転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第282話 改良は慎重に

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「お話」の魔道具は今のままだと、シャル叔父さんが希望するように商会の支店全部で使うのは難しそうなんだけど改良しないで使うってことなのか?
よくわからなくて、首を傾げてしまった。
兄上が真剣な顔で僕の目をじっと見つめて言う。

「……今は、今の魔道具をどうするかって話をしているんだ。
使えるのが十人までだとして、シャル叔父さんがそれでも使いたいっていうならそれで良いだろう。
もしも、改良が必要になったとして、要望をちゃんと聞いてそれが実際に出来るのか、出来るとしてもどのくらいで出来るのかとか、そうした場合、ちゃんと対価は払ってもらえるかとか、ちゃんと考えたり話し合ったりするべきなんだよ」
「うん……」

「お話」の魔道具は今のままで良いってこと?

指輪と腕輪の組み合わせって、ちゃんと指輪をして使うと格好良いと思うんだけど
指輪のサイズが合わないと使いにくくなっちゃうなとか思っていたから、違う形のものを考えたいなとは思っていたんだ。でも、確かに形を変えたら別の魔道具になっちゃうね。
百人に連絡ができるようにって腕輪につける魔石を増やしたら、腕輪がゴツくて重たくなっちゃう。

「わかったか?……シャル叔父さんも、数欲しいとかって話はまず父上としてくださいよ」
「ローレン、しっかりしてきたなぁ!」

兄上はちょっと目を細めて僕を見た後、シャル叔父さんの方に振り向いて文句を言った。
シャル叔父さんは、衝立からぴょこっと姿を見せた後、また引っ込んだ。

「……そもそも、繋がる範囲は領境までしか確認できていない。
数を増やしたとして、各国にある支店同士で連絡が取れるとは限らないだろう」

父上が腕組みしながら言う。

「た、確かに。冷静ですね、兄上は……」
「だが……。他所の人間がこの魔道具を知った場合、似たようなことを考えるだろう。
 その時に、要望がクリスに殺到するようなことを避けたい。その為の相談だ」
「そうですね……」

目から上だけをついた手から覗かせた状態でシャル叔父さんは父上の言葉に頷いた。
そして僕に目を向ける。

「……これだけの発明……、発表したら大騒ぎになりますからね。
しっかり作戦を考えましょう。でも、何か作戦を考えて実行するときも、この二つの魔道具はすごく役立ちそうですね。
連絡を取るのに馬を走らせたり、商業ギルドを経由したりしなくて済む。
連絡の為に何度も行き来したりたら、目立ちますからね。情報を秘匿するにも有利だ」

シャル叔父さんがスッと立ち上がった。

「分かりました!ルシャル商会会長、シャルル・ルピナス。ご要望にお応え出来るよう尽力しましょう!」

胸に手を当ててお辞儀をする。
父上も立ち上がってシャルル叔父さんに頭を下げた。
兄上も立ち上がったので、僕も続く。

「よろしく頼む」
「任せて!」
「……だが、感染症対策も頼む」
「あ、はい」

ヒュッとシャル叔父さんの姿が衝立の向こうに消えた。
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