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第2章
第281話 魔道具の広め方作戦
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「そうなると、ここからは互いに別室で話をしても良いわけですか。……でも、魔道具がもう一つ……。
この箱が『手紙』ってイマイチわからなくて。箱の中に手紙が入っているんですか?どうやって開けるのかな」
「今、送る」
「え?……わ!光った!え?文字? 『シャル、落ち着け』って?ふあ!」
ぴょこんとシャル叔父さんが衝立から顔を出した。
「文字が出たんですが!」
「だから、落ち着けって。そして顔を出すな」
「お話」の魔道具に続き、「手紙」の魔道具についてもシャル叔父さんは驚いた様子で大騒ぎしてた。
でも、使い方はすぐに把握できたみたいで、父上と「お話」の魔道具で話しながら「手紙」の魔道具で文字を送りあっていた。
「……こんな魔道具は、近隣の諸国でも聞いたことないですよ。……これを作ったんですか?……クリスが……?はぁ~」
シャル叔父さんは衝立に両手をかけて、頭半分だけ覗かせた。チラリと目線を僕に向けた。
「極秘だぞ。お前だから話しているんだ」
父上がいつもより一段と低い声を出す。シャル叔父さんは衝立にしがみついたまま頷いた。
「……分かってますよ。
うーん……。でも、これは、広めるのには悩むよねぇ……。軍事にも有用だろうから、国やら偉い貴族が独占したがったりしそうだし……。
うーん……。別の国でダミーの発案者の名前でギルドに登録するか……」
暫くしたら、シャル叔父さんも落ち着きを取り戻したらしく、衝立の向こうで魔道具を広める方法を考えてくれているようだった。
「ダミーの発案者?」
「そう。発案者を仮の名前で商業ギルドに登録するんだ。国にもよるんだけど、仮の名前での登録は許容されているんだよ。
凄いものを作った人が狙われたりしないようにね。
それでも、誰が作ったか突き止めて囲い込もうとしたりする貴族もいるから、油断はできないけどね。
この『話し』の魔道具と『手紙』の魔道具を別の国で、別の人物の名前で登録しようか。
同じ国だと遠く離れていても連絡が取れるっていう技術を、国が独占しようとするのを避けられるんじゃないかな。
その国から仕入れてきたテイで、使えば大貴族様に取り上げられることもないでしょ。
後は、注目される前にあちこちで使い始めてしまって秘匿できないようにするとかね」
衝立の横に見える小テーブルに置かれたティーポットに手が伸ばされる。
ティーポットを高く掲げてカップにお茶を注ぎ入れた後、カップを持った手が衝立の向こうに消えた。
ズズズとお茶を啜る音がした後で再び声がした。
「ボクとしては是非商会で使わせてもらいたい。全支店とまで言わなくても、要所の支店にこれがあれば圧倒的に連絡がスムーズにできる。
どのくらい離れていても使えるかは検証が必要だろうけど、繋がるギリギリのところに支店を配置しておけば伝言みたいに伝えていけそうじゃないか?」
また衝立の上からピョコっと鼻から上を出した。僕に向かって話しかけてきた。
「ねえ。これとこれって複数個、できれば沢山用意できる?あ、代金はもちろん払うよ!」
「……数は……」
「あ、無理して急いで作れって言っているわけじゃないよ!
やろうと思っているのは、登録する国の商会の支店まで、この魔道具で連絡が取れるようにしたいんだ。
繋がる距離次第ではあるけど、中継場所を設けるなら、複数個必要だと思ってね」
「……『お話』の魔道具は家族で使う用だったから……」
「どういうこと?」
「手紙」の魔道具はゲンティアナ領地内の各地に置きたいって母様が話していたし、
沢山用意するのは良いんだけど、「お話」の魔道具は、元々緊急の時に急いで父上に連絡したいって思って作ったものだから家族に連絡ができれば良いって思ってたんだ。後、ボブとかジャックとかマーサとか、シャル叔父さん。可能なら、薬師のおばあちゃんとルドおじさんくらいだ。
連絡相手の指定が魔力を何回流すかで決めているから、あまり沢山になっちゃうとわけわからなくなっちゃうんだよね。
薬師のおばあちゃんとかにも渡すことを考えて、魔力を通す魔石を二つくらいに分けようかなって思ってはいたんだけど。
「連絡先は大体十人位までだよ。改良しないと……」
「待て」
どうやって改良しようかなって考え始めようとしたら兄上が止めに入った。
「今、また新しく作り直そうと考えたろ」
「ダメなの?」
「お話」の魔道具の改良版を考えようとしたら、兄上がじっと厳しい目を僕に向けてくる。改良しないとシャル叔父さんの商会で使えるようにならないんじゃないの?
この箱が『手紙』ってイマイチわからなくて。箱の中に手紙が入っているんですか?どうやって開けるのかな」
「今、送る」
「え?……わ!光った!え?文字? 『シャル、落ち着け』って?ふあ!」
ぴょこんとシャル叔父さんが衝立から顔を出した。
「文字が出たんですが!」
「だから、落ち着けって。そして顔を出すな」
「お話」の魔道具に続き、「手紙」の魔道具についてもシャル叔父さんは驚いた様子で大騒ぎしてた。
でも、使い方はすぐに把握できたみたいで、父上と「お話」の魔道具で話しながら「手紙」の魔道具で文字を送りあっていた。
「……こんな魔道具は、近隣の諸国でも聞いたことないですよ。……これを作ったんですか?……クリスが……?はぁ~」
シャル叔父さんは衝立に両手をかけて、頭半分だけ覗かせた。チラリと目線を僕に向けた。
「極秘だぞ。お前だから話しているんだ」
父上がいつもより一段と低い声を出す。シャル叔父さんは衝立にしがみついたまま頷いた。
「……分かってますよ。
うーん……。でも、これは、広めるのには悩むよねぇ……。軍事にも有用だろうから、国やら偉い貴族が独占したがったりしそうだし……。
うーん……。別の国でダミーの発案者の名前でギルドに登録するか……」
暫くしたら、シャル叔父さんも落ち着きを取り戻したらしく、衝立の向こうで魔道具を広める方法を考えてくれているようだった。
「ダミーの発案者?」
「そう。発案者を仮の名前で商業ギルドに登録するんだ。国にもよるんだけど、仮の名前での登録は許容されているんだよ。
凄いものを作った人が狙われたりしないようにね。
それでも、誰が作ったか突き止めて囲い込もうとしたりする貴族もいるから、油断はできないけどね。
この『話し』の魔道具と『手紙』の魔道具を別の国で、別の人物の名前で登録しようか。
同じ国だと遠く離れていても連絡が取れるっていう技術を、国が独占しようとするのを避けられるんじゃないかな。
その国から仕入れてきたテイで、使えば大貴族様に取り上げられることもないでしょ。
後は、注目される前にあちこちで使い始めてしまって秘匿できないようにするとかね」
衝立の横に見える小テーブルに置かれたティーポットに手が伸ばされる。
ティーポットを高く掲げてカップにお茶を注ぎ入れた後、カップを持った手が衝立の向こうに消えた。
ズズズとお茶を啜る音がした後で再び声がした。
「ボクとしては是非商会で使わせてもらいたい。全支店とまで言わなくても、要所の支店にこれがあれば圧倒的に連絡がスムーズにできる。
どのくらい離れていても使えるかは検証が必要だろうけど、繋がるギリギリのところに支店を配置しておけば伝言みたいに伝えていけそうじゃないか?」
また衝立の上からピョコっと鼻から上を出した。僕に向かって話しかけてきた。
「ねえ。これとこれって複数個、できれば沢山用意できる?あ、代金はもちろん払うよ!」
「……数は……」
「あ、無理して急いで作れって言っているわけじゃないよ!
やろうと思っているのは、登録する国の商会の支店まで、この魔道具で連絡が取れるようにしたいんだ。
繋がる距離次第ではあるけど、中継場所を設けるなら、複数個必要だと思ってね」
「……『お話』の魔道具は家族で使う用だったから……」
「どういうこと?」
「手紙」の魔道具はゲンティアナ領地内の各地に置きたいって母様が話していたし、
沢山用意するのは良いんだけど、「お話」の魔道具は、元々緊急の時に急いで父上に連絡したいって思って作ったものだから家族に連絡ができれば良いって思ってたんだ。後、ボブとかジャックとかマーサとか、シャル叔父さん。可能なら、薬師のおばあちゃんとルドおじさんくらいだ。
連絡相手の指定が魔力を何回流すかで決めているから、あまり沢山になっちゃうとわけわからなくなっちゃうんだよね。
薬師のおばあちゃんとかにも渡すことを考えて、魔力を通す魔石を二つくらいに分けようかなって思ってはいたんだけど。
「連絡先は大体十人位までだよ。改良しないと……」
「待て」
どうやって改良しようかなって考え始めようとしたら兄上が止めに入った。
「今、また新しく作り直そうと考えたろ」
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「お話」の魔道具の改良版を考えようとしたら、兄上がじっと厳しい目を僕に向けてくる。改良しないとシャル叔父さんの商会で使えるようにならないんじゃないの?
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