃないさ。馬車に乗っている間中、殺気を放たれて生きた心地がしなかったぜ」
ナレクが肩をすくめた。
「そうか……。エルウィン様が戦場以外でそこまで激怒されるとは……」
余程アリアドネ様が大切に違いない……。
小さくなっていくエルウィンの背中を見ながら、マティアスは思った――。
****
その頃、アリアドネは騎士達と共にダイニングルームで食事をしていた。
「アリアドネ様。こちらの料理も美味しいですよ?」
カインが隣に座るアリアドネに料理を進めた。
「まぁ。美味しそうな魚料理ですね」
アリアドネが皿の上の料理を見て目を見開く。
「確かに流石王宮で出される料理だけあって味は一流ですね」
別の騎士がアリアドネに話しかけた。
その時――。
「あ、エルウィン様!お帰りなさいませ!」
入り口の方で声が上がった。
アリアドネが振り向くと、エルウィンがまっすぐ自分の方に向かって歩いてくる。
そして、アリアドネのすぐ傍までやってくると足を止めると声を掛けた。
「アリアドネ、大事な話がある」
「は、はい」
アリアドネは立ち上がると返事をした――。
離宮へ向かう馬車の中、エルウィンは無言で窓の外を眺めながら座っていた。
彼の身体からは恐るべき殺気が漲っている。
そして向かい側に座るのはエルウィンの2人の部下。
「「……」」
彼らはエルウィンの殺気が恐ろしく、口を聞くことも出来ないまま無言で馬車に乗っていた。
(一体エルウィン様は何故ここまで激怒されているのだろう?)
(誰に対して怒ってらっしゃるんだ……?)
すると、突然エルウィンが忌々し気に物騒な言葉を口走った。
「…くそっ!あの女……!王女という身分で無ければ、叩き斬ってやるところだ。おまけに伯爵……奴がアリアドネを虐待していたのか……?忌々しい奴め……切り捨ててやりたいくらいだ」
「エルウィン様!王宮内でそのような物騒な言葉は口になさらないで下さい!」
「ええ、ナレクの言う通りです。お気持ちは分かりますが、どうか城に滞在中は堪えれて下さい!」
部下たちの必死の訴えにエルウィンは忌々し気に舌打ちした。
「チッ!そんなこと位言われなくても分かっている。ただ、どうにも腹の虫が収まらない。本来なら今すぐにでもアイゼンシュタット城に帰りたいくらいだ」
「そんな無茶を仰らないで下さい」
「陛下からの招待なのですから」
2人の部下の言葉にエルウィンはそっぽを向いて返事をした。
「分かってる。ただ口に出して言ってみただけだ。一々真に受けるな」
そして再び窓の外に目を向けながら、思った。
離宮に戻ったら、すぐにアリアドネの元へ向かおうと――。
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「お帰りなさいませ、エルウィン様」
離宮に戻ったエルウィンをエントランスまで出迎えたのはマティアスだった。
「アリアドネはどうしている?」
軍服の詰襟ボタンを外しながらエルウィンは尋ねた。
「はい、アリアドネ様は今ダイニングルームにいらっしゃいます。我らと一緒にお食事を召し上がっていられるところです」
「そうか、ダイニングルームにいるのだな?」
エルウィンは頷くと、大股でダイニングルームへと向かって行った。
そんな彼の後姿を見送るマティアス。
「全く、恐ろしくてたまらなかったよ」
不意にマティアスは背後から声を掛けられ、振り向いた。
「グレン。何があったんだ?」
振り向くと、そこに立っていたのはメイド達を連れて来た騎士である。
「あったなんてもんじゃないさ。馬車に乗っている間中、殺気を放たれて生きた心地がしなかったぜ」
ナレクが肩をすくめた。
「そうか……。エルウィン様が戦場以外でそこまで激怒されるとは……」
余程アリアドネ様が大切に違いない……。
小さくなっていくエルウィンの背中を見ながら、マティアスは思った――。
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その頃、アリアドネは騎士達と共にダイニングルームで食事をしていた。
「アリアドネ様。こちらの料理も美味しいですよ?」
カインが隣に座るアリアドネに料理を進めた。
「まぁ。美味しそうな魚料理ですね」
アリアドネが皿の上の料理を見て目を見開く。
「確かに流石王宮で出される料理だけあって味は一流ですね」
別の騎士がアリアドネに話しかけた。
その時――。
「あ、エルウィン様!お帰りなさいませ!」
入り口の方で声が上がった。
アリアドネが振り向くと、エルウィンがまっすぐ自分の方に向かって歩いてくる。
そして、アリアドネのすぐ傍までやってくると足を止めると声を掛けた。
「アリアドネ、大事な話がある」
「は、はい」
アリアドネは立ち上がると返事をした――。
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